おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「医者」僕のヒーロー

    人 物
植田雄基(26) 研修医
植田雄基(6) 小学生
鈴木和久(30) 植田の指導医
緑山昂(9)  小児科の患児
道明寺孝男(10) 小児科の患児
植田礼子(50) 植田の母親
道明寺孝一(6) 植田の同級生
長寺大輔(6)  植田の同級生植田雄基
 研修医二年目で小児科に配属中。
 気弱で引っ込み思案な性格で運動は苦手と典型的なインドア派。幼少期から勉強するかヒーロー番組を見ることしかしていなかったため、かなりのヒーローオタクで世間知らず。
 趣味はヒーロー番組鑑賞とオリジナルフィギュア製作。手先が器用なのでかなりの完成度を誇り界隈では結構有名。
 元々の性格と幼い頃に同級生のガキ大将が怖くて、そのトラウマのため、元気な子供が苦手。小児科の研修が憂鬱で早く第一志望の内科で働きたいと思っているが、趣味の影響で外科処置が天才的にうまく、外科から熱い目で見られている。
 基本的に前に出たがらないが正義への憧れは人一倍強く、とっさに大胆な行動へ出ることも。


〇児童公園(夕)
   T・2003年
   子どもたちが遊んでいる。
   植田雄基(6)がベンチに座ってマスクレ
   ンジャーの絵本を読んでいる。
   傍らにマスクレンジャーのソフビ人形。
   道明寺孝一(6)、長寺大輔(6)が駆け寄って
   くる。
   二人の服にひらがなの名札。
孝一「植田~サッカー入ってくれよ」
雄基「僕はいいよ」
大輔「えー一人足りないんだよ入れよ」
雄基「いいって」
孝一「外で何読んでんだよ」
   孝一、本を取り上げる。
孝一「マスクレンジャー!?うわー!お前まだこ
 んなの読んでんのかよ!お子様じゃーん」
雄基「か、返してよ!」
   雄基、手を伸ばすが孝一は返さない。
孝一「返してほしかったらこっちでサッカー
 な!」
   孝一と大輔、本を持ったまま広場へ走っ
   ていく。
   雄基、後を追って走る。
   すぐに転んでしまう。
大輔「なにやってんだよトロいな!」
   大輔、雄基に駆け寄って強引に腕を引い
   て立たせる。
大輔「はやくはやく!」
雄基「ま、まって」
   大輔、雄基を引きずって走る。
   雄基、必死についていく。
   ベンチを振り返る。足元にソフビ人形が
   落ちている。

〇植田の部屋(夕)
   T・2023年
   床に倒れているマスクレンジャーのリア
   ルなフィギュア。
   植田雄基(26)が拾い上げる。
   埃を払って棚の上のディスプレイボック
   スに飾る。
植田「よし」
   植田、部屋を見渡す。
   部屋中にフィギュアやプラモ、ホビー誌
   や漫画が散らばっている。
   机の上は医学書や参考書がある。
植田「許すまじ、震度3…」
   フィギュアや雑誌を拾い集め始める。
   乱暴にドアをノックする音。
礼子の声「すごい地震だったけど、雄ちゃん大
 丈夫だった?ケガしてない?」
植田「大丈夫。色々棚のものが落ちたくらいだ
 から」
礼子の声「そう?」
   足音が遠ざかる。
   植田、深いため息。
   もう一度部屋を見回す。
植田「今日中に終わるかな…」

〇天音総合病院・小児科(朝)

〇同・医局前(朝)
   私服の植田がドアの前に立っている。
   ポケットからマスクレンジャーの小さな
   ソフビ人形を取り出して両手で握る。
植田「今日も一日、平和に終わりますように」
   深呼吸してドアに手をかける。
鈴木「お祈りは終わりか?」
   植田の後ろに鈴木和久(30)がいる。
植田「す、鈴木先生!」
鈴木「おはようさん」
植田「お、おはようございます…」
   鈴木、ドアを開ける。
鈴木「患児のために用意してんのかと思ってた
 けど、お前さんのお守り替わりだったんだな、
 それ」
   植田、慌ててソフビを隠す。
鈴木「別にいいと思うぞ?ただ、無くさないこ
 とと衛生面には気を配っとけよ」
植田「は、はい」
鈴木「よし。ほら入れ。着替えたら申し送り受
 けに行くぞ」
植田「はい」
   植田、駆け足で入る。

〇同・医局(朝)
   植田、鈴木の指導を受けながら電子カル
   テをチェック。
   指導を聞きながら胸ポケットからメモ帳
   を取り出す。
   ソフビが転がり出て慌てて拾い上げ鈴木
   に頭を下げる。

