おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「裏切りの一瞬」ずっと

    人 物

高橋有香(10)(15)中学生

高橋志織(35)(40)有香の母。シングルマザー

三苫清二(30)志織の同僚

松野(55)近所の住民

部長(45)志織の上司

 

〇葬儀場・正面

   雨が降っている。

   「高橋家葬儀」の立て看板がある。

 

〇同・会場

   僧侶の読経が響く。

   多くの参列者が座っている。

   祭壇には高橋徹(45)の遺影。

   すすり泣く声が聞こえる。

   遺族席の高橋有香(10)と高橋志織(35)。

   泣き腫らした目で俯いている志織。

   無表情で正面を向いている有香。

有香の声「お父さん」

 

〇火葬場・庭

   煙突から煙が上がっている。

   雨が降る中、煙突を見上げる有香。

志織の声「風邪ひくよ」

   有香に傘がかけられる。

   振り返ると志織が傘を差し出している。

有香「お母さん」

   志織、弱々しく微笑む。

有香「お父さん見てたの」

   志織、笑顔でうなずいていたが堪えきれ

   ず有香を抱きしめて泣く。

   有香、志織の腕を撫でる。

有香「お母さん、大丈夫だよ。有香がいるよ」

志織「うん、うん。頑張っていこうね」

   有香、志織に向き直る。

   有香と志織、抱き合う。

志織「有香はお母さんが守るからね」

有香「お母さんは有香が守るからね」

   煙突から煙が出ている。

 

〇住宅街(夕)

   中学の制服姿の有香(15)が学生鞄と満タ

   ンのエコバッグを持って走っている。

   向こうから松野(55)が歩いてくる。

松野「おかえり有香ちゃん」

   有香、走りながら手を振る。

有香「ただいま松野さん!」

松野「お母さん今日遅いの」

有香「うん。だからカレーでもしようかなって」

松野「そう。後で家においで。ポテトサラダわ

 けてあげる」

有香「やった!ありがとう!じゃあ後で」

松野「気を付けてね」

   有香、走っていく。

   松野、笑顔で見送る。

 

〇有香の家・キッチン(夜)

   有香の鼻歌。

   時計は20時を指している。

   流しに乱雑に積まれたボウルやまな板、

   包丁。

   生ごみ袋からにんじんの皮が溢れている。

   作業台にラップをかけたポテトサラダの

   皿が置かれている。

   コンロにかけた鍋をかき回している有香。

有香「いい感じ」

   ふと思いついたように冷蔵庫を開ける。

有香「隠し味」

   チョコを取り出し鍋に入れる。

   鍋を覗き込む。

有香「おお」

   玄関でドアが開く音。

志織の声「ただいまー」

有香「おかえり!」

   志織が顔を出す。

志織「お、今日はカレーね」

有香「アンド松野さんのサラダだよ」

   志織、鍋を覗き込む。

志織「いいね。ありがとう」

有香「もうできるよ。着替えてきちゃって」

志織「うん、ありがと。お母さんお腹空いちゃ

 った」

有香「私も!」

志織「遅くなってごめんね」

有香「今日は早い方だよ」

   志織、微笑んで出ていく。

 

〇同・ダイニング

   徹の遺影の前にカレーを置く志織。

   手を合わせる志織の右手に指輪。

志織「今日は有香のカレーよ、お父さん」

   有香、テーブルに料理を並べて席に着く。

有香「食べよ食べよ!」

志織「はいはい」

   志織、席に着く。

有香・志織「いただきまーす」

   食べ始める有香と志織。

   雑談しながら食事。

   志織、右手でソースに手を伸ばす。

   有香、志織の右手の指輪に気付く。

有香「あれ、お母さんそんな指輪持ってたっけ」

志織「ああ、これ?さっきタンスで見つけたの。

 昔お父さんからもらった指輪」

   志織、指輪を見せる。

有香「へー。お父さん、結構センスいいじゃん」

志織「今でもいけるでしょ」

有香「うん。いいな、私も欲しい」

志織「あんたが大人になったら譲ってあげる」

   志織の背後、遺影の徹が見える。

   有香、微笑む。

有香「いいよね、お母さん達って」

志織「なによ、急に」

有香「別に。私もいい旦那さん見つけたいな」

志織「いいわね。ちゃんと最後まで一緒にいら

 れる旦那さん見つけるのよ」

有香「そうだね」

   有香、カレーを頬張る。

   志織、カレーを食べる。

 

