おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「ヒモ」道は二つ

    人 物

鈴木美奈(29) OL

小野涼輔(25) ヒモ

吉野隆志(22) 美奈の後輩

部長

女性1

女性2

 

 

四葉商事・営業部

   壁に大きく一か月の成績グラフが貼られ

   ている。

   鈴木美奈の成績がトップで華が飾られて

   いる。

部長「えー、今月のトップは鈴木くんだった。

 彼女はクライアントからの評判も非常にいい。

 君たちも彼女のやり方から学んで互いに成長

 していくように」

   拍手が起こる中、社員たちの前に鈴木美

   奈(29)と部長が立っている。

   美奈、照れ臭そう。

   吉野隆志(22)、満面の笑みで拍手してい

   る。

 

〇同・食堂

   美奈がコーヒーを飲んでいる。

   食堂前を通った吉野、美奈を見つけて入

   ろうとする。

   美奈に女性社員1、2が近付いたのを見

   て足を止める。

   美奈、顔を上げる。

美奈「なんですか、先輩方」

女性1「今月も随分いい成績上げてたわね」

美奈「わざわざ褒めに来てくれたんですか」

女性2「一体どんな技を使ったのかしら、やっ

 ぱり女の技?鈴木さん、美人でいらっしゃる

 から」

   後ろで聴いている吉野、ムッとする。

女性1「鈴木さんは男性を飼ってらっしゃるん

 ですって?男性の扱いもお手の物なんでしょ

 うね。とても真似できないわ」

   吉野、我慢できず近付こうとする。

美奈「言いたいことはそれだけですか」

   吉野、足を止める。

美奈「私は正々堂々と仕事してるだけですよ。

 女の技を使うなんてそんな卑怯なこと、考え

 たこともありません。あなたはやってるんで

 すか?」

女性2「なんですって」

美奈「確かに私は男性の扱いうまいかもしれま

 せんね。ほっといても男性の方から来てくだ

 さるから」

女性1「なにそれ、自慢!?」

美奈「悔しかったら、あなたも男性を飼ってみ

 てはどうですか。その甲斐性があればですけ

 ど」

   女性1、怒りで震える。

美奈「くだらない嫌み言いに来る暇があるなら

 成績を上げるよう努力してくださいね。あな

 た方みたいな人のせいで、なかなか女性の地

 位が上がらないんです」

   女性1、奇声をあげる。

女性2「お、落ち着いて!いきましょう、ね!」

   女性2、女性1を連れて食堂から出てい

   く。

   吉野、二人を見送ってから美奈を振り返

   る。

   美奈、うつむいて疲れた表情。

吉野「あの…鈴木さん」

   美奈、明るい表情を作って顔を上げる。

美奈「あ、吉野くん?どうしたの何かあった?」

吉野「……」

美奈「今の見ちゃったかな?よくあるんだ。気

 にしないで…って無理か、女性不信になっち

 ゃいそうだね」

   吉野、意を決して美奈の手を握る。

   美奈、驚いて吉野を見つめる。

美奈「どうしたの、吉野くん」

吉野「鈴木さん…あんな顔しないでください。

 僕、鈴木さんにはいつも堂々と笑っていてほ

 しいです」

美奈「吉野くん」

吉野「ぼ、僕が鈴木さんのこと護りますから!

 護らせてください!」

   吉野、握った美奈の手を強く握る。

   美奈、苦笑。

美奈「なんか告白みたいよ」

吉野「こ、告白してるんです!」

   美奈、目を丸くする。

美奈「…ありがとう」

   美奈、微笑む。

 

 〇街中

   若い女性がたくさん歩いている。

   小野涼輔(25)がぼんやりと道端に座って

   道行く人を見ている。

   カジュアルな服装だが目を引く容姿。

   遠くから小野をチラチラと見ている女性

   二人がいる。

   小野、女性たちに気付いて笑顔を見せる。

   女性たち、赤面して硬直する。

小野「お姉さんたち、お腹空かない?」

   小野、お腹をさすりながら優しく微笑む。

小野「僕、ステーキ食べたいんだぁ」

   女性たち、見入られたようにうなずく。

   小野、笑顔。

 

〇美奈のマンション(夜)

