おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「不安」鬼っ子ロミオ

    人 物

 

 

ススキ(12)鬼の子供

町谷みこと(11)人間の少女

ホオヅキ(27)ススキの母

レンゲ(享年27)ススキの父

町谷とおる(33)みことの父

 

〇ススキの家・全景

   森の奥、小さな一軒家。

   物干し台があり洗濯ものが干してある。

   ホオヅキ(27)がカゴを持って家から

   出てくる。

   洗濯ものを取り込み始める。

 

〇森の中

   ススキ(12)が道の端に座り込んでい

   る。

   泥だらけになった、ピンク色の子供用の

   スニーカーが落ちている。

   拾い上げ泥を払う。名前が書いてある。

ススキ「ま…ち…や…み…こ…と…」

   ススキ、スニーカーを手に立ち上がると

   走っていく。

 

〇ススキの家・全景

   ホオヅキが洗濯ものを取り込んでいる。

   ススキが走ってくる。

ススキ「母ちゃん!」

ホオヅキ「あら、おかえりススキ」

 

〇同・物干し場

   ススキ、ホオヅキに駆け寄る。

ススキ「母ちゃん、落とし物見つけた」

ホオヅキ「うん?」

   ホオヅキ、取り込む手を止めてススキを

   振り返る。

   ススキ、スニーカーを差し出す。

ススキ「これ。名前が書いてある」

   ホオヅキ、スニーカーを取り眺める。

   名前を見つけて顔を歪める。

ホオヅキ「これ、人間の持ち物じゃない!」

   ホオヅキ、スニーカーを捨てる。

   ススキ、慌てて拾う。

ススキ「ダメだよ捨てちゃ」

ホオヅキ「そんなものを持ってくるんじゃあり

 ません!今すぐ元あった場所へ捨てておい

 で」

ススキ「でも落とした人困ってるかも」

ホオヅキ「関係ない。いい?これは人間の持ち

 物なの。私たち鬼が関わってはいけない生き

 物のものなの。元の所に戻して、なかったこ

 とにするのが一番平和なのよ」 

ススキ「でも…」

   ホオヅキ、膝をついてススキに目を合わ

   せる。

ホオヅキ「先生にも教わったでしょう。人間は

 自分たち以外の生き物を見つけたらすぐに襲

 い掛かってくる習性があるの。今までに何人

 の仲間が人間に殺されてきたことか」

   ススキ、スニーカーに視線を落とす。

 

〇同・仏間

   仏壇にレンゲの遺影が飾ってある。

   その前には煤けた鬼の角。

ホオヅキの声「父ちゃんのこと、忘れちゃった

 の?」

 

〇同・物干し場

   ススキ、唇を噛んで首を横に振る。

ホオヅキ「ススキ。母ちゃんは意地悪で言って

 るんじゃないの。危険だから言ってるの。わ

 かる?人間に見つかったら、あんたも殺され

 るんだよ。ましてやそれを盗んだなんて思わ

 れたら何をされるか…。返しておいで。今す

 ぐに」

ススキ「わかった」

   ススキ、暗い表情でうなずく。

   ホオヅキ、ススキの肩を叩いて歩いてい

   くよう促す。

   ススキ、歩いていく。

 

〇森の中

   ススキが歩いてくる。

   拾った辺りで立ち止まる。

   泥だらけのスニーカーを見る。

   ススキ、方向転換をして別の道へ走り出

   す。

 

