おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「マッチ」タネはどこだ

人物

 青山春樹(13)中学二年

 赤城夏美(13)中学二年

 白崎秋生(13)春樹の友人

 黒鳥美冬(13)クラス委員


〇星野中学・全景

 

〇同・2年2組教室内

   昼休み。壁の時計は12時半を指している。

   弁当を食べている者、談笑している者。

   教室の一角、青山春樹(13)と白崎秋生(13)が顔を寄せ合って話している。

春樹「えーマジかよそれ」

秋生「マジマジ。兄貴が塾帰りに見たって言ってたもん」

   赤城夏美(13)と黒鳥美冬(13)が教室に入ってきて春樹と秋生の元へ来る。

   夏美、春樹と秋生の顔を覗き込む。

夏美「なになに?何の話してたの?」

   春樹、ちょっと目を逸らす。

秋生「お前ら知らない?3丁目の空き家。幽霊が出るって噂」

夏美「えーそうなの?ホントに?」

秋生「マジ。オレの兄貴が見たって」

夏美「うそー怖ーい。でもなんか気になる。ね?美冬ちゃん」

   夏美、笑顔で美冬を振り返る。

美冬「ホント男子ってそういうの好きだよね。…まぁ私も興味はあるけど」

秋生「だろ?んで、今夜春樹と一緒に見に行こうぜって話しててさ」

春樹「おい、俺まだ行くって…」

夏美「エー何それ超楽しそう!私も行きたい!ね、美冬ちゃん!」

   春樹、驚いて夏美を見る。

夏美「青山くん、私たちも一緒に行っちゃだめかな?」

   夏美、春樹を見つめ返す。

   春樹、赤面して目を逸らす。

春樹「だ…駄目じゃないけど」

   授業開始のチャイムが鳴る。

   席に戻り始める生徒たち。

秋生「よし、じゃあ今夜9時に現地集合で決まりな!遅れんなよ」

夏美・美冬「オッケー」

 

春樹「え、俺まだ行くって言って…」

   秋生、夏美、美冬が席に戻っていく。

   春樹、茫然と秋生たちを見る。

 

〇青山家・全景(夕)

   ごく普通の一軒家。

 

〇同・春樹の部屋(夕)

   春樹、箪笥からリュックを引っ張り出して懐中電灯を入れる。

   机の引き出しを開ける。ごちゃごちゃと色々なものが入っている中にマッチ箱が

           ある。

   春樹、マッチ箱から中身を出すと何か作業を始める。

   マッチ棒を箱に戻し、リュックに詰める。

春樹「…よぉし」

   春樹、得意げな笑み。

 

〇3丁目の空き家・全景(夜)

   鬱蒼と茂る庭木に囲まれた古ぼけた一軒家。窓ガラスが割れていて、壁がかなり   

   汚れている。

   玄関ドアは外れている。

 

〇同・玄関前(夜)

