おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「結婚式」大安吉日

    人 物

西友紀(27)ウエディングプランナー

数原翔子(25)友紀が担当する新婦

数原真治(25)友紀が担当する新郎

久我博紀(30)友紀の婚約者

 

 

 

〇結婚式場「リング」・全景

   真っ白な壁の建物。

   奥にチャペルの鐘が見えている。

友紀の声「とうとう来月に迫りましたね!」

 

〇同・応接室

   黒のパンツスーツ姿の中西友紀(27)と、

   女性らしいワンピース姿の数原翔子(25)

   が机を挟んで向かい合って座っている。

   机の上には手作りのウェルカムボードや

   ウェルカムドールなど、飾りが山のよう

   に積んである。

   友紀、バインダーに挟んだ資料にメモを

   書き込んでいる。

翔子「あと一ケ月なんて全然実感ないです。今

 になって、ホントに私結婚するの?って思っ

 ちゃう」

友紀「皆さんそんなものみたいですよ。

 これで全部でよろしいですか?沢山あるので

 漏れがないように気を付けますね」

翔子「よろしくお願いします!作っているうち

 にどんどん楽しくなっちゃって…気が付いた

 らこれだけになっちゃいました」

友紀「それだけ楽しみだということですね!素

 敵です」

   友紀、バインダーを寄せると立ち上がり

   大きい紙袋に飾りを一つずつ片付けてい 

   く。

翔子「真治くん、式のこと考えてたら緊張しす

 ぎてお腹痛くなってきたって、午後から病院

 を早退しようとしたんですよ。ホント豆腐メ

 ンタルなんだから困っちゃう。

 ドクター呼んで胃薬処方してもらって、その

 まま働いてもらっちゃいましたけど。いまか

 らコレじゃあ本番がちょっと不安」

友紀「病院勤務で早退は難しいですよねぇ、す

 ぐに診察してもらえちゃって」

翔子「そうそう。仮病かどうかもすぐバレちゃ

 いますよ。真治くんには今から逃げるなって

 お説教しときました」

友紀「真治さんも、こんな頼もしい奥様がいら

 っしゃるんだから安心して構えてくださった

 らいいんですけどね」

翔子「ホントにそう思ってます?鬼嫁だとか思

 ってません?」

友紀「まさか」

   友紀、笑って紙袋に飾りを仕舞う。

   友紀の左手薬指に石の付いた指輪が光る。

   翔子、指輪に気付いて立ち上がる。

翔子「中西さん!その指輪!」

中西「えっ?ああ…これですか?すみません」

   友紀、指輪を外そうとする。

   翔子、友紀に駆け寄って左手を握る。

翔子「やだ、隠さないでくださいよ!これ、婚

 約指輪じゃないですか?そうですよね?だっ

 て結構石大きいし!」

   友紀、恥ずかしそうに笑う。

友紀「ええ…まぁ…」

翔子「前にお話してた彼氏さんですよね?キャ

 ーおめでとうございますー!」

友紀「ふふ、ありがとうございます」

翔子「いつプロポーズされたんですか?なんて

 言われたんです?挙式の予定は?」

友紀「ちょっと翔子さん…落ち着いてください」

翔子「あ、ごめんなさい。中西さんはずっと私

 たちの式のために力を貸してくれてた方だか

 ら、幸せなお話聞いたらなんかすごく興奮し

 ちゃって」

   翔子、椅子に戻る。

   友紀、微笑む。

友紀「私のことは、翔子さんご夫婦の挙式が無

 事に終わってから、ゆっくりお話しますね」

翔子「じゃあまだ一ケ月も先ですか?長いなぁ」

友紀「楽しみが増えたと思ってくだされば」

翔子「ふふ、そうですね。次は中西さんののろ

 け話をたくさん聞き出しちゃいますから」

友紀「わぁ怖いです」

   友紀と翔子、楽しそうに笑いあう。

 

〇友紀の家(夜)