〇同・川辺

   ススキ、川べりへ下りてくる。

ススキ「こんな泥だらけのままじゃ靴が可哀想

 だもんね」

   ススキ、川の水でスニーカーを洗い始め

   る。

   鼻歌を歌いながらスニーカーを洗う。

みことの声「そこに誰かいるの?」

   ススキ、体を縮こませ、帽子を深く被る。

   町谷みこと(11)が出てくる。

みこと「やっぱり人がいた!」

   ススキ、立ち上がってスニーカーを後ろ

   手に隠す。

   みこと、ススキに近付く。

みこと「こんなところで何してるの?キャン

 プ?バーベキュー?」

ススキ「えっと、その、落とし物を拾って…」

みこと「落とし物?」

   みこと、ススキの周りをまわる。

   手に持ったスニーカーに気付く。

みこと「あっ!これ私の!」

ススキ「え、き、君の?」

   ススキ、恐る恐るスニーカーを差し出す。

   みこと、受け取る。

みこと「うん!この前山菜取りに上った時にね、

 帰りにパパにおんぶしてもらったんだけどそ

 の時落としちゃってたみたい」

   みこと、スニーカーに頬ずりする。

みこと「もう諦めてたんだ。良かった、返って

 きて」  

ススキ「よ、よかったね」

みこと「ありがとう!」

町谷の声「おーいみこと、どこだー」

   みこと、大声で手を振る。

みこと「あっパパだ。パパーこっち!」

   町谷とおる(33)が近付いてくる。

   体格のいい町谷を見て後ずさりするスス

   キ。

   足が川に入ってしまう。

町谷「一人で進んで行ったら危ないじゃないか、

 みこと」

みこと「ごめんなさい」

   町谷、ススキに気付く。

町谷「うん?君は?どこの子?」

ススキ「あの、えっと」

みこと「パパ、この子が私の靴見つけてくれた

 んだよ」

   みこと、スニーカーを町谷に見せる。

町谷「なんだって?それは良かったなぁ」

   町谷、スニーカーを手に取る。

町谷「うん?濡れてる」

ススキ「あ、あの、泥だらけだったから…可哀

 想で洗おうかと思って…」

町谷「そうかそうか!」

   町谷、ススキの肩を叩く。

   ススキ、肩を竦める。

町谷「ありがとうなぁ、少年!このスニーカー、

 娘がすごく気に入ってたやつなんだよ。いや

 ぁいい人に見つけてもらえて良かったなぁ」

みこと「うん!」

ススキ「あ、あの…僕もう行かなきゃ…」

町谷「ああ、そうか。そろそろ暗くなるから、

 気を付けて帰るんだよ」

ススキ「は、はい」

   ススキ、早足で歩き出す。

みこと「ねぇ君!」

   ススキ、帽子を押さえながら立ち止まる。

ススキ「は、はいぃ!」

みこと「明日も会える?放課後、一緒に遊ぼう」

   ススキ、驚いてみことを振り返る。

町谷「こら、勝手なことを言うんじゃない」

みこと「えーだって遊びたいもん」

町谷「あの子にも都合があるだろう」

   ススキ、意を決して叫ぶ。

ススキ「い、いいよ!」

   みこと、笑顔になる。

みこと「本当?じゃあ明日、3時にここに来て

 ね!」

ススキ「う、うんわかった。それじゃ」

   ススキ、ぎこちなく手を振って歩き出す。

   みこと、大きく手を振る。

みこと「また明日ねー!」

   ススキ、振り返らずに走っていく。

   みこと、ススキの背中を見送る。

みこと「パパ、私もあんな帽子欲しいなぁ」

町谷「ママに買ってもらいなさい」

 

〇森の中

   ススキ、笑顔で走り抜けていく。

   帽子が脱げて落ちる。

ススキ「あっ」

   立ち止まり帽子を拾い上げる。

   その頭には鬼の角。

 

〇ススキの家・ススキの部屋

   鏡の前、帽子を被っているススキ。

   床には帽子がいくつも転がっている。

   ホオヅキが部屋の前を通る。

   部屋の中を見て足を止める。

ホオヅキ「そんなに散らかしてどうしたの」

ススキ「母ちゃん、どの帽子が似合うかな」

ホオヅキ「え?」

ススキ「赤いのもカッコイイけど青もクールな

 感じでカッコイイよね。どっちがいいかな」

ホオヅキ「なあに?明日どこかに行くの」

ススキ「川に遊びに行くんだ」

ホオヅキ「そう。いいわね。誰と?」

   ススキ、手が止まる。

   帽子を掴む手に力がこもる。

ススキ「学校の、友達と」

ホオヅキ「そう。楽しんできてね」

ススキ「うん」

   ホオヅキ、部屋を出ていく。

   ドアの前で立ち止まる。

ホオヅキ「ススキ。たとえ子供だろうと人間と

 は関わっちゃダメよ」

ススキ「わかってるよ!おやすみ!」

   ススキ、ホオヅキを押して部屋から出す。

   勢いよくドアを閉める。

 

※ ばれたら殺される…!という不安を書いてみました。

 この設定、突き詰めたら面白いもの書けるかも?