おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「喜び」Shangri-la

    人 物

 

中道里緒菜(17)高校生

須藤永太(18)里緒菜の先輩

草薙秀(18)里緒菜の先輩

 

〇東野第一高校・全景

   薄暗い空。時折雷が鳴っている。

   建物は荒れていて窓ガラスが割れている。

   壁には血の手形が複数付いている。

 

〇同・校舎内・廊下

   荒れ放題の校内。

   照明は割られ明滅を繰り返している。

   薄暗い廊下には制服を着た遺体がいくつ

   も倒れている。

 

〇同・校舎内・廊下

   草薙秀(18)、須藤永太(18)、中道里緒菜

   (17)が必死の形相で走っている。

 

〇同・校舎内・玄関

   割れたガラス戸の前に下駄箱でバリケー

   ドが張られている。

   不気味な唸り声が複数聞こえる。

   ガラス戸に重たい何かがぶつかる音が響

   く。

   何度もぶつかる音。

   バリケードが少しずつ動き、立てかけて

   あった下駄箱が反対に倒れる。

   隙間から、制服を着た大量のゾンビが侵

   入してくる。

   玄関内に響く唸り声。

 

〇同・校舎内・廊下

   走りながら後ろを振り返る里緒菜。

里緒菜「入ってきた!」

草薙「嘘だろ、あんな重たいモンで塞いだんだ

 ぞ!」

須藤「言ってても仕方ない、とにかく屋上まで

 走るぞ」

   階段へ向かう一行。

   後ろを振り返る里緒菜。

   ゾンビが迫ってくる。

   先頭は明るい茶髪をツインテールにして

   いるゾンビ。

   里緒菜、泣きそうな顔で見つめる。

里緒菜「マイコ…」

草薙「何してんだ、早く来い!」

   里緒菜、慌てて階段を上り始める。

 

〇同・校舎内・階段

   一同、必死に階段を上っていく。

 

〇同・校舎内・屋上前の階段

   草薙が上ってくる。

   屋上へつながるドアが見える。

草薙「もう少しだ、頑張れ!」

   須藤が来る。

須藤「大丈夫か中道」

   須藤、後ろを振り返る。

   里緒菜、フラフラになりながら階段を上

   がってくる。

里緒菜「大丈夫…」

須藤「もう少しだ」

   須藤が手を差し出す。

   里緒菜、須藤の手を取ろうとする。

   里緒菜の後ろ髪をゾンビが掴む。

里緒菜「ひっ!」

   里緒菜の体が後ろに引っ張られ、階段か

   ら落ちそうになる。

須藤「中道!」

   須藤、里緒菜の手を掴み思い切り引き上

   げる。

   須藤、ゾンビたちに向き合う。

須藤「先に行け!」

里緒菜「でも」

須藤「行け!」

   須藤、落ちていたモップを拾うとゾンビ

   の集団へ立ち向かっていく。

里緒菜「須藤さん!」

草薙「中道、早く来い!お前まで危ないぞ!」

   草薙、里緒菜の手を強引に引いて階段を

   上がっていく。

 

〇同・屋上

   ドアを閉め、背中で抑える草薙。

里緒菜「須藤さん!」

   里緒菜、ドアの窓から覗こうとする。

   草薙、阻止する。

草薙「バカ、見つかるぞ」

里緒菜「でも、須藤さんが!」

草薙「…あいつなら強いしタフだからきっと大

 丈夫だよ」

   里緒菜、ドアをジッと見つめる。

 

〇同・屋上(夕)

   薄暗い空の遠くが赤く染まっている。

   草薙、ドアに聞き耳を立てている。

草薙「…静かだな」

   様子を伺いながらそっとドアを開ける。

草薙「ここにいろ」

里緒菜「私も行きます」

   草薙と里緒菜、慎重に校内に入る。

 

〇同・校舎内・屋上前の階段(夕)

   暗くなってきている校内。

   聞き耳を立てるが静かなまま。

   草薙が降りていく。

 

