おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「古痕」その手を繋いで

    人 物
竜田誠也(23)フリーター
常盤淳(33)ひき逃げ犯
尾山孝雄(23)誠也のバイト仲間
緑川詩帆(20)誠也のバイト仲間 
運転手(55)トラックドライバー
店長(31)

〇中古ショップ「キング・オフ」・全景
   蝉が元気に鳴いている。
詩帆の声「お願い、竜田くん」

〇同・男性用控室
   ロッカーが並んでいる。
   尾山孝雄(23)が制服に着替えている。
   その隣で長袖シャツ姿の竜田誠也(23)に
   私服の緑川詩帆(20)が手を合わせている。
詩帆「明後日課題あって、マジで単位ヤバいの。
 バイトしてる場合じゃないんだ。ねえお願い」
誠也「うーん」
尾山「竜田聞いてやることないぞ。お前明日朝
 から別のバイト入ってるって言ってただろ」
詩帆「あんたに関係ないでしょ黙ってて」
尾山「あんたって何だよ先輩だぞこっちは」
誠也「まぁまぁ。(詩帆に)他のバイトもあるか
 ら、全部は出られないかもしれないけどそれ
 で良ければ」
尾山「おい竜田」
詩帆「いいの?やった、じゃあよろしくね!そ
 れじゃ!アタシ帰るわ。おつかれっ!」
   詩帆、鼻歌を歌いながら部屋を出ていく。
詩帆の声「あ、もしもし?アタシ。明日オッケ
 ーになったよ。ねぇマジでイケメンいるの?
 超楽しみなんだけどー」
尾山「あいつ、やっぱり嘘じゃねえか」
   尾山、詩帆を追おうとする。
   誠也、尾山の肩を掴んで止める。
誠也「いいっていいって」
尾山「良くないだろ、緑川にいいように利用さ
 れたんだぞ」
   誠也、着替えを再開する。
誠也「でも用事があってシフト入れないのは事
 実だし。困ってたのは確かだろ?」
尾山「お前この前もそうやってシフト代わって
 たじゃん。掛け持ちばっかでろくに休んでな
 いくせに、まだ休み減らすようなことして」
誠也「困ってる人を助けられるなら俺はそれで
 いいんだよ」
尾山「良くないよ。お前ただでさえあの事故以
 来ちょっと大変なくせに。この前おつりぶち
 まけてただろ。明らかに寝不足のせいだった
 じゃん。無茶しすぎなんだよ」
誠也「いいんだよ、働いて誰かのためになって
 ると気が休まるんだから」
   誠也、ロッカーを閉める。
   半袖の制服の下に長袖の黒いアンダーシ
   ャツを着ている。
誠也「行こう」
   誠也、ドアに向かう。
尾山「あ、ああ」
   尾山、誠也の腕を見ながら駆け寄る。

〇同・廊下
   誠也と尾山が並んで売場に向かっている。
尾山「前から気になってたんだけど」
誠也「なに?」
尾山「それも、事故のせいか」
   尾山、誠也の腕を指す。
   誠也、腕を見て、ああと笑う。
誠也「まあね。ちょっと見せられないし。自分
 でも目に入ると色々辛いからさ」
   尾山、誠也の顔を見る。
   誠也、笑顔で歩いている。
   尾山、目を逸らす。
尾山「犯人、捕まってないんだってな」
誠也「そうなんだよ。早くいい報告を優也の墓
 にしてやりたいんだけどな」
尾山「そうだよな」
誠也「俺たちを無視して走り去ってくあいつの
 特徴覚えてるし、自分で捕まえられりゃ一番
 なのにな。そしたらあいつの首を墓に持って
 いける」
尾山「お前それは」
誠也「冗談」
   誠也、笑顔を見せる。
   尾山、苦笑いを返す。

〇同・店内
   客がそれなりに入っている。

〇同・スタッフカウンター内
   尾山がレジ打ちをしている。忙しそう。
   誠也、レジ奥で買取商品を清掃している。
   買取カウンターに複数の客が待っている。
   尾山、横目で買取カウンターを見て誠也
   を振り返る。
尾山「買取お願いしまーす」
誠也「あ、はい!」
   誠也、カウンターに駆け寄る。