   真っ暗な部屋に友紀が帰ってくる。

   部屋の電気を点けるとソファの上に鞄と

   携帯を放り投げる。

   棚の上、久我博紀(30)と二人で写った写

   真がたくさん飾られている。その中心に

   リングケース。

   友紀、指輪を外して棚の上のリングケー

   スに戻す。

友紀「ただいま、ヒロくん」

   友紀、鼻歌を歌いながらスーツのジャケ

   ットを脱ぎつつ洗面所へ歩いていく。 

   ソファの上、携帯が鳴りだす。

   友紀、慌てて戻ってくる。

友紀「はいはいはい…」

   携帯を取り、ソファに座る。

友紀「もしもし、ヒロくん?どしたの?」

久我の声「友紀…あのさ、お前に伝えたいこと

 があって…」

友紀「うん。なに?」

   友紀の表情が固くなる。

   携帯が手から滑り落ちる。

   ソファの下に転がる携帯。

久我の声「それで…友紀、聞いてる?もしも

 し?」

   友紀、ソファの上で動かない。

   壁にカレンダーが貼ってある。

   ある日に印が付いている。

   「数原様挙式当日」と「ヒロくんと3周

   年」の文字。

   ソファの下で携帯から久我の声が漏れ聞

   こえる。

久我の声「君には悪いと思ってる。だけど俺だ

 って生半可な気持ちで言ってるんじゃないん

 だ。だから…」

   久我の声を聞きながら、涙をこぼす友紀。

 

〇結婚式場「リング」・全景

   入口に翔子が作ったウェルカムボードが

   飾られている。

 

〇同・ロビー

   職員たちが受付の飾りつけをしている。

   友紀、バインダーを確認しながら指示し

   ている。

   翔子と数原真治(25)が入ってくる。

   翔子、指示している友紀の背中を見つけ

   笑顔で声をかける。

翔子「中西さん!」

   友紀、一瞬表情が強張る。

   一息吐いて笑顔を作り振り返る。

友紀「翔子さん、真治さん」

   翔子が手を振り、真治が会釈する。

   友紀、駆け寄って頭を下げる。

友紀「この度は真におめでとうございます」

真治「ありがとうございます。今日はお世話に

 なります」

翔子「今日はすっごく楽しみにしてました!中

 西さん、よろしくお願いしますね」

友紀「はい、おまかせください。それじゃ順に

 控室の方へご案内します。翔子さん、こちら

 へどうぞ」

翔子「はい」

   友紀、先頭に立って翔子を連れて控室へ

   向かう。

 

〇同・新婦控室

   広々とした控室。

   奥にウエディングドレスがかけられてい

   る。

   扉を開けた友紀が入ってくる。

   ドレスをチラリと見てすぐに目を逸らし

   翔子を振り返る。

友紀「こちらへどうぞ。衣装担当を呼んでまい

 りますので、しばらくお待ちいただけますか」

翔子「はーい」

   翔子、中へ入りドレスを見ると嬉しそう

   に笑いながらソファに座る。

   友紀、会釈して出ていこうとする。

友紀「それでは私はこれで…」

翔子「あ、待って中西さん」

   翔子、携帯を持って友紀に駆け寄る。

翔子「一緒に写真撮りましょう!」

友紀「え、でも」

翔子「いいじゃないですか~ホラホラ撮るよ」

   翔子、友紀に近付いて携帯を構える。

   友紀、苦笑しつつポーズを作る。

   シャッター音。

   翔子、携帯を見て満足。

翔子「うん、ありがとう!絶対中西さんと写真

 撮ろうと思ってたのよね。大好きな担当さん

 だもの」

友紀「ありがとうございます」

   友紀、頭を下げる。

   翔子、友紀を見て目を丸くする。

翔子「あれ、中西さん今日は指輪してないんで

 すね?」

   友紀、とっさに左手を隠して笑顔を作る。

友紀「え、ええ…。今日の主役は翔子様と真治

 様ですから。華美な装飾は身に着けないよう

 にしてるんです」

翔子「そうなんですかぁ。もう一度見たかった

 のにな、あの婚約指輪」

友紀「すみません。それでは、担当を呼んでま

 いりますね」

翔子「はーい」

   翔子、手を振る。

   友紀、笑顔で部屋を出ていく。

 

〇同・新婦控室前

   友紀、部屋から出てきてドアを閉めると

   ドアにもたれる。

友紀「はぁ…」

   友紀、左手を見る。

   薬指を撫でる。

久我の声「婚約をなかったことにしてほしい」

   拳を握り、壁を殴ろうとするが寸前で止

   める。

   目を閉じて深呼吸し手から目を開ける。

友紀「今日は、何も考えない」

   友紀、両頬を叩いてから歩き出す。

 

※本音と建て前を書きましょう…といった感じの課題でしたので

顔で笑って心で泣いて…を表現してみました。