〇同・校舎内・2階階段(夕)

   草薙が降りてくる。

   荒れていてゾンビが何体も倒れている。

   草薙、落ちている上履きを拾う。

   血で汚れている上履きのかかとに須藤の

   名前。

   見回すと血まみれで折れたモップがある。

   草薙、唇を噛む。

   里緒菜が降りてきて、2階の様子に怯え

   る。

里緒菜「須藤さんは…」

   草薙、無言で首を横に振る。

   里緒菜、草薙の持つ上履きとモップを見

   て涙をこぼす。

里緒菜「そんな」

   遠くでガラスが割れる音が聞こえる。

   緊張が走る草薙と里緒菜。

里緒菜「須藤さんかも」

草薙「いや…。…行ってみよう。離れるなよ、

 中道」

   草薙、里緒菜に手を差し出す。

   手を握り合って歩き出す。

 

〇同・校舎内・廊下(夕)

   暗い廊下を里緒菜と草薙が歩いていく。

   足音以外の物音は無い。

 

〇同・校舎内・廊下突き当り(夕)

   窓ガラスが割れている場所に着く。

   投石された跡がある。

草薙「外から割られてる」

里緒菜「誰か入ってきてるの?」

草薙「誰かか、ゾンビか」

   うめき声が聞こえる。

   振り返るとゾンビの集団が向かってくる

   のが見える。

里緒菜「いつの間に…!」

   草薙、里緒菜の手を引いて逃げようとす

   るが行き止まり。

   逃げ場がない。

   ゾンビの集団が迫ってくる。

   草薙、里緒菜を背中に隠す。

里緒菜「草薙さん」

草薙「心配するな、お前だけでも護ってやるか

 らな」

里緒菜「でも」

   草薙、ポケットから折り畳みナイフを取

   り出して構える。

   里緒菜、草薙の肩越しにゾンビを見つめ

   る。
   先頭にいるマイコのゾンビは頭を大きく

   損傷している。
草薙「俺があいつらに飛び込むからお前はその

 隙に逃げろ。いいな!」

里緒菜「え!?」

   草薙、ナイフを構えたままゾンビに向か

   って走る。

里緒菜「ダメ、草薙さん!」

   草薙にゾンビたちが襲い掛かる。

   ナイフで応戦する草薙。

   多勢に無勢で負けそうになる草薙。

里緒菜「草薙さん!」

   ガラスが割れる大きい音と共に窓から大

   きい影が飛び込んでくる。

   驚く里緒菜。

   影の正体は須藤。

   須藤、新しいモップを振り回してゾンビ

   に向かっていく。

里緒菜「須藤さん…!」

草薙「須藤!」

須藤「うおおおおっ」

   須藤、草薙を助けゾンビの集団に立ち向

   かっていく。

   草薙、須藤に続く。

   里緒菜、茫然と見つめる。

   里緒菜の目から涙がこぼれる。

里緒菜「生きてた…!」

   ×   ×   ×

   ゾンビの集団、全員が倒れている。

   その中心で荒い息を吐きながら立ってい

   る須藤と草薙。

草薙「終わったか…?」

須藤「そのようだな」

   須藤と草薙、お互いを見て笑顔になる。

   がっちりと手を握る。

里緒菜「須藤さん、草薙さん」

   里緒菜、二人に駆け寄る。

須藤「中道、無事か」

   里緒菜、須藤に飛びつく。

   須藤、驚きながらも受け止める。

須藤「おっと」

里緒菜「よかった、須藤さんよかった」

   須藤、微笑んで里緒菜の頭を撫でる。

須藤「心配かけたな」

   草薙、二人を見つめつつ、足元を見る。

   ゾンビの死骸全ての首筋に赤い痣を見つ

   ける。

      

 

※最近人気(?)のゾンビものにしてみました。

「喜び」を強調するため、最初は「悲しみ」「苦しみ」から始めるといい、ということで書いたのですが…

「恐怖」になっちゃってるとのことで、無念。

悲しみの描写が足りなかったかぁ…!