おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「軽井沢」ドロップス

    人 物

城戸誠也(22)大学四年生

松木孝一郎(22)城戸の恋人

城戸誠(45)城戸の父

城戸真澄(40)城戸の母

 

〇城戸の家・全景

   霧雨が降る中、佇んでいる豪邸。

 

〇同・リビング

   窓際で雨の庭を眺めている城戸真澄(40)

城戸の声「(怒って)なんだよコレ!」

   真澄、振り返る。

   見合い写真を握り締めて怒りの表情の城戸誠也(22)

   城戸誠(45)、平然とソファに座っている。

   優雅に葉巻をふかしている。

誠「見てわからんか、見合い写真だ」

城戸「俺まだ大学生だぞ、見合いなんて」

誠「それがどうした。もうとっくに結婚はできる歳だ」

城戸「嫌だ、俺はまだ結婚なんかしない」

誠「お前の意見など聞いていない。これは決定事項だ」

城戸「父さん!」

誠「お前に恋人がいるなら別れておけ。どうせくだらん人間だろう」

城戸「ふざけんなよくそ親父」

誠「約束は来週の日曜だ。わかったな」

   誠、葉巻を咥え本を読み始める。

   真澄、困って城戸と誠を見比べている。

   城戸、唇を噛んで部屋を飛び出していく。

真澄「せいちゃん」

   真澄、城戸を追って部屋を出ていく。

 

〇同・玄関

   真澄が部屋を出てくる。

   城戸、靴を履いて家を出ていこうとしている。

真澄「どこへ行くのせいちゃん、外は雨よ」

   城戸、振り返らず家を出ていく。

真澄「せいちゃん」

   真澄、追おうとする。

誠の声「放っておきなさい、真澄」

   真澄、足を止めて玄関扉を見つめる。

 

〇児童公園

   誰もいない公園。

   雨でびしょ濡れの城戸、ブランコに座って項垂れている。

   ズボンのポケットでスマホが鳴っている。

 

〇児童公園前

   傘をさした松木孝一郎(22)が電話をかけながら歩いてくる。

松木「…出ないなぁ」

   児童公園の前に差し掛かりふと公園内を見る。

松木「あれ、城戸?」

   松木、児童公園へ足を向ける。

 

〇児童公園

   項垂れている城戸。

   松木、傘を差しだす。

   顔を上げて松木を見る城戸。

城戸「松木…」

松木「何やってんの。僕からの電話にも出ないでこんなとこで」

   城戸、またうつむく。

城戸「別に何も」

松木「何もって」

   松木、城戸を見つめる。

   城戸の濡れた頭を撫でる。

   城戸、不機嫌そうに顔を上げる。

城戸「なんだよ」

松木「いや、城戸ってしょっちゅう濡れてるなって思って」

城戸「はぁ?」

松木「だって初めて会った時もさ」

   松木、鞄を漁って折りたたみ傘を取り出す。

 

