おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「宿命」綱がる

    人 物

城戸瑛一(5)(10)

城戸誠一(30)(35)瑛一の父

城戸美代(30)瑛一の母

前野雄哉(35)誠一の部下

須賀タクミ(10)瑛一の友達

相川マナブ(10)瑛一の友達

タクミの母(35)

マナブの母(40)

校長(54)

安江一郎(29)瑛一のクラス担任

 

 

〇墓地

   蝉がうるさく鳴いている。

   スーツ・サングラス姿で花束を持った城

   戸誠一(30)が城戸瑛一(5)の手を引いて歩

   いてくる。

 

〇同・城戸家の墓

   誠一、花を供え手を合わせる。

   瑛一、後ろでボーっと立っている。

   誠一、振り返り瑛一の腕を引く。

誠一「ほら瑛一。お前もお祈りしなさい」

   瑛一、誠一の隣に立ち、誠一を見ながら

   手を合わせる。

誠一「いい子だ」

   誠一、瑛一の頭を乱暴に撫でる。

誠一「いいか瑛一。ここに眠っているのはお前

 の祖父さんだ。とても立派な軍人でな。いく

 つも勲章をもらっているんだぞ」

瑛一「どうやったらもらえるの」

誠一「敵をたくさんやっつけたらもらえるんだ」

瑛一「じゃあじいちゃんはヒーローだね!悪い

 奴をたくさんやっつけたんだね」 

誠一「そうだ。お前も祖父さんの血を引いてる

 んだから立派な男になるんだぞ」  

瑛一「うん!」

   誠一、微笑んでもう一度瑛一の頭を乱暴

   に撫でる。

 

〇小学校・校庭(夕)

   須賀タクミ(10)と相川マナブ(10)が遊ん

   でいる。

   瑛一(10)が近付く。

   タクミとマナブ、瑛一に気付く。

瑛一「俺も混ざっていい?」

   タクミとマナブ、顔を見合わせてから瑛

   一を見る。

タクミ「いいよ」

タクミの母「(強い口調)タクミ!」

   瑛一とタクミとマナブ、振り返る。

   険しい表情のタクミの母(35)が入口に立

   っている。

タクミ「母さん」

   タクミが走り寄る。

タクミの母「あんた、城戸くんとは遊んじゃダ

 メって言ったじゃないの」

タクミ「でもマナブも一緒だし」

タクミの母「二人きりじゃなかったらいいわけ

 じゃないの」

    瑛一とマナブも駆け寄る。

    タクミの母、取り繕った笑顔を向ける。

タクミの母「ごめんね、もうタクミは家に帰る

 時間だから」

タクミ「えーもっと遊びたい」

タクミの母「ダメ!」

瑛一「おばさん、タクミもうちょっと遊びたい

 って」

   瑛一、一歩前に出る。

   タクミの母、一歩下がる。

タクミの母「ダメよ!ダメダメ、もう一緒には

 遊べないの!じゃあね!」

   タクミの母、瑛一から目を逸らして、急

   いで歩き出す。

   腕を引かれたタクミ、不満そうに手を振

   って歩き出す。

マナブの母「(悲鳴)マナブちゃん!」

   逆の方向から、マナブの母(40)がマナブ

   に駆け寄る。

マナブ「あ、ママ」

マナブの母「何してるの、帰るわよ!急いで!」

マナブ「えー」

   マナブの母、マナブの手を引く。

瑛一「あの」

   マナブの母、悲鳴を上げて踵を返す。

   マナブとマナブの母、歩いていく。

   瑛一、その背中を見つめる。

マナブの母の声「城戸くんと遊んじゃダメだっ

 て言ったでしょ。あそこは殺人鬼とやくざの

 家なんだから」

マナブの声「えーでも瑛ちゃんは悪いことして

 ないよ」

マナブの母の声「あんな親や祖父がいていい子

 なわけないでしょ。気に入らないことがあっ

 たら何されるか…。ああ怖い」

   マナブとマナブの母の姿が角を曲がって

   見えなくなる。

   瑛一、角をジッと見ている。

   黒塗りのセダンが入口に停車する。

   後部から誠一(35)が降りてくる。

   瑛一に近づく。

誠一「瑛一、帰るぞ」

   瑛一、誠一を黙って見ている。

誠一「なんだ、お前ひとりか?一人で遊んでい

 たのか。さみしい奴だな」

   誠一、瑛一の頭を撫でようとする。

   瑛一、誠一の手を払い歩き出す。

誠一「どうした」

   誠一、瑛一の後に続く。

瑛一「なんでもない」

誠一「怒っているだろう。さみしい奴と言った

 からか。それくらいで怒るのは男らしくない

 ぞ」

   瑛一、立ち止まって誠一を睨みつける。

瑛一「僕に友達がいなくなったら、パパのせい

 だからな!」

   瑛一、走ってセダンを通り過ぎていく。

   誠一、瑛一を笑って見送る。

 

