おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「葬式」誰がための涙

    人 物

 

新堂勇気(18) 高校生

古館愛智(18) 勇気の親友・故人

古館宝子(54) 勇気の母

古館望(16)  勇気の弟・高校生

古館舞子(75) 勇気の祖母

 

〇葬儀場・全景

   雨が降っている。

   入口に「古館家葬儀」の看板。

 

〇同・会場

   花がたくさんの祭壇。

   中心には笑顔の古館愛智(18)の遺影。

   僧侶が経を唱えている。

 

〇同・入口

   タクシーが停まる。

   後部座席から制服姿の新堂勇気(18)が降

   りてくる。

勇気「ありがとうございました…え、おつり?

 ああ、すみません…」

   タクシーに一度戻って再び降りてくる。

   駆け足で建物内に入る。

 

〇同・ロビー

   受付に職員の女性が立っている。

   勇気、鞄から袱紗を取り出して慣れない

   手つきで開く。

   香典袋を持って受付に立つ。

   受付の女性が頭を下げる。

   勇気、慌てて頭を下げ、香典袋を差し出

   す。

   受付の女性、受け取る。

受付「こちらにご記帳をお願いいたします」

勇気「は、はい」

   勇気、筆ペンをとり芳名帳に記帳する。

   他の名前を見る。

   下手な字や丸文字で書かれた名前がたく

   さん並ぶ。

勇気「…ふうん」

   勇気、会場への扉をそっと開ける。

 

〇同・会場

   祭壇の前、僧侶が経を読んでいる。

   勇気、最後列の端に座る。

   辺りを見回す。

   参列者の中からすすり泣く声が漏れ聞こ

   える。

   親族席、着物を着た古館宝子(54)が焦点

   の合わない目で宙を見たまま座っている。

   親族席後ろ、制服姿の古館望(16)がタオ

   ルを握り締めて泣いている。

   隣で古館舞子(75)が望の肩を撫でている。

   勇気、顎を撫でながら見ている。

 

〇(回想)A高校・屋上

  T・数週間前

愛智がフェンスに寄りかかって下のグラウ

ンドを見ている。

勇気、その隣でフェンスに背中を預けて座

スマホゲームをしている。

 

〇同・グラウンド

野球部が練習している。

端で陸上部が高跳びや幅跳びの練習をして

いる。

トラックをサッカー部がランニングしてい

る。

 

〇同・屋上

愛智、下を見ている。

愛智「楽しそうだよな、皆。青春してるってい

 うか」

勇気「そうか?暑い中運動ご苦労さんとしか思

 わんけど」

愛智「お前はそういう奴だよ。だからつるんで

 るんだけどさ」

   愛智、勇気を見て笑う。

   勇気、スマホから目を離さない。

   愛智、真顔になってまたフェンスに寄り

   かかる。

愛智「なぁ」

勇気「んー」

愛智「俺さぁ、死のうと思うんだけど」

勇気「ふーん…んん?」

   勇気、スマホを触る指が止まる。

   愛智を見上げる。

   愛智、勇気を見て笑顔になる。

愛智「やっとこっち見た」

   勇気、顔をしかめてまたスマホを触る。

勇気「冗談かよ」

愛智「いやいや冗談じゃないって。本気。本気

 の本気で言ってる。俺死のうと思う」

   勇気、溜息を吐いてスマホをしまう。

勇気「なんで」

愛智「理由は色々あるけど」

   愛智、空を見る。

愛智「俺が死んだら心から泣いてくれる人って

 いるのかなって」

 