   小野が寝転がって携帯ゲームをやってい

   る。

   ドアが開いて美奈が帰ってくる。

   小野、笑顔で起き上がる。

小野「おかえり、美奈ちゃん!」

美奈「ただいま…涼ちゃん」

   美奈、作り笑顔を返しつつ部屋に入って

   くる。

小野「ねぇ今日のご飯何?お腹空いちゃったな」

美奈「ちょっと待っててね、今用意するから」

   美奈、エプロンを持ってキッチンへと向

   かう。

   小野、キッチンへ付いてくる。

 

〇同・キッチン(夜)

   美奈、コップに水を汲んで一気に飲み干

   す。

   小野、美奈を後ろから抱きしめる。

美奈「ちょっと、なに?急に」

小野「ん?何か疲れてるみたいだから、癒しを

 あげようかと思って」

美奈「もう、大丈夫だよ。ありがとう」

小野「そう?」

   美奈、小野の手をそっと外す。

美奈「お腹空いちゃってるだけ。さっさと作っ

 ちゃうから、向こうで待ってて?」

小野「うん」

   小野、美奈の額にキスをするとキッチン

   から出ていく。

   美奈の顔から作り笑顔が消える。

   ポケットからスマホを取り出す。

   吉野からのLINEが届いている。

吉野「今日のこと、急がないんで考えてくださ

 いね」

   キャラクターのスタンプも付いている。

   美奈、ふっと笑う。

 

〇同・ダイニング

   美奈が作った食事が並ぶ。

   美奈、小野が向かい合って食べている。

小野「あ、そうだ美奈ちゃん」

   小野、口いっぱいに食べ物を頬張りつつ

   手のひらを美奈に向ける。

美奈「え、もうお小遣いなくなったの」

小野「色々あんのよ、俺も」

美奈「もう…食べ終わったらね」

小野「うん」

   小野、幸せそうに食べている。

   美奈、小野を見つめる。

   テーブルの下でスマホをギュッと握る。

美奈「ねえ、涼ちゃん」

小野「うん?」

美奈「涼ちゃんさ、働くつもりは無いの?」

小野「何、急に」

美奈「ずっとこのままってわけにはいかないん

 じゃない?」

小野「どうして。もう何年もこれでうまくいっ

 てるよ?」

   小野、食べ終えてティッシュで口を拭う。

小野「美奈ちゃん、何かあった?」

美奈「別にないよ。ないけど…このままじゃ将

 来が不安っていうか」

   小野、立ち上がり美奈の隣で跪く。

   美奈、驚いて小野を見る。

小野「美奈ちゃん、俺と別れたいの」

美奈「涼ちゃん…」

小野「俺のこと、邪魔になっちゃった?」

美奈「そんなわけじゃ…」

   美奈のスマホが床に落ちる。

   小野が拾い上げ、吉野からのLINEを

   見る。

美奈「あっ」

小野「そっか、もっとイイ男見つかったのか」

   小野、はかなげに微笑んでスマホを美奈

   に返す。

小野「他にイイ人見つかっちゃったなら、仕方

 ないか。美奈ちゃんの邪魔にならないように、

 僕は消えるよ」

   小野、立ち上がり食卓に合掌する。

小野「ごちそうさま」

   小野、上着を取って玄関へと向かう。

   美奈、慌てて立ち上がる。

   スマホが落ちる。

美奈「待って…待って!」

   美奈、小野に抱き着く。

美奈「いや。涼ちゃんがいなくなるのは嫌。私

 の傍にいて」

   小野、美奈の手を撫でる。

小野「いていいの?美奈ちゃん」

美奈「いてほしいの」

   小野、微笑んで美奈を抱きしめる。

 

四葉商事・営業部(夜)

   真っ暗なオフィス。

   吉野が席に座っている。

   美奈からのLINEが届く。

   吉野、スマホを見るとふぅと息を吐きす

   ぐに画面を閉じる。

吉野「失敗かぁ」

   吉野、オフィスを出ていく。

   真っ暗なオフィスに扉が閉じる音が響く。

 

※お題を無視して(厳密には無視してないのだけど)書きたい内容を書いてしまった感じになっちゃいましたね…。

ヒモを主人公にするのが難しかったです。

どんなキャラクターでも書けなくてはいけないって、地味にハードル高い…