おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「時計」もう一度笑って

    人 物

赤崎博也(22)大学生

桃山詩織(17)高校生

黄川田はじめ(22)バイト仲間

駅員

 

〇遊歩道(朝)

   赤崎博也(22)が必死の形相で走ってくる。

   歩いている人の間を縫って走り抜けていく。

 

〇横断歩道(朝)

   歩行者信号は赤。

   車が多く走っている。

   その場で駆け足しつつ信号を待つ赤崎。

   腕時計は午前7時42分。

赤崎「やべぇ…後3分」

   車用信号が赤に変わる。

   赤崎、歩行者信号を見つめる。

   青に変わった瞬間、他の人をすり抜けて走り出す。

 

〇H駅・全景(朝)

   あまり大きくない郊外の駅。

   通勤・通学客が駅へ入っていく。

   赤崎が走って駅舎へ向かう。

   電車が入ってくるのが見える。

赤崎「やべぇっ」

   必死で走る赤崎。

 

〇同・ホーム(朝)

   通勤・通学客がホームに並んでいる。

   制服姿の桃山詩織(17)が立っている。

   スマホを取り出して待ち受け画面を見る。

   午前7時45分。

   線路を見ると電車が入ってくるのが見える。

   電車が入線し、順に客が乗り込んでいく。

   最後尾にいた詩織が乗り込む。

 

〇電車内(朝)

   詩織が乗り込む。

赤崎の声「ま…待ってくれっ」

   詩織、驚いて振り返る。

   赤崎が飛び乗ってくる。

   その後ろでドアが閉まり電車が動き出す。

   赤崎、荒い息。

   詩織、じっと赤崎を見ている。

   赤崎、大きく息を吐きながらその場に座り込む。

赤崎「あー、間に合ったあ」

   顔を上げる赤崎、こちらを見ている詩織と目が合う。

   赤崎、決まりが悪そうに座り直して会釈する。

赤崎「あ…ども…」

詩織「お…お疲れ様です」

   詩織、会釈を返すと、その場から離れていく。

   赤崎、その様子を目で追う。

   詩織、同じ制服の女生徒を見つけ談笑を始める。

   赤崎、しばらく見つめている。

 

〇カフェ・全景(夕)

赤崎の声「お先に失礼しまーす」

 

〇同・控室(夕)

   制服のネクタイを緩めながら入ってくる赤崎。

   私服の黄川田はじめ(22)が携帯ゲームで遊んでいる。

黄川田「おーお疲れ」

   赤崎、ロッカーに向かい私服へと着替え始める。

赤崎「あれまだ残ってたの」

黄川田「家に帰ってもやることないからな。な、カラオケでも行かね?俺最近ストレス

 溜まってんだよ」

赤崎「知るかよ。俺はこれから次のバイトあるの」

黄川田「勤労学生は大変だねぇ」

赤崎「おぉよ、貧乏暇なしって奴」

黄川田「次のは何時から?」

赤崎「7時から。高岡で」

黄川田「遠くね?間に合う?」

   赤崎、腕時計を見る。

赤崎「大丈夫だろ、まだ1時間あるぜ」

   黄川田、壁の時計を見て

黄川田「え。40分くらいしかないけど」

赤崎「え!?」

   赤崎、驚いて壁の時計を見る。

   腕時計を見る。

   動いていない。

赤崎「マジか!」

   赤崎、急いで制服をロッカーに押し込んで鞄を取ると控室を飛び出していく。

   黄川田、手をヒラヒラと振る。

黄川田「達者でな」

 

〇電車内(夕)

