おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「非常口」ようこそ、悪い子よ

人物

 風見大和(12)小学六年生

 安西詩織(28)大和の担任

 シルクハットの男(28)

 金沢栄治(12)大和のクラスメート

 

 

〇小学校

   昼休み。児童が大勢遊んでいる。

   校庭で鬼ごっこ、縄跳び、サッカー。

   廊下でゴム跳び、おしゃべり。どこも笑い声が飛び交ってにぎやかだ。

   突然、火災報知器が鳴り響く。

   児童たちがパニック。

 

〇同・6年3組教室前

   鬼の形相で廊下を走ってくる安西詩織(28)

   鳴り響くベルの中、警報機の前で風見大和(12)と金沢栄治(12)がはしゃ

   いでいる。

詩織「風見君!金沢君!」

   栞に気付いた大和と栄治、舌を出して逃げ出す。

詩織「待ちなさいあなた達ーっ!」

   詩織が追う。大和と栄治が逃げる。

   廊下を駆け抜け、階段を下りる。

 

〇同・二階廊下

   階段を一階降りた先、すぐ横の突き当りに非常口。

   非常口になんとなく目が行く大和。

詩織の声「(降りてくる)待ちなさーい!」

栄治「やべっ」

   栄治、また階段を駆け下りていく。

   詩織の足音が近づいてくる。

   大和、少し迷ったが非常口の扉を開き外へ飛び出す。

   ガチャンと扉が閉まると同時に詩織が顔を出す。

詩織「あれ?」

   キョロキョロする詩織。

   非常口は「ない」

詩織「逃げ足早いなぁもう…」

   詩織戻っていく。

   大和が入ったはずの非常口は壁になっている。

 

異世界

   妙に薄暗い廊下が続いている。

   大和、ポカンと立ち尽くす。

   振り向くとそこに壁も扉もなく、廊下が続いている。

大和「え?何ここ…出口…」

   大和、おそるおそる歩き出す。

   教室らしき部屋のドアを開ける。

   中は薄暗く人気もない。

大和「………」

   また歩き出す。

   ただ廊下が続いている。

大和「もう…どうなってんの…」

   大和、泣きそう。

   どこかで物音がする。

   大和、音がした方へ走り出す。

   廊下を曲がると、何か黒い塊が蠢いている。

   大和が見つめていると、塊が振り返る。

   ぎょろりと大きな瞳が一つ。

大和「えっ…」

レイ「(咆哮)」

   鋭い牙を見せて巨大な口で吼えるレイ。

大和「うわあああっ」

   大和、たまらず踵を返し逃げ出す。

   レイ、四本の足で立ち上がると大和を追い始める。

   必死で逃げる大和。

   すごい勢いで追ってくるレイ。

   大和、泣きそう。

   ふと前方に微かな灯が見える。

   大和、教室に飛び込む。

 

〇同・教室内

   大和、急いで扉を閉めて息をひそめる。

   レイ、そのまま教室の前を走り去っていく。

   大和、ホッと一息。

   ふと教室に目をやる。

   シルクハットを目深に被ったタキシード姿の男(28)が背を向けて立って

   いる。

大和「あの…」

   シルクハットの男がゆっくり振り返る。表情は見えない。

大和「あ、あのボク、今迷子で、化け物に襲われてそれで…」

   シルクハットの男が大和に近づく。

シルクハットの男「おやおや…これは久しぶりの来客だ」

   不気味に微笑む男。

シルクハットの男「レイも困った子だね、よほどお腹が空いていたらしい。あやうく

 独り占めされるところだった」

   大和、不気味に感じて後ずさる。

   シルクハットの男の背後がぼんやりと光り、不気味な影がいくつも蠢いている

   のが見える。

シルクハットの男「最近は良い子ばかりで、ここに迷い込む子が少なくて困っていた

 んだ」

   大和の足が震える。

シルクハットの男「悪い子は大歓迎だよ…実に美味しそうだ」

   男の背後の化け物たちの姿がハッキリと見えてくる。恐ろしい化け物ばかり。

   男がまた一歩、大和に近づく。

シルクハットの男「さぁ、食事の時間だ」

大和「うわああああっ」

   大和、悲鳴と同時に扉を開けて飛び出す。

 

〇同・廊下

   薄暗く入り組んだ廊下をがむしゃらに走り続ける大和。

   微かに笑い声が聞こえる。

大和「だっ…誰か…誰か助けて…!」

   走る大和。

大和「誰か…」

   眼前に行き止まりが見えてくる。

大和「せんせえ…っ!」

   壁に非常口が見える。

   非常灯が煌々と光っている。

   大和、非常口のノブに手を伸ばす。

   扉がゆっくりと開かれる。

 

〇小学校・廊下(夕)

   大和がゆっくりと目を開く。

   詩織が覗き込んでいる。

   驚いて起き上がり辺りを見る大和。

   見慣れた小学校の廊下。

詩織「どこまで逃げたのかと思ったら、こんなところで寝てたのね!まったくあなた

 は…」

大和「よ…よかったぁ…」

   一気に体の力が抜ける大和。

   その様子に首をかしげる詩織。

 

〇同・廊下

   児童たちがにぎやかに遊んでいる。

   おしゃべりする者、ゴム跳びをする者、サッカーをする者…。

   大和、栄治と警報機や非常口の前で話している。

栄治「昨日は逃げれて良かったよな!安西先生もすごい顔で追っかけてきて超怖かった

 し」

大和「…そーだな」

栄治「今日も押してみる?また先生飛び出してくるかも」

   栄治、警報機のボタンに手を伸ばす。

   大和、その手を制す。

大和「やめようぜ、もう」

栄治「ええ~なんでだよぅ」

大和「…なんででも、だよ」

   大和、言いながら非常口をチラリと見る。

   非常扉がほんの少し開く。

 

 

※枚数が多くなってきました。

 丁寧な指摘をいただき、作品を書く際には細かい設定の重要性を感じました。

 ノリだけで書いてはいけません、ええ。