〇(回想)白糸の滝

   T・1年前・夏

   観光客も多く賑わっている。

   松木、水辺で座り込み覗き込んだり、立ってみたりと挙動不審。

松木「あぁどうしよう…」

城戸の声「どうかしたんですか」

   松木が振り返ると重装備のハイキングスタイルの城戸が立っている。

松木「あ、いやその」

城戸「めっちゃ怪しい人ですけど。あんた」

   松木、黙って滝を指差す。

   水面にお守りが浮かんでいる。

   城戸、松木を見る。

城戸「あんたの?」

松木「(うなずいて)ちょっとポケットから落ちちゃって、それで」

   城戸、黙って水面に近づいていく。

   リュックに差していたストックを抜いて、腕を伸ばしてお守りを取ろうとする。

   松木、後ろから見つめている。

松木「と、取れそうですか」

   ストックはお守りを掠めるがなかなか取れない。

城戸「もう、少し…」

   お守りがストックに当たってまた離れる。

   城戸、必死で腕を伸ばす。

城戸「ちょ、ちょっと支えて!」

   松木、慌てて城戸の体を支える。

   城戸、ギリギリまで腕を伸ばす。

   もう少しでお守りに届きそう。

   城戸、まだ腕を伸ばす。

松木「が、がんばってくださいっ」

   松木、必死で踏ん張って城戸を支える。

   突然、地面についていた城戸の腕が滑ってバランスが崩れる。

城戸「え、うわ」

松木「わぁぁっ」

   城戸と松木、勢いあまって頭から滝つぼに落ちる。

   他の観光客が驚いて見ている。

   城戸と松木、水面に上がってくる。

松木「うへぇ…(城戸へ)す、すみません大丈夫ですか!」

   城戸、ニヤリと笑い片手を松木に差し出す。

   手のひらにはお守りが握られている。

松木「あ、僕の」

城戸「ゲットだぜ」

   城戸、得意げに松木に手渡す。

   受け取った松木、嬉しそうに城戸を見る。

 

〇もとの児童公園

   松木、開いた折り畳み傘を城戸に渡す。

松木「びっしょびしょだったし」

城戸「お前のせいだろが」

松木「そうだ、せっかく雨降ってるしさ、イイトコ行かない?」

城戸「イイトコ?」

松木「そう。雨の、今ならではのとこ」

   松木、城戸の腕を引く。

松木「ほら、行こう」

   城戸、困惑しながらついていく。

 

〇ハルニレテラス

   色とりどりの傘が空に飾られている。

   ウッドデッキに反射するカラフルな傘。

   浮かび上がる森の生き物を象った模様。

   城戸と松木、並んでその傘を眺めている。

松木「どう」

城戸「こんだけ傘が並ぶと壮観だな」

松木「でしょ。結構イイもんじゃない?」

城戸「ああ。思ったよりずっと」

松木「前から一緒に行きたかったのに、城戸が嫌がるから」

城戸「こんなザ・デートスポットなトコ行けるかよ恥ずかしい」

松木「別に気にしなくていいと思うけどなぁ僕は」

   松木、先に立って歩き出す。

城戸「どこ行くんだよ」

松木「濡れたままじゃ風邪ひくよ」

   城戸、そのまま歩いていく松木に慌ててついていく。

 

〇同・TEAM7前

   新しい服を着た城戸と、紙袋を持った松木が出てくる。

城戸「サンキュな、松木。今度ちゃんと返す」

松木「いらないよ。こういうのはプレゼントするもんでしょ」

城戸「いやでもなんでもない日にこういうのは」

松木「じゃあ、なんでもなくない日にしよう」

城戸「え?」

松木「こっち」

   松木、笑顔で前方を指差して歩いていく。

   城戸、首を傾げつつ付いていく。

 

〇軽井沢高原教会・教会前

   松木と城戸、教会の前で立ち止まる。

松木「雨だからか、他の人いないね」

城戸「教会なんか何しに来たんだ?」

   松木、教会の扉の前に立って城戸を振り返る。

松木「教会に来たらすることって一つじゃない?」

城戸「は?」

   松木、微笑んで扉を開く。

 

〇同・教会内

   松木、祭壇の前に立つと城戸に向かって手を差し出す。

松木「城戸、神様に誓おう。永遠の愛を」

城戸「はぁ?何恥ずかしいこと言ってんだ!」

   城戸、真っ赤になって怒鳴る。

松木「いいじゃんいいじゃん、今僕たちしかいないんだしさ」

城戸「バカじゃねぇの、誓ったってしょうがないだろ。どうせ、いつか」

   城戸の言葉が詰まる。俯く城戸。

   松木、静かに城戸を見ている。

城戸「別々に結婚しなきゃなんねえのに」

   松木、城戸を見ている。

   城戸、俯いている。

   城戸の足元に水滴が落ちる。   

 

 

※テーマ「軽井沢」難しかったので、ちょっと腐女子だった頃を思い出し

 冒険してみました(笑)