おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「記者」マスカレイド

    人 物
工藤里緒菜(23)芸能記者
水森ケイト(25)「SMASH」のメンバー
土田シオン(23)「SMASH」のメンバー
美薗麗華(33)女優
楠田拓郎(35)里緒菜の先輩
玉森英子(35)「SMASH」のマネージャー

 

 

〇芸能事務所「青空興業」前
   多数の記者、カメラマンが集まっている。
   リポーターたちがそれぞれのカメラに向
   かってしゃべっている。
   人だかりの中、小柄な工藤里緒菜(23)が
   レコーダー片手に入口を凝視している。
リポーター「えー、こちら青空興業前です。ご
 覧の通り、多くの報道陣が詰めかけています
 が事務所の中は静まり返っています」
   里緒菜、隙間を縫って集団の一番前まで
   出ていく。
   「SMASH」のステッカーが貼られたスマホ
   のカメラを起動して胸ポケットに入れる。
里緒菜「こい…こい…」
   事務所からスーツ姿の男性3人と疲れた
   表情の美薗麗華(33)がうつむいて出てく
   る。
リポーター「あっ来ました!美薗麗華さんが事
 務所から出てきました!随分暗い表情です!
 反省なさっているということでしょうか!」
   里緒菜、人だかりに押されながら前に出
   る。
里緒菜「美薗さん!お話お聞かせください!噂
 は本当なんですか!薬物疑惑って本当なんで
 すか!」
   麗華、入口で立ち止まり、深々と頭を下
   げると去っていく。
報道陣「美薗さん!」
報道陣「麗華さーん!逃げるんですか!」
   警備員が報道陣を押さえる。
   里緒菜、警備員の隙間を抜ける。
里緒菜「美薗さーん!『愛の保存食』大好きで
 した!応援してまーす!」
   麗華、振り返って会釈する。
   途端フラッシュが多数炊かれる。
   麗華、男性に促されて去っていく。

〇雑誌「SNOW」編集部
   里緒菜、パソコンを見ている。
   画面には麗華を取材した時の映像。
   頭を下げる麗華、振り返って会釈する麗
   華がちゃんと映っている。
   里緒菜、満足げに眺めている。
   楠田拓郎(35)が後ろを通りながらパソコ
   ンの画面を覗き込む。
楠田「美薗麗華の取材行ってきたのか。何か話
 してたか?」
里緒菜「美薗さん、美人ですよねぇ…こーんな
 に疲れていても華があるっていうか。派手派
 手しい芸名に全然負けてませんよ」
楠田「こら。ただのファンやってんじゃない。
 ちゃんと情報手に入れて来いよ」
里緒菜「わかってますよぉ」
楠田「お、この表情はいいな。うまく撮れてる」
   楠田、会釈する麗華を指す。
里緒菜「いいでしょ」
楠田「これに見合うだけの記事も書けよ」
里緒菜「はいはい。ちゃんと取材してきますよ。
 任せてください」
楠田「やる気だけは一丁前だな。若いのに珍し
 い奴だ。普通来たがらんぞ、この部署」
里緒菜「芸能人に会うには手っ取り早いじゃな
 いですか」
楠田「良くも悪くも、な」
   里緒菜の携帯アラームが鳴る。
里緒菜「おっと…もう行かなきゃ」
   里緒菜、パソコンを閉じて立ち上がる。
楠田「取材か」
里緒菜「そうでーす」
   里緒菜、鞄を抱え鼻歌を歌いながら出て
   いく。
   「SMASH」のキーホルダーが揺れる。
楠田「なんだ?」

〇東京ドーム・全景
   あちこちにアイドルグループ「SMASH
   のポスターが貼られている。
   ドームツアー開催決定!の文字。
   あちこちにウチワやサイリウムを持った
   女性ファンが立っている。

〇同・廊下
   スタッフ入館証を首から下げ、片手にス
   マホを持った里緒菜が鼻歌を歌いながら
   歩いている。
   片耳にはイヤホン。
   スマホで「SMASH」の楽曲を再生してい   
   る。
   コンサートスタッフとすれ違う。
里緒菜「お疲れ様でーす!」

