おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「ハンカチ」ボクはヒーロー

   人物

 高木澪(5)

 高木澪(22)

 剣道優(8)

 剣道優(25)澪の職場の先輩

 広瀬佑美(22)澪の友

 葛城史郎(50)澪と剣道の上司

 

〇児童公園(夕)

   遊具がいくつかあるだけの小さな児童

   公園。砂場の傍で高木澪(5)が泣いてい

   る。

   ランドセルを背負った剣道優(8)が公園の前を通りがかり、澪が泣いている

   のを見つける。

   剣道、澪にゆっくりと歩み寄る。

剣道「どうしたの、どこか痛いの?」

   澪、泣きながら首を横に振る。

   澪の足元には腕が取れてしまった人形が転がっている。

   剣道、人形を拾い上げる。

剣道「壊れちゃったの?」

   澪、うなずいて泣き続ける。

   剣道、腕をはめこもうとするがなかなか上手くいかない。

   頭を掻きむしりながらなんとか人形を直そうと努力するができない。

剣道「難しいなぁ」

   澪、また一層泣き出してしまう。

剣道「な、泣くなよぉ」

   剣道、焦ってポケットを探る。

   クシャクシャになった、ヒーローの絵柄のハンカチが出てくる。

   剣道、澪に差し出す。

   澪、キョトンとハンカチと剣道を見る。

剣道「ほら。もう泣かないで」

   澪、ぎこちなくうなずいてハンカチを受け取る。

   ハンカチはクシャクシャ。

   澪にほんの少し笑顔が浮かぶ。

剣道「待ってろ、なんとか直してやるからな」

澪「うん」

   剣道、澪を促してベンチに座り、再度人形の腕をはめようと苦戦する。

   澪、ハンカチを握り締めたままじっとその様子を覗き込む。

 

〇アパート・全景

   単身仕様の、コンクリート造りの小さなアパート。

 

〇澪の部屋

   まだ段ボールに入ったままの荷物も目立つ、シンプルな部屋。

   玄関のドアが開いて高木澪(22)が入ってくる。続いて広瀬佑美(22)が入って

   くる。

澪「さ、入って入って。まだ片付いてないんだけど」

佑美「おじゃましまーす…わぁ、思ったより広いんだ。いいね」

   佑美、キョロキョロ見回している。

   澪、キッチンで電気ケトルでお湯を沸かし始める。

澪「でしょ。紅茶でいい?」

佑美「うん。あ、ミルクあったらちょうだい。駅も近いしコンビニも近いし、いいとこ

 見つけたね」

澪「職場も近いの。初めての一人暮らしには文句なしの物件だと思わない?」

佑美「いいなぁ。私なんか駅遠くて…」

   佑美、壁のコルクボードに古いヒーローもののハンカチが飾ってあるのを見

   つけて覗き込む。

佑美「これってちっちゃい頃やってた奴だよね?なつかしー」

   澪、キッチンからカップを二つ持って戻ってくる。

澪「えー何?ああ、それね」

   澪、テーブルにカップを置いて座る。

   佑美もテーブルにつき、カップを受け取る。

佑美「なになに?澪好きだったの?」

澪「違うの。あれはある男の子から預かってるっていうかもらったっていうか…」

佑美「どういうこと?ちょっと教えてよ」

澪「もーしょうがないなぁ」

   澪、紅茶を口に運びつつ嬉しそうに語り始める。

   テーブルの上には空になったカップと、お菓子が乗っていたらしい空のお皿。

佑美「なるほどねぇ。ステキな子じゃん」

澪「次に会えたら返そうと思ってたんだけど、なかなか会えないまま今に至るって感

 じ」

佑美「大事に飾っちゃって…初恋だったってわけだ」

澪「そうかも」

   澪、照れ臭そうに笑ってみせる。

佑美「初恋もいいけど、将来も見なきゃだめよ?いい人いないの?」

澪「まだ仕事にも慣れてないもん、そんな余 裕ないよ。そういう佑美はどうなの?」

佑美「あーウチはダメダメ、おっさんばっかり!出会いなんて夢よ、夢。入る会社間違

 えたわ」

澪「ご愁傷様」

佑美「この間なんかね…」

   佑美の愚痴が続く。

   澪、聞きながらお茶を淹れる。

   おしゃべりに花が咲く澪と佑美。

 