〇同・廊下(朝)
   植田の前を鈴木が歩いていく。
鈴木「回診自体は初めてじゃないだろ?」
植田「はい。内科系を回った時に一通り」
鈴木「ここは小児科だ。当然、入院患者は全員
 未成年…こどもだ。大人とは違うってことを
 よく頭に入れておけよ」
植田「わ…わかってます」
鈴木「そんなに深刻な顔することないさ。なに、
 君ならすぐにこどもと仲良くなれるんじゃな
 いか?」
   鈴木、植田の胸ポケットを指で突く。
鈴木「おはようみんな~調子はどうかな?」
   病室に入っていく鈴木。
   植田、胸ポケットをそっと掴む。

〇同・病室(朝)
   鈴木、緑山昂(9)と仲良く話しながら診察
   している。
   植田、強張った顔で様子を見ている。
   昴、植田を見る。
昴「ねー鈴木先生。このおじさん誰?」
鈴木「おじさんじゃないよ、植田先生。今小児
 科の勉強中なんだよ」
   鈴木、植田にアイコンタクト。
   植田、慌てて昴に近づく。
植田「は、はじめまして植田です。一ケ月とい
 う短い期間ですがどうぞよろしく…」
昴「ねー、それ笑ってるつもり?顔怖いよ」
鈴木「こら、そういうこと言わない。ちょっと
 血もらうね。植田先生、採血よろしく」
植田「は…はい」
   植田、昴の採血を始める。
   ルートを取る指が震えている。
   鈴木、後ろで見守っている。
昴「ねー。この人めっちゃブルブルしてんだけ
 ど。ホントに大丈夫?」
植田「だ、大丈夫だよ。大丈夫…」
昴「痛くしない?失敗しない?」
   植田、胸ポケットをギュッと掴む。
植田「うん…まかせて」
   植田、なんとか採血に成功。
   植田と昴、同時に溜息。

〇同・廊下(朝)
   植田、鈴木に頭を下げる。
植田「手間取って申し訳ございません」
鈴木「いいよ。無事一回で採血できたし。それ
 より…植田先生、こども苦手?もしかして」
植田「え、ええまぁ」
鈴木「やっぱりそうなんだ。そんなの持ってる
 からてっきりこどもが好きなんだと思ってた
 よ」
植田「ヒーローは大人ですから」
鈴木「確かに役者は大人だな。さ、次だ」
   鈴木、病室へ入っていく。
   植田、名札を見る。
   「道明寺孝男」
植田「どうみょうじ…」
   植田、慌てて病室へ入る。

〇同・病室(朝)
   ベッドの上に起き上がっている孝男、ベ
   ッドサイドに立つ鈴木が振り返る。
   植田、孝男を見て硬直。
   孝男と孝一の姿が重なって見える。
植田「道明寺…孝一…」
孝男「何?この人」
植田「あ、いやその…」
鈴木「孝男くん、今朝の具合はどう?」
   鈴木、診察を始める。
   孝男、目線を逸らす。
孝男「別に変わらない」
鈴木「今朝もご飯残したんだって?ちゃんと食 
 べなきゃだめだよ」
孝男「薬は飲んだんだからいいじゃん」
鈴木「ふむ…。植田先生」
植田「は、はい」
鈴木「採血を」
植田「え」
   鈴木と孝男、植田を見る。
   植田、胸ポケットをギュッと握る。
植田「はい」
   植田、採血の用意を始める。
   孝男、目線を合わせない。
   植田、おそるおそる孝男の腕を取る。
   植田、ぎこちない手つき。
   孝男、植田を見る。
   植田の胸ポケットからソフビが覗いてい
   る。
孝男「あーっ!」
   植田と鈴木、ビックリ。
植田「え?」
孝男「それ!見せて」
   植田、胸ポケットからソフビを取り出し
   て孝男に渡す。
   孝男、ソフビを見て笑顔。
孝男「わぁーっ!マスクレンジャーだ!」
植田「え、し、知ってるの?」
孝男「うん!パパから教えてもらったんだ!か
 っこいいよねー!先生も好きなの?」
植田「え、君のお父さんも…?」
孝男「うん!」
   孝男、ソフビを眺めている。
   植田、笑顔で孝男の腕を取る。

 

 

★実はシナセンのガンバリストに選出していただいた作品でもあります♪

 以前選んでいただいた時も台詞絡みでした

 どーでもいいノリの台詞に定評がある私です(笑)