〇瑛一の家・全景(夕)

   純和風家屋の豪邸。

   瑛一が走ってくる。

 

〇同・玄関(夕)

   瑛一、引き戸を開けて入ってくる。

瑛一「ただいま」

   背を向けていた前野雄哉(35)にぶつかる。

瑛一「うわっ」

   瑛一、しりもちをつく。

前野「おや坊ちゃん。おかえりなさいませ」

   前野、振り返り膝をついて瑛一に手を差

   し出す。

   瑛一、前野の顔と手を交互に見る。

   前野の手を払って立ち上がる。

前野「おや」

   瑛一、横をすり抜けて家の中に入ってい

   く。

   誠一が玄関に入ってくる。

誠一「おう、前野」

   前野、誠一に深く頭を下げる。

前野「お疲れ様です!」

誠一「瑛一帰って来たか」

前野「はい、俺を睨みつけていきました」

誠一「さっきから不機嫌なんだよな」

前野「反抗期ですかねぇ」

誠一「あいつのことは美代に任せてるからな。

 それで?何の用だ」

   誠一、懐から煙草を出しながら部屋に上

   がろうとする。

前野「例の取引の件で…。ボス、家の中は禁煙

 でしょう」

誠一「おっと」

   誠一、煙草をしまう。

 

〇同・リビング(夜)

   お絵描きをしている瑛一。

   テレビが点いている。

   任侠映画が流れている。

   パンチパーマのボスが短刀を下っ端に突

   きつけている。

ボス「おぅ、ケジメつけたらんかい」

   瑛一、顔を上げテレビを見る。

   城戸美代(30)が入ってくる。

美代「瑛一ちゃん、もういい加減寝ないとパパ

 みたいになれないわよ」

瑛一「別にいいよ。こんなんなりたくないし」

   瑛一、テレビを指差す。

   美代、顔をしかめる。

美代「こんなのと全然違うわよ」

   瑛一、テレビを見つめたまま。

瑛一「一緒だよ、全部」

 

〇小学校・全景(夕)

   チャイムが鳴る。

   児童が下校していく。

   黒のセダンが駐車場に入っていく。

 

〇同・応接室(夕)

   頬にガーゼを貼った瑛一が無表情で座っ

   ている。

   向かいのソファに、タクミとタクミの母

   が座っている。

   タクミの顔に絆創膏が数枚。

   タクミの母がタクミを抱きしめている。

   校長(54)と安江一郎(29)が立って待機し

   ている。

   誠一がいきなり入ってくる。

誠一「瑛一!」

   タクミの母、悲鳴を上げて縮こまる。

   誠一、部屋を見回して瑛一の傍に駆け寄

   る。

誠一「瑛一、けがをしたのか。されたのか。何

 があった」

   瑛一、答えない。

安江「お、お父さん落ち着いてください。今話

 を…」

誠一「私は息子に聞いているんです!」

   安江、怯えて後ずさる。

誠一「瑛一、何があった。ケンカと聞いたがど

 ういうことなんだ」

   瑛一、誠一をゆっくりと見る。

瑛一「全部あんたのせいだよ」

誠一「なに?」

瑛一「あんたやじいちゃんの血が流れてるから。

 俺はこんなに孤独なんじゃないか!」

   瑛一、テーブルを思い切り蹴る。

   テーブルの上のカップが倒れる。

   タクミとタクミの母、怯える。

   瑛一、タクミを見て目を伏せる。

瑛一「…ほら。いつもこうなる」

   瑛一、拳を握る。

   誠一、茫然と瑛一を見る。

 

 
※宿命とは…?と悩みながら書きました

 逃れられないのが宿命、らしいので

 血のつながりからは逃れられないですからね…