   春樹と秋生が待っている。

   夏美と美冬が走ってやってくる。

夏美「ごめん、お待たせ!」

秋生「遅いぞ。何やってたんだよ」

美冬「女子が夜に外出る理由作るの大変なのよ、あんた達とは違うの」

   夏美、建物を眺めて嬉しそう。

夏美「うわーやっぱり夜に見ると迫力あるね」

春樹「赤城さん、こういうの好きなんだ」

夏美「えへ、怖いなって思うけど、それよりドキドキしちゃうんだ」

春樹「そ、そうなんだ…」

秋生「よしそれじゃあ肝試し始めるか!」

   秋生、鞄からタバコを取り出し、一本ずつ中身を配る。

秋生「順番に入ってって、一番奥の部屋にコレ置いてくるんだぞ」

美冬「あんたなんでタバコなんて持ってんの」

秋生「親父のをちょっと借りてきたんだよ」

夏美「えー一人ずつ入るの?ちょっとそれ怖すぎるよぉ」

   春樹、サッとマッチ箱を取り出す。

春樹「あ、だったら二人一組で行こうよ。ほらこれでクジ引きしてさ。俺作って

 きたし」

秋生「なんだよ、昼間は乗り気じゃなさそうだったくせに準備いいじゃん!じ

 ゃあそれでいこうぜ!」

   春樹、マッチ箱を開け火薬が付いているものと外したものを見せる。

春樹「赤いのがついてるやつとついてないやつ、二本ずつあるから。同じの引

 いた人同士でチームな」

   春樹、マッチ棒を戻して先を少しだけ出した箱を夏美に差し出す。

春樹「はい、赤城さん」

夏美「ありがと!」

   夏美、マッチを引く。火薬が付いている。

   春樹、続けて美冬、秋生に引かせる。二人とも火薬が無い。

春樹「じゃあ秋生と黒鳥さんがペアだな。残った俺と赤城さんがペア」

夏美「オッケー!頑張ろうね、青山くん」

春樹「う、うん」

   春樹、すぐにマッチ箱をリュックに仕舞う。

秋生「よし、そんじゃ決まり。じゃあ最初はどっちが…」

美冬「ちょっと待って」

   一同の視線が美冬に向く。

   春樹の顔が強張る。

夏美「どうしたの、美冬ちゃん?」

秋生「急に怖くなったとかナシだからな」

美冬「そんなんじゃないよ」

   美冬、春樹をジッと見る。

   春樹、目を逸らす。

美冬「青山くん、ズルしたね」

秋生「え?」

   秋生と夏美、春樹に視線を送る。

春樹「な、なんだよ俺何も…」

美冬「さっきのマッチ箱見せて」

   春樹、とっさにリュックを庇う。

秋生「春樹なんで隠すんだよー見せろよ」

春樹「あっ」

   秋生が後ろからリュックを取り上げ、中のマッチ箱を取り出す。

   箱の中には火薬がついたもの二本とついていないものが三本入っている。

美冬「夏美とペアになろうとしてズルしたでしょ、コレ」

春樹「う…」

夏美「私と?やだ、照れるぅ」

   春樹、真っ赤。

秋生「なんだよ春樹、お前赤城のこと好きだったん?ちゃんと言ってくれれば

 最初からペアにしてやったのに」

夏美「うん、私別にペアになるの嫌じゃないよ?」

   春樹、真っ赤な顔で俯いている。

美冬「だめだよ夏美、こんなズルいことする奴を甘やかしちゃ!青山くん、ズ

 ルした罰として、今回は私とペアね。いい?」

春樹「うう…」

秋生「ま、自業自得だな春樹!」

夏美「じゃあ私は白崎くんとペア?早速行こうよ!私早く中入りたい」

秋生「よっしゃ!じゃあ俺たちが先に入るな。お前ら五分後に入って来いよ」

   秋生、夏美が賑やかにはしゃぎながら空き家へ入っていく。

   美冬、腕時計を見る。

美冬「五分後ね」

   次に春樹を見る。

   春樹、まだ俯いている。

春樹「あー…俺カッコ悪い…」

美冬「ホント。余計な小細工しないで素直に言えばよかったのに」

春樹「うるせー。そんな恥ずかしいことできるか」

美冬「結局もっと恥ずかしいことになったけどね」

   春樹、唇を尖らせる。

春樹「大体お前、なんでわかったんだよズルしてるって」

   美冬、得意げに笑って大げさにポーズを取ってみせる。

美冬「男子の単純な思考回路なんて、この黒鳥美冬様にはお見通しなのよ」

   美冬のスカートのポケットから何かが落ちる。

春樹「何か落ちたぞ」

   春樹、拾い上げる。

   それは春樹のものとよく似たマッチ箱。

   中の複数のマッチ棒は同じように細工されている。

春樹「え、これって」

   美冬、乱暴に春樹からマッチ箱をひったくる。

美冬「返して!」

   春樹から背中を向けている美冬。

   その背中をポカンと見つめる春樹。

春樹「黒鳥お前、そのマッチ箱…」

美冬「………」

春樹「ひょっとしてお前、俺と同じこと…」

美冬「ち、違うもん私はそんな…!」

   振り返る美冬。顔が真っ赤。

 

 

※指摘された単純(すぎる)ミスはさすがに修正しました。

 この後は「学校の怪談」チックな展開が予想される奴です(笑)