おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「すすき」尾花は見ている

    人 物

 

中林俊(17)高校生

梓川みのり(17)中林のクラスメート

清春(17)中林のクラスメート

田中誠(17)中林のクラスメート

山本えりこ(17)中林のクラスメート

男性教師(45)

 

〇高校・全景(夕)

   グラウンドで野球部が活動している。

 

〇同・2年1組前

   「2年1組」の札がかかっている教室。

 

〇同・教室内

   梓川みのり(17)、所清春(17)、田中誠(17)、山本えりこ(17)が集まって騒いでい

   る。

   中林俊(17)は隅の席で日報を書き込んでいる。

所「で、『それって誰の事だよ』って聞いたんだ。そしたら…」

みのり「うんうん」

所「(大声で)お前だーっ!」

   みのり、えりこ、悲鳴。

   中林、チラリと振り返ってみのりを見る。

みのり「ちょっともうやめてよ~!」

えりこ「あ、見てトリハダ」

田中「お前らベタな話で怖がってんじゃねぇよ」

所「じゃあもっと怖いの話してみろよ」

えりこ「えーもっと怖いの?」

みのり「怖い、でも気になっちゃう」

田中「いいぜ。これは兄貴から聞いたんだけど」

   チャイムが鳴る。

   気にせず話し込んでいるみのりたち。

   突然男性教師がドアを開ける。

男性教師「お前らもう帰れ~」

所「はーい」

田中「タイムアップだな」

所「帰るかぁ」

えりこ「(田中に)ねぇあんな話してたら怖くなっちゃった。送ってよ」

田中「しょうがねぇな」

みのり「あ、ずるーい」

   中林、ピクリと反応して振り返る。

所「でもお前反対方向じゃん」

みのり「そうだけどさぁ」

   中林、思い切って立ち上がる。

   驚いて振り返るみのりたち。

   中林、真っ赤な顔で俯いている。

中林「あ…あの…っ」   

   みのり、じっと中林を見ている。

 

〇川べりの道(夕)