〇(もとの)葬儀場・ロビー

   会場から参列者が続々と出てくる。

   制服姿の高校生が多数。

   全員涙を流し悲しんでいる。

   勇気、最後に会場から出てくる。

   自販機でジュースを買って壁に寄りかか

   り参列者を眺めている。

   宝子が勇気に気付き、近付いてくる。

宝子「あなた、新堂さんよね?愛智のお友達の」

   勇気、姿勢を正して頭を下げる。

勇気「アイチとはよくつるんでました。えっと、

 この度は…ご愁傷様です」

   宝子、頭を下げる。

宝子「仲良くしてくださっていたって、担任の

 深川先生からもうかがっています。本当にあ

 りがとうね…」

   宝子、ハンカチを握りしめ泣き出す。

勇気「…いえ」

   勇気、顎を撫でる。

宝子「今日もあんなにたくさんのお友達が愛智

 のために集まってくれて…あの子は皆さんに

 愛されていたとわかって…」

勇気「それは…どうなんですかねぇ」

   宝子、顔を上げる。

勇気「あの、僕はそろそろ失礼します」

   勇気、会釈して立ち去ろうとする。

   宝子、勇気の腕を掴む。

宝子「どういう意味ですか?」

勇気「いやあの」

宝子「あの子は、愛されていなかったと言うん

 ですか!?」

勇気「えっとなんというか」

宝子「そういえばあなた、他のお友達があんな

 に泣いてくださっていたのに、あなたは涙一

 つ見せていないのね。愛智のことを悲しんで

 いないのね?どうして?一番のお友達だった

 んでしょう?どうして?」

   宝子、勇気に掴みかかる。

   勇気、対応に困りされるがまま。

望「母さん?何やってるの」

   望が駆け寄り宝子を勇気からはがそうと

   する。

   宝子、必死に抵抗する。

宝子「どうしてあなたは悲しんでいないの?う

 ちの子が死んだのに悲しくないの!?ね

 え!」

   宝子、勇気の胸ぐらを掴む。

望「やめろってば!」

   望、宝子を強引に勇気から引きはがす。

   勇気、真顔で宝子を見つめる。

   望、宝子を抑えながら勇気を見る。

望「すみません、母が取り乱して…」

勇気「僕も悲しいです」

   宝子が勇気を睨みつける。

勇気「涙が出なくても悲しい時はあります。

 逆に、悲しくなくても涙が出せることもあり

 ますよね」

   勇気、宝子をジッと見る。

宝子「なによ…何が言いたいのよ」

勇気「あなたは悲しくないくせにそうやって涙

 を流して、悲しいフリが上手にできるんです

 ね」

   宝子、絶句。

望「ちょっとあんた、なんてこと言うんだ」

勇気「これからは思う存分可愛がれてよかった

 ですね。…ああ、普段から思う存分可愛がっ

 てたんでしたっけ」

望「何を言ってるんだあんた…」

   宝子、唇を震わせている。

   勇気、深々と頭を下げる。

勇気「失礼します」

   勇気、踵を返し早足で会場から出ていく。

   その背中を見送る望と、放心状態の宝子。

   宝子、膝から崩れ落ちる。

望「か、母さん」

   望、慌てて支える。

   宝子、大声で泣き出す。

 

〇同・入口

   雨が降っている。

   走って出てきた勇気、足を止める。

   傘は持っていない。

   勇気、小さくため息をついて外へ歩き出

   す。

 

〇同・敷地

   雨が降っている。

   びしょ濡れで歩いている勇気。

愛智の声「俺が死んだら心から泣いてくれる人

 っているのかな」

   傘を差している参列者の高校生の集団の

   横をすり抜けていく。

   高校生たちは笑っておしゃべりしている。

   勇気、それを横目で見ながら歩いていく。

   勇気、唇を噛みしめ、涙を堪えきれなく

   なって下を向いて泣きながら歩き続ける。

 

〇(回想)A高校・屋上

   愛智、スマホをいじる勇気の隣にしゃが

   みこみ顔を見てくる。

愛智「お前だけは心から泣いてくれるだろ?」

   勇気、チラリと愛智を見てすぐにスマホ

   に視線を戻す。

勇気「どうだかな」

愛智「そういう奴だよ、お前は」

   愛智、苦笑い

 

※元ネタは私が学生の頃、演劇部の文化祭公演でワンシチュエーションものとして

書いていたものです。

(屋上のシーンがそれ)

もう詳細は覚えてないんですが、台詞にデヴィ夫人は若い頃超美人だったとか、井川遥最高とか…まぁくっだらない男子っぽい会話を入れてたことだけは覚えてます(笑)