おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「おじさん」向井総一郎の非日常な日常

人物

 向井総一郎(38)作家

 鈴木和沙(25)向井の担当編集

 

 

〇向井の家のアパート・外

   古ぼけたアパートの二階角部屋。

   汚い字で書かれた「向井」のネームプレート。

   扉の奥からスマホの着信音が聞こえる。

 

〇同・室内

   乱雑に積まれた本の塔が目立つ室内に着信音が響いている。

   小さな机の上には真っ白な原稿用紙と万年筆、鳴り続けるスマホ

   人の気配はない。

 

〇喫茶店・店内

   落ち着いた雰囲気の店内。数組の客が談笑している。

   通りに面した窓側の席、入口から背を向けて向井総一郎(38)がコーヒーを

   飲んでいる。テーブルの上の灰皿には煙草が4~5本。

和沙の声「やっぱりここでしたね」

   鈴木和沙(25)に背後から話しかけられ、向井がギョッとして振り返る。

向井「す…鈴木!なんでここが」

和沙「スマホから逃げても無駄ですよ、先生の行動パターンはもう解析済みですから」

   和沙、向井の正面の席に座る。店員にアイスコーヒーと注文。

向井「いやいや、逃げてるんじゃないのよ。ちょっと煮詰まっちゃったから気分転換

 していいネタを考えようと…」

和沙「ノートもパソコンも無しでどうやって創作するってんですか?」

向井「それはほら、頭の中で組み立てを…」

和沙「あー、また煙草吸ってる。百害あって一利無しですよ?禁煙してくださいって」

向井「俺は煙草吸わなきゃ書けない体なの」

和沙「先生デビューしたの高校生の時じゃないですか」

向井「君ねぇ、ああ言えばこう言うの、可愛くないよ?」

和沙「え、私可愛くないですか?」

   和沙、小首を傾げてややブリッ子。

向井「いや…うん、可愛いけど」

和沙「えっ」

   和沙、赤くなる。

   向井もその反応に驚いて固まる。

向井「い…いやいや、自分で振っといて照れんなよ!こっちまで恥ずかしくなる」

和沙「す、すみませんつい嬉しくなっちゃって」

   向井、間を繋ぐように煙草に手を伸ばす。

   火を点けたところで和沙の手が伸びて取り上げる。

和沙「禁煙」

向井「和沙ちゃあん」

和沙「き、急に名前で呼ばないでください!」

   和沙、また赤くなって立ち上がる。

   伝票を取るとレジへ向かう。

向井「おい、まだコーヒー残って…」

和沙「早く戻って書いてください、〆切明日なんですから。もう破らせませんよ!」

   向井、立ち上がって足早に和沙に近寄ると伝票を取り上げて支払いを済ます。

   和沙、ジッとその背中を見つめる。

   支払いを終えた向井が振り返るとサッと目を逸らす。

向井「そんなに怒らないでよ鈴木サン。ちゃんと戻って書くからさ」

和沙「別に怒ってません」

向井「ホント?目逸らしてるけど」

和沙「怒ってませんってば!ほら、行きますよ」

   和沙が向井の背を押して店を出る。

 

〇同・店先

   向井、和沙が出てくる。

   目の前を黒塗りのセダンが通り過ぎていき、数メートル先を歩いている

   高山里穂(8)の横に急停車する。

   後部座席から手が伸びて里穂を強引に連れ込む。

和沙「あっ!」

   急発進していく黒塗りのセダン。

和沙「い、今の事件ですよね?せんせ…」

   和沙が言い終わる前に、向井がセダンを追って走り出す。

和沙「先生!?ちょっと…」

   和沙、スマホを取り出し電話しつつ走り出す。

和沙「も、もしもし誘拐事件です…」

 

〇路上

   信号で停車しているセダン。

   向井が追い付いてくる。

   信号が変わり、走り出すセダン。

向井「くそっ逃がさねぇっ!」

   向井、渾身の力でセダンのトランク部に飛びつく。

 

 

※こういう「おじさん」好きなので、もっと広げて書きたいです。

 親近感と憧れ性…両立って大変。