おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「雪」赤き巣立ちの時

    人 物

街尾俊太(21) 学生

街尾襟子(45) 俊太の母

辻野美帆(27) 塾講師

時田(35) 塾講師 

 

〇線路

   雪が降る中、新幹線が走っていく。

 

〇新幹線車内

   旅行客でにぎわっている。

   街尾俊太(21)、街尾襟子(45)が並んで座っ

   ている。

   俊太、雪が降る窓の外を見ている。

   襟子、文庫本を読んでいる。

   襟子、俊太を見て微笑む。

襟子「雪を見てると思い出すわね。俊ちゃん覚

 えてる?あの時のこと」

   俊太、窓から目を離さない。

俊太「ああ…くっそ寒かったことだけ覚えてる」

襟子「そうねぇ寒かったわ」

 

〇(回想)田舎道

   雪が積もり吹雪く中、俊太少年(5)と襟子

   (29)が手を繋いで歩いている。

   襟子の手には大きなボストンバッグ。

俊太の声「わけわからず連れていかれてさ」

   襟子、真剣な表情で早足で歩く。

   俊太少年、襟子を見上げながら小走りで

   ついていく。

 

〇(もとの)新幹線車内

襟子「最初は大変だったけど頑張って良かった

 わ。貴方もこんなに大きくなって」

   襟子、俊太の肩に触れる。

   俊太、席を立つ。

襟子「どこに行くの?」

俊太「トイレだよ」

襟子「場所わかる?」

俊太「案内板見るよ」

   俊太、席を離れる。

   襟子、心配そうに俊太の背中を見送る。

 

〇同・トイレ

   トイレに入ってくる俊太。

   扉に背中を預けて一息つく。

   ズボンのポケットから折り畳みナイフを

   取り出しギュッと握り締める。

俊太「…よし」

   ポケットにナイフを戻す。

 

〇東塔進学スクール・全景

   雪が降っている。

 

〇同・講師室

   辻野美帆(27)が机に向かい採点している。

   机の上にはかなりの量の紙束。

   美帆、途中で眉間をマッサージしながら

   溜息を吐く。

   スマホにLINEが届く。

   美帆、サッとスマホを手に取る。

   LINEの相手は俊太。

俊太のLINE「母さんとの旅行つまらん。や

 ることない」

   嫌そうな顔のスタンプ。

   美帆、微笑んで返信を打つ。

美帆のLINE「そんなこと言わないの。最後

 の親孝行でしょ?」

   怒った顔のスタンプ。

   俊太から不満そうな顔のスタンプ。

   美帆、微笑む。

   ドアが開く音がする。

   美帆、慌ててスマホを置いて採点を再開

   する。

   時田(35)が入ってくる。

時田「辻野先生、いらっしゃったんですか」

美帆「ええ。採点が終わらなくて」

時田「この時期は大変ですよね、本当に。お疲

 れ様です」

   時田、美帆の机に近づく。

   答案を一枚手に取る。

   俊太の答案。83点。

時田「へえ、彼、随分上がったんじゃないです

 か?成績」

美帆「ええ。B判定にまで上がりましたし」

時田「入ってきた頃は何回浪人する気なんだろ

 うって思うような志望校でしたけどね」

 

〇(回想)同・面接室

   襟子と俊太が並んで座っている。

襟子「なんとしてもあの学校に入学させたいん

 です。歯科医になってあいつらを見返すため

 には、あそこじゃなくてはダメなんです」

   熱弁する襟子の横でつまらなそうな表情

   の俊太。

襟子「ねえ?俊ちゃん。お母さんがちゃんとサ

 ポートしてあげるから頑張ろうね」

   時田、愛想笑いしながら聞いている。

 

〇(もとの)同・講師室

   美帆、採点の手を止める。

   時田、笑って答案を束に戻す。

時田「辻野先生の指導のおかげかな」

美帆「ありがとうございます」

時田「そうだ、お昼一緒しませんか?」

   時田、美帆の肩に触れようとする。

   美帆、それを躱すように時田に向き直る。

美帆「すみません、授業の準備が多くて」

時田「ああ…そうですか…」

   美帆、微笑む。

   時田、笑い返す。

 