〇みつば不動産本社ビル・全景

 

〇同・管理部

   デスクで右手の指輪を眺める志織。

   志織の目の前にファイルが数冊置かれる。

三苫の声「何ボーっとしてるんですか」

   志織、顔を上げる。

   仏頂面の三苫清二(30)が立っている。

志織「三苫くん」

三苫「その物件の入居者リスト作ってほしいっ

 て部長から」

志織「あぁ、はい」

   志織、ファイルを開こうと手を伸ばす。

   三苫、志織の右手を掴む。

三苫「なんですかこの指輪。誰からもらったん

 ですか。まさか男」

志織「バカね。昔旦那からもらったのが出てき

 たから着けただけよ」

   志織、手を引こうとするが三苫は放さな

   い。

志織「三苫くん」

三苫「未だに結婚指輪もしてるし、おまけに追

 加で指輪とか。俺に牽制してるんですか」

志織「何言ってんのよ、そんなつもりじゃ」

三苫「だってそうじゃないですか」

   声が大きくなる三苫

   社員たちが振り向く。

   志織、慌てて強引に手を振りほどく。

志織「(小声で)朝っぱらからこんなとこで話す

 内容じゃないでしょ」

三苫「高橋さんが悪いんでしょう。俺の気持ち

 知ってるくせに」

   志織、ファイルを持って立ちあがる。

三苫「高橋さん」

志織「あの部長、リストの件なんですけど!」

   志織、離れていく。

   三苫、不満そうに見つめる。

   志織、部長(45)と会話しつつ、さりげな

   く三苫に手を振る。

   三苫、気付いてにやけながら席に戻る。

 

〇有香の家(夕)・リビング

   有香のスマホが着信する。

   ソファでくつろいでいた有香、テーブル

   の上のスマホに手を伸ばす。

   志織からのLINE。

   「急に飲み会入っちゃった。悪いけど何

   か買って食べてね」

有香「えーマジ?」

   有香、スマホを放り投げてソファに寝転

   がる。

   しばらく考えて起き上がる。

有香「よし、豪遊だ」

   有香、徹の遺影に手を伸ばす。

   写真立てに隠してあるお札を取り出す。

   有香、ニヤリと笑って遺影に手を合わせ

   る。

有香「お父さん、お母さんには内緒にしてね」

 

〇商店街・肉屋(夕)

   肉屋の主人がトンカツとコロッケと唐揚

   げを包んで有香に差し出す。

肉屋「はいお待ち。有香ちゃん、今日は豪勢だ

 ね」

有香「たまにはね」

肉屋「そうだ。これ、おまけ」

   肉屋、フランクフルトを差し出す。

有香「わーありがとう!」

   有香、受け取ってすぐに頬張る。

有香「おいしーい」

   有香、食べながら歩き出す。

 

〇同・道(夕)

   フランクフルトを食べながら歩く有香。

   人込みに志織を見つける。

有香「あれ、お母さん?」

   有香、見ている。

   志織の隣に三苫がいる。

   楽しそうに話す二人。

   三苫、志織の肩に手を回す。

   志織、三苫の肩に頭を乗せる。

   歩いていく志織と三苫

   有香の手からフランクフルトが落ちる。

   足を止める有香。

   歩行者にぶつかるが動かない。

   志織と三苫、ホテル街へ曲がっていく。

有香「…なんで」  

 

 

★厳密には裏切りとは言えないんですけどね。

 娘からしたら、母親はいつまでも母親で。

 もういないとはいえ、父親以外の男と…というのはなかなか受け入れられないですよね。まして、思春期の女の子なら。

 

 もはや定番と言える「裏切り」ですね(笑)