おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「愛する一瞬」サウンド・オブ・ホーム

    人 物
六道映理(25)契約社員
和田誠(27)正社員
 

〇株式会社ダイアホーム・企画部
   ゴタゴタした社内に電話が鳴り響く。
   社員たちが忙しそうに働いている。
   壁の成績表、大和田誠がトップになって
   いる。
   六道映理(25)が電話を取る。
映理「はい、ダイアホーム企画部・六道が承り
 ます…はい、お世話になっております」
   向かいの席に携帯で話しながら大和田誠
   (27)が戻ってくる。
大和田「それでは失礼します(電話を切る)」
   映理、大和田を見る。
映理「あ、はい。その件でしたら、…えぇ、少々
 お待ちくださいませ」
   映理、電話を保留にする。
映理「大和田さん、1番に榊建設の田村さん」
大和田「あ、ありがと…」
   大和田、映理に笑顔を向けかけてからハ
   ッとして目を逸らす。
大和田「ご苦労」
   映理、言葉に詰まる。
大和田「(電話に出て)どうも田村課長!お待た
 せいたしました!先日の件でしょうか」
   にこやかに話す大和田。
   映理、大和田を見つめて頬を膨らませる。
映理「なーにが『ご苦労』よ」
   大和田を睨みつけ、舌を出す映理。
   視線に気づいた大和田、映理の顔に驚く。
   電話が鳴り、すました顔で映理が出る。
映理「はい、ダイアホーム企画部・六道が承り
 ます…はい、お世話になっております」
   大和田、映理を睨みつける。

〇同・会議室前
   ドアに「使用中」の札がかかっている。
大和田の声「さっきのはなんだお前」

〇同・会議室
   大和田、資料の束を前に仁王立ち。
   映理、資料を一部ずつ分けて製本作業。
大和田「俺が真面目に仕事の電話をしている時
 に邪魔するような真似して。これだから仕事
 に真剣さが足りない契約社員は嫌なんだ」
映理「わざわざ相手が私だからって態度変える
 ようなマネすることのどこが真面目なんです
 か?ほら、製本手伝ってくださいよ。あなた
 の希望でしょ?今どきアナログな資料作成」
   映理、ホッチキスを差し出す。
   大和田、目を逸らす。
大和田「単純な事務作業は女の方がうまいんだ」
映理「あー今度は女性蔑視!大和田さん、実は
 20くらい年齢サバ読んでません?価値観古す
 ぎ。ていうか自分が不器用でできないことと
 性別絡めないでくれます?」
大和田「うるさいな君は!こんな契約社員は初
 めてだ!できないなんて言ってないだろう!
 俺は何をやらせてもうまいんだ!」
   大和田、ホッチキスをひったくって資料
   の束を綴じ始める。
   悪戦苦闘する大和田を見る映理、微笑む。
映理「そうそう。二人で頑張りましょうねー」
   資料の表紙「駅前ランドマークマンショ
   ン建設について・発案者 大和田誠・六
   道映理」

〇同・会議室(夕)
   資料の表紙に夕日が差し込んでいる。
   各座席に製本された資料が並んでいる。
   映理、満足げに見ている。
映理「完璧。(腕時計を見て)ちょうど間に合い
 ましたね、大和田さん」
   映理、隣の大和田を振り返る。
   大和田、机に突っ伏している。
映理「大和田さん?」
   大和田、ハッとして顔を上げる。
大和田「な、なんだ?ちょっと寝てた…」
映理「これから大事な会議って言う時に緊張感
 ないですねぇ。真剣さが足りないのってどっ
 ちでしたっけ」
大和田「ちょっと昨日寝不足だっただけだ」
   大和田、起き上がるが足元がふらつく。
   映理、慌てて支える。
映理「何やってんですか。大丈夫ですか?プレ
 ゼン代わりましょうか」
大和田「触るな、契約社員
   大和田、映理の手をどかす。
大和田「トイレ行ってくる」
   大和田、出ていく。
映理「まー可愛くない。そんな調子でプレゼン
 なんてできるんですかねー」
   ドアが閉まる。
   映理、ドアを見つめる。
   ×   ×   ×
大和田の声「お手元の資料を開いてください」
   会議室に重役が複数人並んで資料を開い
   ている。
   大和田、マイクを持って登壇している。
   映理、脇に立ち資料を見ている。
大和田の声「なごみ駅周辺は再開発計画が進ん
 でいて…」
   マイクを通す大和田の少し苦しそうな声。
   映理、大和田を見る。
   大和田、演台に手を突いて話している。
   大和田の首筋に汗が大量に浮かんでいる。
   映理、大和田に駆け寄ろうとする。
   大和田、話しながら映理を手で制止する。
   映理、立ち止まる。
   大和田、背筋を伸ばして話を続ける。
大和田「今後都心部へのアクセスが改善される
 ことから、なごみ駅周辺がベッドタウンとし
 て機能することが可能となります。そこで…」
   映理、大和田をジッと見つめる。