〇道路

   雪が降り積もる中を路線バスが走ってい

   く。

 

〇バス車内

   俊太と襟子が並んで席に座っている。

   襟子、居眠りしている。

 

〇道路

   田舎の雪道を走っている。

 

〇バス車内

   俊太、襟子の肩を揺らす。

俊太「母さん!やばい寝過ごしたかも!」

   襟子、驚いて目を開ける。

襟子「え!?」

   襟子、急いで降車ブザーを鳴らし立ち上

   がる。

襟子「すみません降ります!俊ちゃん、行くわ

 よ」

   襟子、荷物を持って降車口へ向かう。

   俊太、ゆっくりと立ち上がりついていく。

 

〇農道・バス停

   路線バスが通過していく。   

   襟子と俊太が降り立つ。

   襟子、周囲を見回す。

襟子「あら?こんなところだったかしら」

   俊太、バス停の表示板を見る。

俊太「あー、ごめん間違えたかも」

襟子「ええ?」

   襟子、振り返り俊太に近づく。

襟子「やだ、バス停一つ間違えてるわよ!次の

 バス停だったのに」

俊太「そうだった?ごめん間違えた。でもバス

 停一つ分くらいなら歩けるよね」

襟子「そうね…」

   襟子、冷たい風に身震いする。

襟子「それじゃあ早く行きましょう。このまま

 ここに突っ立っていても仕方ないし」

   襟子、歩き始める。

   俊太、ゆっくりと歩き始める。

   ズボンのポケットに手を入れる。

 

〇農道

   雪道を襟子の後ろを俊太が付いて歩いて

   いる。

   俊太、スマホを操作してLINEする。

 

〇東塔進学スクール・講師室

   美帆、スマホを手に取る。

俊太のLINE「そろそろ」

   美帆、真剣なまなざしで見つめる。

 

〇農道

   襟子、疲れてきている様子。

襟子「思ったよりバス停の間開いてるのね…ま

 だ着かないのかしら」

   雪が深くうまく歩けない。

   俊太、後ろでズボンのポケットに手を入

   れる。

   襟子の背中に少しずつ近づく。

襟子「俊ちゃん、大丈夫?付いてきてる?」

   襟子、立ち止まって振り返る。

襟子「俊ちゃん?」

   俊太、襟子にナイフを構え体当たりする。

襟子「うっ!?」

   ナイフが襟子の腹に刺さる。

   襟子、目を見開いて俊太を見る。

俊太「母さん、ごめん」

   俊太、襟子の肩を抱いて抱きしめるよう

   に深く刺す。

   襟子、うめく。

   足元の雪に赤い血がぽたぽたと落ちる。

襟子「俊ちゃん…」

   襟子、俊太の腕にすがるがゆっくりと膝

   をつく。

   俊太、荒い息を吐きながら襟子を見つめ

   ている。

   襟子、座り込み茫然と俊太を見上げる。

   俊太、膝をついて襟子に目線を合わせる。

   荒い息を吐きながら、涙をこぼす。

俊太「母さん…ごめん…さよなら…」

   襟子、俊太を見て力なく微笑む。

   襟子、手を伸ばして俊太の頬に触れる。

   俊太、泣きながら襟子を見ている。

襟子「ごめんね…俊ちゃん…」

   襟子、微笑んだまま仰向けに倒れる。

   背中から血が広がる。

   俊太、涙を拭いスマホを取り出してLI

   NEを打つ。

俊太のLINE「終わった」

美帆のLINE「おつかれさま」

   俊太、深い溜息を付き目を閉じる。 

 

 

※雪、と聞いて真っ白な雪に赤い血が…という情景が浮かぶ私は

2時間サスペンス脳ですね(笑)

 

LINEの文面の書き方、回想の使い方等…課題も多い作品でした。