〇株式会社丸山商事

   立派な9階建ての社屋。「株式会社丸山商事」の看板。

   多くの社員が出入りしている。

 

〇同・第三営業部オフィス

   扉に「第三営業部」と書かれているオフィス。

   忙しく電話を受ける社員。パソコンに打ち込んでいる社員。ミーティングし

   ている社員たち。

   澪も真剣な表情でパソコンと睨みあい打ち込んでいる。

   オフィスの奥、剣道優(25)が上司の葛城史郎(50)と話している。

   途中、澪を振り返る。

剣道「おーい高木!終わったか」

   澪、慌てて立ち上がる。

澪「す、すみませんまだです」

剣道「はあ?あとどれだけかかる」

澪「あと10分くらいで…」

剣道「5分で持ってこい!」

澪「えぇ……わかりました」

   澪、渋々席に座り直し仕事に戻る。   

   剣道、その姿を確認し葛城に向き直る。      

剣道「すみません、出来上がり次第すぐに提出します」

葛城「そこまで急いでないから、焦らなくていいよ」

   葛城、笑って窓の外に目をやる。

   抜けるような青空。

葛城「いい天気だねぇ、随分暖かい」

剣道「そうですね」

   剣道、額に汗が浮かんでいる。

葛城「剣道くん、暑そうだね?上着脱げばいいよ」

剣道「あ、すみません…」

   剣道、会釈して上着を脱ぐ。ポケットからクシャクシャのハンカチを取り出

   して汗を拭う。

   葛城、苦笑する。

葛城「なんだい、そのハンカチ…クシャクシャじゃないか」

剣道「あはは、ちょっとアイロンかける時間が無くて」

葛城「営業たる者、清潔感は大事だよ?アイロンが難しければタオル生地にするとか、

 工夫を考えた方がいいね」

剣道「助言ありがとうございます。昔からハンカチなもので、つい」

葛城「まぁ偉そうに言う私も、家内のおかげで保てるだけなんだがね」

   微笑む葛城。

   澪が書類を持って駆け寄ってくる。

澪「持ってきました!」

剣道「ありがとう」

   剣道、ハンカチをズボンのポケットに押し込んで書類を受け取り、目を通す。

剣道「よし。お前は仕事に戻れ。(葛城に)一部コピーしてきます」

   剣道、会釈してコピー機に向かう。

   ポケットからハンカチが落ちるが剣道は気付かない。

   澪、ハンカチを拾い上げる。

澪「先輩、ハンカチ…」

   気付かない剣道。

   澪、ハンカチを見る。かなりクシャクシャ。

   ふと幼い頃に差し出されたクシャクシャのハンカチを思い出す。

葛城「ひどいハンカチだろう」

   葛城、澪に話しかける。我に返って振り返る澪。

葛城「他のことはしっかりしてるんだがねぇ。誰か、アイロンかけてくれる彼女でもい

 ればいいと思わないか?」

澪「は、はぁ…」

   剣道、眉間にしわを寄せ戻ってくる。

剣道「葛城部長、それはセクハラですよ」

葛城「あぁすまんすまん」

   剣道、書類を葛城に渡す。

澪「先輩、どうぞ」

   澪、剣道にハンカチを渡す。

剣道「あ、すまんありがとう」

   受け取ったハンカチをポケットに押し込む剣道。

澪「駄目ですよ、ちゃんと畳んで入れないと」

剣道「わかったよ。仕事に戻れ、お前次のアポの書類作りもあるだろ」

澪「そうでした!」

   澪、席に戻っていく。

剣道「では、いってきます」

   剣道、葛城に礼をすると資料と鞄を持ちオフィスを出ていく。

   パソコンに向かっている澪の元へ社員が心配そうに寄ってくる。

社員「高木さん…お客様から電話。怒ってるみたいで」

 

 

※本科初課題でした。

 20枚で完結させなくていいので尻切れですが。

 もっと書きたいシーンあったけど入らなかったですわ…悔しい。

 ここからより技術をあげていくぞー!