〇同・企画部(夜)
   映理と大和田が入ってくる。
   映理、電気を点ける。
   席に手を突いてうつむく大和田に近付く。
映理「お疲れさまでした、完璧だったと思いま
 す。でも…大丈夫ですか?」
大和田「(間を置いて)うん?」
   映理を振り返る大和田、真っ青。
映理「え、真っ青じゃないですか…」
   大和田、意識を失い映理に倒れこむ。
   映理、慌てて受け止める。
映理「お、大和田さん!大和田さん!?」
   大和田、目を閉じている。

〇医務室(夜)
   ベッドに横になる大和田。
   映理、電話しながら大和田の額に冷却シ
   ートを貼る。
映理「うん、だからちょっと帰り遅くなる…ご
 飯はチンして食べて。ごめんね。姉ちゃんい
 なくてもちゃんと宿題して寝てよ。…うん、
 じゃあね」
   大和田、映理の手首を掴む。
映理「(電話を切って)大和田さん?気が付きま
 した?」
   大和田、目を閉じたままうなされている。
大和田「かあ、さん…行かないで…」
   映理、目を丸くする。
大和田「いやだ、一人は嫌だ…いい子にするか
 ら。全部言うこと聞くから…頑張るから…」
   大和田、涙を流しながらうなされている。
   映理、大和田の手を取って握り締める。
   反対の手で大和田の頭を撫でる。
映理「大丈夫、大丈夫、一人じゃないからね」
   大和田、声をあげて泣いている。
   映理、繰り返し声をかける。
      ×   ×   ×
   静かに眠っている大和田。
   ゆっくりを目を開けて周囲を見回す。
映理の声「だから!そういう考えがおかしいっ
 て言ってるんです!」
   大和田、顔を上げる。
   ドアの向こう、窓越しに映理の背中が見
   える。

〇医務室前(夜)
   映理が大和田の電話で話している。
   映理の大声が廊下に響いている。
映理「わかります?一番苦しい時に真っ先に出
 た言葉が『行かないで』ですよ!?どんだけ息
 子に寂しい思いさせてんですかあなたは!
 確かに誠さんは優秀ですけどねぇ、あなたの
 教育が悪いせいで寂しがり屋のくせに人にマ
 ウント取ることしかできない人間に育っちゃ
 ってんですよ!それで一番弱った時に大声で
 泣かなきゃならないんです!わかります?大
 の大人が『行かないで~』って泣くカッコ悪
 さ!誰の責任ですかこれ!」

〇医務室(夜)
   大和田、ベッドから半身を起こして映理
   を見ている。
大和田「六道…」
映理の声「もういいです!あなたみたいのが毒
 親っていうんですね!よーくわかりました!
 勉強になりました!ありがとうございまし
 た!さよなら!」
   乱暴にドアが開き映理が入ってくる。
   大和田、ポカンと映理を見る。
映理「具合、ちょっとは良くなりました?」
大和田「あ、ああ」
映理「そうですか、よかった」
   映理、冷蔵庫に向かい中から麦茶のペッ
   トボトルを取り出す。
   映理、無言でコップに麦茶を注ぐ。
大和田「あの、六道…」
映理「大和田さん」
   映理、麦茶の入ったコップを大和田に差
   し出す。
映理「私、決めました。私があなたに家族って
 いうものを教えてあげます」
   大和田、映理を見上げる。
   映理、大和田を見つめ返す。
   大和田、苦笑を浮かべる。
大和田「それってプロポーズか?」
映理「えっ」
   大和田、コップを受け取る。

 

★ノリノリの会話劇って好きです。

 お互いにマシンガンのごとく喋りまくるような。

 この回では伏線について教えてもらいました。

 伏線一つ貼るだけで何気ないシーンがよりエモくなるわけですね…深い…