おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「兄弟(姉妹)」ミラーレス

    人 物

遠山兼親(30)美容整形科専門の医師

牧野千鶴(24)看護師兼事務員

長田沙帆(20)患者

遠山愛親(30)遠山の双子の兄

長田詩帆(20)沙帆の双子の妹

大城優(20)沙帆と詩帆の想い人

 

 

〇桜ビューティークリニック・全景

   一等地に立っている真っ白な建物

 

〇同・診察室

   机で携帯で話している遠山兼親(30)

   指で机をトントンと叩いている。

遠山「だから、来なくていいって。俺一人で十分やってるし」

愛親の声「そうは言っても手は多いに越したことないだろ」

   牧野千鶴(24)、遠くから様子を覗く。

千鶴「またやってる…」

 

〇東京駅・構内

   スーツケースを持った遠山愛親(30)が電話しながら颯爽と歩いている。

   時々通り過ぎる女性が振り返る。

愛親「医者の数が増えれば患者ももっと受け入れやすくなるしお前も楽になる。悪い話

 じゃないだろ」

〇同・タクシー乗り場

   愛親が歩いてくる。

遠山の声「そりゃ…人手はあるに越したことないけど」

愛親「だろ?決まり。今駅にいるから、そっちに向かうな」

   愛親、乗り場に立つ。

遠山の声「は?駅?ちょっと待てなんで」

   タクシーのドアが開き、乗り込む。

愛親「これからタクシーだから、また後でな」

   愛親、電話を切る。

愛親「運転手さん、お願いします」

   タクシーが走り出す。

 

〇桜ビューティークリニック・診察室

   通話が切れている携帯電話。

   茫然とする遠山。

遠山「マジか、あいつ…」

千鶴「先生、コーヒーどうぞ」

   千鶴、トレイに湯飲みを乗せて来る。

遠山「あ、ああサンキュ」

   遠山、湯飲みを受け取り一口飲む。

千鶴「お兄さんからですか」

遠山「ああ。またしつこく手伝ってやるって。いいって言ってんのに」

千鶴「えーでも遠山愛親医師って言ったら、あの若さで難しい手術を何例もこなしてる

 外科の名医ですよ?しかもイケメン!その遠山医師が来てくれたら大助かりじゃない

 ですか」

遠山「あのな。ウチは美容外科なの。外科の名医の先生がいらっしゃる必要はないの」

千鶴「来てくれたらウチも有名になって、たくさんお客さん来てくれるかもしれないで

 すよ?」

遠山「それでまた俺は兄貴の補佐に戻るってか。冗談じゃない!」

   遠山、湯飲みを乱暴に置く。

   コーヒーが零れる。

   千鶴、慌ててティッシュを持ってきて机を拭く。

千鶴「やだなぁ、そんなに怒らないでくださいよ。冗談です、冗談」

   遠山、千鶴に背を向ける。

遠山「そんなに兄貴がいいなら兄貴の下で働けばいいだろう。イケメンで有能で、女が

 好きな要素全部持ってるぞ」

千鶴「もう、お兄さんのことになるとすぐ拗ねるの、良くないですよ?」

遠山「生まれつきだ」

   千鶴、頭を下げる。

千鶴「すみません。調子に乗りました。当医院の医師は遠山先生ただ一人です。遠山先

 生の下で働かせてください」

遠山「わかればいい」

   千鶴、ホッとした様子。

   診察室を出ていきながら

千鶴「先生、今日は午後から予約があるのでよろしくお願いしますね」

遠山「おお」

   遠山、コーヒーを飲みつつ手を振る。

 