   かなり薄暗くなってきている。

   ジョギングしている人や犬の散歩をしている人がチラホラいる。

   金色に輝くすすきの原っぱが脇に広がっていて風に揺れている。

   中林とみのりが並んで歩いてくる。

みのり「なんか悪いね、送ってもらうなんて」

中林「いや…だ、だって女の子一人で、暗い道歩くなんて、危ないだろ」

みのり「ホントは歩き慣れてるから全然平気なんだけどね」

中林「だ、ダメだよ近頃は、け、結構物騒なんだから…」

   みのり、中林を見て笑う。

中林「あ、ご…ごめん…」

みのり「あーごめんね違うの。別にあなたを笑ったんじゃなくて。優しいなって思っ

 て。ただのクラスメイトのためにそこまで考えられるなんて偉いよ」

中林「(小声で)ただのクラスメイトじゃないから」

みのり「え?何か言った?」

中林「な、なんでもない」

みのり「そう?」

   みのり、前を向いてふと足を止める。

   中林の腕を引いて引き止める。

みのり「ね、ねぇちょっと」

中林「なに?」

みのり「あそこ…何かいる」

中林「え、え?」

   みのり、前方を指差す。

   薄暗い道の奥、ゆらゆらと動く影がある。

   中林、目をこすって見る。

みのり「え、まさか幽霊…」

   みのり、中林の袖を強くつかむ。

中林「だ、だだ大丈夫だよ」

みのり「やだ、私の家あっちなのに!」

中林「だ、大丈夫だよ、梓川さん!ぼ、僕が護るから!」

   中林、みのりを背中に隠しながらゆっくりと道を進む。

中林「ぼ、僕から離れないでね」

みのり「う、うん」

   緊張した表情で進む中林とみのり。

   途中で、驚いた表情で足を止める中林。

みのり「え、中林くん?」

中林「…あれ」

   中林、前方を指差す。

   みのり、おそるおそる中林の背中から顔を出す。

   すすきが風に吹かれて揺れている。

みのり「もしかしてさっきの影って…これ?」

中林「そうみたい、だね」

   中林とみのり、顔を見合わせて吹き出す。

みのり「やだぁ、ちょっと信じらんない!」

中林「け、結構マジでビビったよね…」

みのり「ホントだよ!あー良かった安心したぁ」

   みのり、中林から離れて向かい合う。

みのり「ホントごめんね?お騒がせしちゃって」

中林「う、ううん。僕も幽霊かと、お、思っちゃったから」

みのり「もー、学校であんな話してたから…。ちょっとカッコ悪いから、今のことは誰

 にも秘密ね?」

中林「う、うん!」

みのり「それじゃ、私の家もうすぐそこだから。ここまででいいよ。ありがとうね」

中林「うん」

   みのり、踵を返し歩き始める。

   中林を振り返り、手を振る。

みのり「また明日ね!」

   中林、大きく手を振る。

中林「う、うん!また明日…」

   中林、みのりの背中をジッと見つめ手を振り続ける。

   すすきがユラユラと揺れている。

 

〇川べりの道

   青いすすきが風に揺れている。

   夏服のみのりと中林が歩いている。

   中林の足が止まる。

中林「え、転校?」

   前を歩いていたみのりが振り返る。

みのり「うん。一応今学期中はこっちにいる予定なんだけど」

中林「な、なんで…こ、こんな中途半端な時に」

みのり「知らないよ、親の仕事の都合らしいもん。私だけ残していけないからって」

中林「そ、そうなんだ…」

   うつむく中林。

   みのり、じっと中林を見ている。

みのり「ねぇ、何か私に言いたいこないの」

中林「え」

   中林、顔を上げる。

   みのりがジッと見つめている。

   中林、おどおどと目を逸らしてまたうつむく。

中林「ぼ、僕はその…その…」

   みのり、溜息。

みのり「…わかったよ。私がうぬぼれすぎてたのかな。せっかく一番最初に教えたのに

 さ」

   中林、うつむいたままみのりを見る。

   みのり、悲しそうな表情。

みのり「あれから何回も一緒に帰ったのに、全然君の考えてることわかんなかった」

中林「あ、えと、あの、梓川さん…」

みのり「(遮って)それじゃあね、中林くん」

   みのり、中林から目を逸らして走って帰っていく。

   中林、一瞬手を伸ばしかけてためらい、そのままみのりを見送る。

 

〇高校・2年1組前(夕)

 

〇同・教室内(夕)

   中林が帰り支度をしている。

   所が教室に入ってきて中林に気付いて近付いてくる。

所「中林。お前先週なんで来なかったんだ?」

中林「え?こ、来なかったって…ど、どこに?」

所「梓川の見送りだよ。お前ら最近仲良かったんだろ?てっきり来てるもんだと思って

 たらいないんだもんな。何やってたんだよ」

   中林、驚いて立ち上がる。

中林「み、見送り!?見送りって…あ、梓川さん、もう、ひ、引っ越しちゃったの…!?」

所「え、お前知らなかったの?なんで」

   中林、鞄を掴んで教室から急いで出る。

   所、不思議そうに中林を見送る。

 

〇川べりの道(夕)

   金色のすすきが揺れる原っぱを中林が全速力で走っていく。 

 

〇みのりの家(夕)

   表札やカーテンが外されていて、部屋の中に何もないのが見える。  

 

〇同・正面(夕)

   中林、家の様子に茫然と立ち尽くす。

   肩を落としてノロノロと踵を返す。

 

〇川べりの道(夕)

   ノロノロと歩いてくる中林。

   ふと顔を上げ、驚く。

   遠くにゆらゆらと動く影がある。

中林「あ、梓川さん!?」

   走って近づく中林。

   笑顔で近づいて、ハッとして足を止める。

   すすきがゆらゆらと揺れている。

   中林、泣きそう。

   みのり、中林の陰に隠れてすすきに怯えている。

中林「…僕は、なんてバカだったんだ…びびって…大事なもん失っちゃって」

   中林、唇を噛んで涙を堪える。

 

 

※すすきと言えば「幽霊の正体見たり枯れ尾花」って奴よね、と。

 中林がみのりを好きだというのがわかりにくい、と言われてしまいました。

 台詞だけじゃ足りないんですね…反省。