〇同・買取カウンター
   複数の客が並んで待っている。
   誠也、受付している。
   金髪に赤のメッシュが入った目立つドレ
   ッドヘアの常盤淳(33)が列に並んでいる。
誠也「査定が済みましたらお呼び致しますので
 店内でお待ちください」
   順に客が離れていく。
   常盤がカウンターに立ち、漫画の入った
   袋をデスクに乗せる。
   誠也、笑顔で顔を上げる。
誠也「大変お待たせいたしました…」
   誠也、常盤の顔を見て驚いて固まる。
常盤「すんません、受付」
   誠也、我に返り笑顔を作る。
誠也「も、申し訳ございません。それでは…」

〇同・レジ
   尾山、不思議そうに誠也の背中を見てい
   る。

〇同・買取カウンター
   誠也、俯いて右腕をギュッと掴む。
   下を向いたままニヤリと笑う。

〇同・店舗前
   常盤がレシートと小銭を手に出てくる。
   上着のポケットに押し込み歩きだす。

〇道
   常盤が歩いている。
誠也の声「あの」
   常盤が振り返る。
   制服姿の誠也が立っている。
常盤「何スか」
誠也「半年前武藤公園の前で事故起こしました
 よね」
常盤「は?」
誠也「小学生の男の子と手を繋いでいる大人の
 男性に突っ込んで、子供を跳ね飛ばしました
 よね」
常盤「あんた…なにを…」
誠也「一度停車したくせに、降りないでそのま
 ま逃げていったよな?そのせいで倒れていた
 子供をもう一度轢いた!」
   常盤、後ずさりする。
   誠也、アンダーシャツをまくり上げて大
   きな手術痕を見せる。
誠也「アンタに撥ねられて負った傷だ。繋いで
 いたはずの優也は飛ばされていた!あんたの
 そのド派手な頭!忘れるもんか!」
   常盤、慌てて踵を返し走り出す。
誠也「待て!」
   誠也、追いかける。

〇中古ショップ「キング・オフ」・男性用控室
   尾山がロッカーにもたれて携帯をいじっ
   ている。
   店長が顔を出す。
店長「竜田知らないか」
尾山「え、見てないですけど」
店長「おかしいな休憩所にもいないんだ」
   店長、去っていく。
   尾山、しばらく考えてハッとして控室を
   出ていく。

〇道
   常盤、必死に逃げていく。
   誠也、鬼の形相で追いかける。
   常盤、何度も振り返りながら走る。

〇道・交差点
   常盤、交差点に飛び出す。
   トラックが走ってくる。
   常盤、トラックにはねられる。
   誠也、驚いて立ち止まる。
   常盤が地面に転がる。
   トラックの運転手が降りてきて常盤に近
   付く。
運転手「お、おいあんた大丈夫か!き、救急車!」
   運転手、慌てて走り去る。
   誠也、茫然と見ている。
   傷だらけの常盤、誠也を見る。
常盤「たす…助けてくれ…」
   誠也、常盤を見る。
常盤「助けくれ…頼む、痛いんだ…」
   常盤、傷だらけの手を伸ばす。
   誠也、唇を噛み、右腕をギュッと掴む。
   常盤、泣きそうな顔で手を伸ばす。
常盤「お願いだ…お願い、します…」
誠也「なんだよそれ…なんだよ…!」
   誠也、右腕を掴んでうつむく。
   常盤、呻いている。
   誠也、顔を上げる。
誠也「優也、すまん」
   誠也、制服のエプロンを取って常盤に近
   付く。
   エプロンで常盤に止血を施す。
   常盤、誠也を見る。
常盤「ありがとう…」
誠也「許すつもりはないからな。ちゃんと罰は
 受けさせてやる。その為に今は助けるだけだ」
   常盤、目を閉じる。
   運転手が走ってくる。
運転手「あと少しで到着するからな!しばらく
 頑張ってくれ!」
誠也「あの時もこうしてくれてたら…」
   誠也、エプロンの裾を握る。

 

※この課題には悩まされました…

 自分的にはなかなかドラマチックなシーンを書けたのではないかと

思います…(笑)

 シーン切り取りってスキなシーンだけ書けるのが楽しいです。