〇同・診察室

   薄いカーテンから日光が差し込んでいる。

   長田沙帆(20)が緊張した様子で座っている。

   遠山が座っている。

遠山「長田沙帆さん、ですね。どこを手術したいと考えていますか」

   沙帆、うつむく。

   遠山、千鶴に目で合図する。

   千鶴、出ていく。

   遠山、デッキで静かな音楽をかける。

   沙帆、顔を上げる。

   遠山、椅子に戻ってくる。

遠山「ご自分のタイミングで話してくださいね。焦らなくていいですから」

沙帆「はい…」

   千鶴、マグカップに入ったホットミルクを持ってくる。

   沙帆にそっとマグカップを差し出す。

千鶴「牛乳は大丈夫ですか?」

沙帆「あ、はいありがとうございます」

   沙帆、マグカップを受け取り一口飲む。

   ホッとした顔。

   マグカップを机に置いて遠山を見る。

沙帆「私、妹がいるんです。双子の。詩帆っていうんですけど」

千鶴「双子!いいですね~遠山先生も双子ですよね、全然似てないけど」

   遠山、千鶴を睨みつける。

遠山「牧野くん、黙って」

千鶴「すみません」

   遠山、沙帆に向き直る。

沙帆「私たちは一卵性…っていうんですか、同じ顔で。両親もよく私たちを間違えるく

 らいでした」

   沙帆、携帯を出して操作し写真を見せる。

   遠山、携帯を覗き込む。

   千鶴も近付いて覗き込む。

   沙帆と詩帆の成人式の写真。

   色違いで同じ着物の二人。瓜二つ。

遠山「ホントだ。そっくりですね」

千鶴「わー可愛い!」

沙帆「ありがとうございます」

   沙帆、携帯を仕舞う。

千鶴「やっぱり一卵性って性格とか色々似てるんですか?ほらテレビとかでもよく見る

 じゃないですか」

   沙帆、少し表情が曇る。

   遠山、千鶴を肘で小さく小突く。

沙帆「そうですね。そっくりです。顔はもちろん、声も性格も」

   沙帆、唾をのむ。

沙帆「異性の好みも」

   遠山と千鶴、顔を見合わせる。

遠山「異性、ですか」

沙帆「私と詩帆、いつも同じものを好きになるんです。男性もそう。いつも同じ人を好

 きになって、二人でキャーキャー言ってたんです。だけど」

 

〇(回想)公園(夜)

   冬服の長田詩帆(20)と大城優(20)が向かい合って立っている。

詩帆「え、今…なんて…?」

大城「だから、俺と…付き合ってほしいんだ」

詩帆「わ、私と?」

大城「他に誰がいる?」

   詩帆、モジモジとうつむく。

詩帆「さ、沙帆ちゃんとか…」

   大城、首を横に振る。

大城「長田詩帆さん。君が好きです」

   詩帆、泣きそうな笑顔になる。

   その背後、滑り台の陰に立つ沙帆。

   茫然と無表情。

   笑顔の詩帆。

   悲し気にうつむく沙帆。

 

〇もとの桜ビューティークリニック・診察室

   沙帆、拳を握り締める。

沙帆「私と詩帆は一卵性双生児で、両親も間違えるほど顔も声も性格もそっくりです。

 なのに、あの人にとってはそうじゃなかった。詩帆が愛しい人で、私はどうでもいい

 方だった」

   沙帆、うつむいて肩を震わせる。

   沙帆の拳に涙が落ちる。

   遠山、穏やかに沙帆を見つめている。

   千鶴、悲しそう。

沙帆「なんで私じゃないの?同じ顔で同じ声なのに、なんで私じゃダメなの?いつもそ

 んなことばっかり考えてた。鏡を見れば自分の顔が詩帆の顔に思えてきて憎らしく

 て…」

千鶴「長田さん…」

沙帆「なにより、あの子の幸せを素直に喜べない自分に一番腹が立ったんです」

   沙帆、顔を上げる。

沙帆「私の顔を全部、変えてもらえませんか」

   遠山の目が丸くなる。

   沙帆、強い視線で遠山を見ている。

遠山「全部、ですか」

沙帆「詩帆と同じ顔でいることが辛いんです。鏡を見るたびに自分が嫌になる。きっと

 あの人もそんな私の醜い心に気付いてたんでしょうね」

   沙帆、自虐的に笑う。

   遠山、穏やかな表情のまま沙帆を見つめている。

   エントランスから来客を知らせるチャイムが鳴る。

愛親の声「兼親ー!おまたせ、お兄ちゃんが来ましたよー」

   遠山、嫌そうに顔をしかめ立ち上がる。

遠山「あのバカ、本当に来た」

千鶴「どうします?」

遠山「追い返してこい!」

   千鶴、診察室を出ようとする。

   ドアが開いて愛親が顔を出す。

愛親「兼親、ここかい」

遠山「バカ診察中だぞ、入って来るな」

愛親「え、患者さんいたの。ごめんごめん!」     

 

 

※主人公兄弟と患者姉妹、両方書いてみました。

 イメージ的には患者姉妹を中心で書こうと思っていたので、ちょっと課題としては微妙な結果に。

 そうよね、フツウ主人公兄弟の話をメインにするよな…(笑)

 この主人公たちは気に入ったのでどこかで長編にできたらいいな。