   詩織、入口付近に立ってスマホをいじっている。

   電車が駅に入り停車する。扉が開く。

駅員の声「戸出ー、戸出ー」

   客は入ってこない。

   詩織、スマホをいじっている。

   発車のベルが鳴り始める。

駅員の声「えーまもなく発車いたします…」

   赤崎が走って乗り込んでくる。

   詩織、驚いて顔を上げる。

   ドアが閉まり電車が動き出す。

   赤崎、肩で息をしながらその場に座り込む。

   ジッと見つめている詩織。

赤崎「よっしゃぁ、間に合ったぞちくしょー」

   赤崎、顔を上げて叫ぶ。

   赤崎、詩織に気付いて会釈し、慌てて座り直す。

   ふと気付いて詩織の顔をジッと見る。

赤崎「あ…君、朝の?」

詩織「あ、は、はい」

赤崎「うわー…恥ずっ」

   頭を抱える赤崎。

詩織「忙しいんですね」

赤崎「忙しいっていうか…うん、まぁそれもそうなんだけど…うわぁ」

   電車が駅に停まる。

駅員の声「高岡ー、高岡ー」

   赤崎、ヨロヨロと立ち上がってドアに向かう。

   扉が開く。

赤崎「あの、今日のことは忘れてもらえる?」

   詩織、一瞬止まって吹き出す。

詩織「はい、お疲れ様です」

   赤崎、手を振って降りていく。

   詩織、手を振り返す。

   ドアが閉まる。

   詩織の顔から笑顔が消える。

   スマホを見つめつつ、壁に力なく寄りかかる。

 

〇H駅・全景(朝)

   通勤・通学客の中に赤崎の姿。

   落ち着いて歩いている。

   腕時計を見る。

   午前7時35分。秒針が動いている。

   赤崎、ニヤリと笑って前を見る。

   スキップ気味に進む。

   周囲の人が訝し気に見ている。

 

〇同・ホーム(朝)

   最後尾に詩織が並んでいる。

   暗い表情。

   ホームに入ってきた赤崎、詩織を見つけると気付かないふりをしながら隣の列に

   並ぶ。

   詩織、ポケットからスマホを取り出して画面を見るとすぐに戻す。ふと、横の列

   に視線をやり赤崎に気付く。

詩織「あ、昨日の」

赤崎「おはよう」

詩織「おはようございます。今日は余裕ですね」

赤崎「まぁね…って、忘れてって言ったじゃん」

   詩織と赤崎、笑いあう。

   電車が入ってくる。

   雑談している赤崎と詩織の列の前に停車、ドアが開く。

 

〇電車内(朝)

   赤崎と詩織が乗り込み、背中でドアが閉まり電車が動き出す。

   詩織、赤崎に会釈をすると車内にいる同じ制服の女子の集団の元へと向かう。

   赤崎、それを見送ってから窓の外を見つめる。

   集団と合流した詩織、赤崎を振り返る。

 

〇H駅・全景(朝)

   雨が降っている。

   傘を差して赤崎が歩いている。

   腕時計を見る。

   午前7時35分。

   赤崎、満足げな表情。

   詩織の笑顔が浮かぶ。

   鼻歌気味に歩く赤崎。

   赤崎の傘の周りが空く。

 

〇同・ホーム(朝)

   通勤・通学客が並んでいる。

   赤崎が入ってきて辺りを見回すが詩織はいない。

   赤崎、小さくため息をつく。

赤崎「…ちぇ」

   赤崎、列の最後尾につくとスマホを取り出していじり始める。

アナウンス「間もなく、1番ホームに高岡行の電車が参ります。危ないので黄色の線

 の…」

   顔を上げる赤崎。

   詩織が列から離れて、黄色い線の外側に立っている姿が見える。

赤崎「あれ、あの子…」

   詩織はうつむき、表情は沈んでいる。

   列に並んでいる人たちは無関心の様子。

   赤崎、列を離れ詩織の元へと向かう。

   電車が入ってくる。

   詩織が顔を上げる。

   ゆっくりと線路に向かって歩き出す詩織。

   赤崎、驚いて駆け出す。

   電車が速度を落とさないまま入ってくる。

   詩織の足がホームの縁を超える。

   赤崎、必死で手を伸ばす。

   電車が入ってくる。

   詩織の体が線路へ落ちていく。

   電車の急ブレーキ音が響く。

   赤崎の前を電車が進んでいく。

   赤崎、茫然と見つめている。

      

 

※時計の扱い、ベタにならないようにと意識しすぎた結果、変な方向に行ってしまいちょっと反省です。

次回はもうちょっと頑張っていこう!