〇同・控室A
   里緒菜、入ってくる。
   荷物を机に置いてボイスレコーダー、ノ
   ート、筆記具を取り出す。
   椅子に座り入館証をまじまじと見つめる。
里緒菜「SMASHのスタッフ入館証…まさかこん
 な日が来るなんてぇ」
   入館証にキスしようとする里緒菜。
   ノック音がして慌てて直る。
里緒菜「は、はい!」
   険しい表情で玉森英子(35)が入ってくる。
英子「失礼します。あなたがSNOWさん?」
里緒菜「は、はい。記者の工藤里緒菜です」
   里緒菜、慌てて駆け寄り名刺を差し出す。
英子「挨拶は結構です。ごめんなさいね、ちょ
 っとリハで揉めてるから、もう少しこちらで
 待機していただけるかしら」
里緒菜「あ、はい。構いませんが」
英子「それでは。取材可能になりましたら呼び
 ますんで」
   英子、会釈して出ていく。
   里緒菜、名刺を差し出した姿勢のまま見
   送る。
里緒菜「…超慌ただしー…これが本番前ってこ
 とか」
   里緒菜、椅子に戻ろうとして入口を見る。
里緒菜「今、リハ中ってことよね」
   カメラを鞄から出して首にかけ、ドアを
   そっと開ける。

〇同・廊下
   スタッフが慌ただしく走りまわっている。
   英子が一人のスタッフと話している。
   話し終えて足早に歩き出す。
   ドアの陰から覗いていた里緒菜、英子の
   後を追う。

〇同・ホール
   「SMASH」の楽曲が流れる中、会場の設
   営準備が進んでいる。
   舞台上、「SMASH」のメンバーがダンスの
   練習をしている。
   英子、スタッフに指示を出している。
   水森ケイト(25)がセンターに立ち踊って
   いる。

〇同・舞台裏
   里緒菜、そっと入ってくる。
   音に気付き舞台袖から舞台を見る。
里緒菜「わぁ」
   カメラを構え写真を撮る。
里緒菜「ヤバいわ、ケイトくん超素敵…!」

〇同・ホール
   ダンスを続けている「SMASH
   水森、急にダンスを止める。
   勢いで土田シオン(23)がぶつかる。
土田「え、ケイト?」
   水森、舞台袖に向かって歩く。
   英子、舞台を見る。
   水森、舞台袖のカーテンをまくる。
   カメラを構えていた里緒菜、驚いて水森
   を見る。
里緒菜「あっ」
水森「なんだアンタ」
英子「え、あなたなんでここに」
里緒菜「す、すみません!あの、私つい…すみ
 ません、戻ります!」
   里緒菜、戻ろうとする。
   水森、里緒菜のカメラを掴む。
   里緒菜、振り返る。
   水森、カメラを里緒菜から取り上げると
   床に叩きつける。
里緒菜「ああっ!」
英子「ちょっと、ケイト!?」
水森「あんた、何者?追っかけ?ストーカー?」
里緒菜「違います!私はSNOWという雑誌の
 記者です!ほら」
   里緒菜、入館証を見せる。
水森「ふーん。そういやライブ前に取材がある
 って言ってたっけ」
里緒菜「そうです。その取材で来たんです」
水森「マネージャー取材キャンセルでよろしく」
里緒菜「は!?どうしてですか!」
水森「盗撮女の取材なんか受けたくないからだ
 よ常識だろう」
里緒菜「勝手にここまで来たのは確かに失礼な
 ことをしましたけれど、それと取材の件は別
 物です!そうでないと困ります!」
水森「別にあんたが困っても俺は困らないし」
   水森、舞台に戻っていく。
   英子、慌てて水森に駆け寄る。
英子「ちょ、ちょっと待ってケイト」
水森「俺たちリハの続きあるんで、後はよろし
 く。マネージャー」
   英子、里緒菜に近づく。
英子「とりあえず部屋に戻ってくれる?」
里緒菜「すみません、私が悪いことはわかって
 いますが取材は…」
英子「なるべく善処するから。とりあえず戻っ
 てください」
   英子、里緒菜の背中を押して追いやる。
英子「(舞台に)さあ、リハを続けましょう」
   里緒菜、出ていく。

〇同・控室A
   里緒菜、入ってきてすぐ座り込む。
里緒菜「何やってるんだろう私」
   壊れたカメラを握り締める。

 

★職業シリーズが始まりました。

 初っ端から記者とか、なかなか慣れないお題で苦労しました…!