おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「男と女」現在地:三角形の一辺

 人 物

高階まゆり(18)高校生
水上雄次(18)野球部
佐藤愛(18)まゆりの親友
顧問(38)野球部顧問
男子(18)男子生徒
〇浅川高校・3年2組教室
   休み時間の教室。
   生徒たちが思い思いに過ごしている。
   高階まゆり(18)と佐藤愛(18)が自席
   で談笑している。
   教室の一角、男子生徒たちの大声で
   盛り上がる声が聞こえる。
愛「うるさ…これだから男子は」
   水上雄次(18)が友人たちと紙をまる
   めたボールで野球して遊んでいる。
   まゆり、チラリと見る。
   水上の満面の笑み。
   まゆり、見つめている。
愛「まゆり。まゆり?聞いてる?」
まゆり「えっあ、ごめんなんだっけ」
愛「もう、ボーっとしてんなよ。眠い?」
まゆり「あはは、まあね」
   紙ボールがまゆりの席に飛んでくる。
水上「おー、ホームラン」
   水上がまゆりの席まで取りに来る。
   紙ボールを拾い上げて笑顔。
水上「悪いね」
まゆり「ちょっと、気を付けてよ危ないで
 しょ」
水上「そんな怒るなよ、悪かったって」
   水上、まゆりの頭を撫でる。
   まゆり、硬直する。
水上「おーし、続きいくぞ、俺バッターな」
   水上、紙ボールを手に友人たちの元
   へ戻っていく。
   まゆりと愛、見送る。
愛「なに、あの軽い態度!バカにしてんの
 かな。ねぇ?まゆり」
   まゆり、撫でられた箇所に触れてボ
   ーっとしている。
愛「まゆり?」
まゆり「えっ、あ、そうだね」
愛「なに、あんたまさか」
まゆり「や、やだな!違うよ」
愛「ふーん…?」
   チャイムが鳴る。
   まゆり、鞄から教科書やノートを取
   り出す。
まゆり「ほら、予鈴だよ!さー授業授業。
 学生の本文は勉強だからね」
   愛、ニヤリと笑いながら席を離れる。
   男子たち、席に戻っていく。
   水上、紙ボールを広げる。
水上「おいコレ俺の課題プリントじゃねえ
 か!」
男子「どうせ提出しないからいいだろ」
水上「するわ!あーシワシワだぞおい」
   男子たち、爆笑。
   水上、席について丁寧にプリントを
   伸ばす。
   まゆり、水上を見て微笑む。

〇同・全景
   チャイムが鳴る。
   校舎の時計は3時30分を指してい
   る。

〇同・グラウンド
   野球部が練習している。
   野球部顧問(38)がバットを構えボー
   ルを持っている。
   水上が構えている。
顧問「じゃあ行くぞ水上!」
水上「お願いします!」
   顧問がノックを始める。
   必死でボールを獲る水上。
顧問「遅いぞ!」
水上「はい!」
   真剣な表情でボールを追う水上。

〇同・3年2組教室
   教室にバットの音や部員たちの掛け
   声が響いている。
   まゆりが窓から外を眺めている。
   窓の奥、水上がノックを受ける姿が
   見える。
   愛が入ってくる。
愛「お待たせーまゆり。帰ろう…」
   まゆり、窓の外を見ている。
   愛、まゆりに近付く。
   まゆりが見ている方を見て納得。
愛「お邪魔かな?」
   まゆり、愛に気付く。
まゆり「あ、愛!何言って…」
愛「あっ」
   まゆり、愛の声で窓の外を見る。
   窓の外、水上が泥だらけで転がって
   いる。
愛「頑張ってるねぇ」
   まゆり、窓に張り付く。

〇同・グラウンド
   水上、起き上がる。
顧問の声「おらーさっさとボール戻せ!」
水上「はい!」
   水上、ボールを投げ、走って戻る。
顧問「休むなよ行くぞ!」
   顧問、再びノックする。
   必死でついていく水上。
   顧問がノックする。
顧問「あっ」
   顧問が打ったボールがあらぬ方向へ
   飛んでいく。
   水上、慌てて追いかける。

〇同・グラウンド脇・噴水
   水上、ボールを獲ろうと手を伸ばし
   てバランスを崩す。
水上「うわっ」
   ボールと共に噴水に頭から飛び込む。

〇同・3年2組教室
   まゆり、窓にへばりついて見ている。
まゆり「あっ落ちた!」
顧問の声「大丈夫か水上ー!」

〇同・グラウンド脇・噴水
   水上、噴水の中立ち上がり顧問へボ
   ールを振って見せる。
顧問の声「もういいから、着替えてこい!」
水上「はい!」
   水上、噴水から出る。

〇同・3年2組教室
   まゆり、窓からずっと見ている。
まゆり「あんなにびしょびしょになっちゃ
 って…」
   愛、机に座ってまゆりを見ている。
愛「行ってきなよ」
まゆり「えっ」
愛「野球部って今マネージャーいないでし
 ょ、あいつ困ってんじゃないの」
   まゆり、迷っている。
愛「チャンスを棒に振る気?」
まゆり「…わかった」
   まゆり、サブバッグを抱えて教室を
   飛び出す。
   愛、笑顔で手を振る。
   ドアが閉まり、愛が真顔になる。

〇同・野球部部室前
   びしょ濡れの水上が走ってくる。
   男子生徒が通る。
男子「水上どうしたービチョビチョじゃん」
水上「ちょっとドジ踏んだ」
男子「あはは、どんまい」
   男子生徒が去っていく。
   すれ違ってまゆりが来る。
まゆり「み、水上」
水上「ん?あれ、高階。なんでまだいるん
 だ?」
   まゆり、サブバッグを抱える。
まゆり「あ、あんたが噴水にダイブするの
 見えたからびしょ濡れっぷりを見に来て
 やったのよ」
水上「あちゃ、見られてたか、はっず」
まゆり「ホントださいんだから。あれくら
 いスパっと獲りなさいよね、普段教室で
 もあれだけ野球やってんだから」
水上「なんだよ、心配してきてくれたんじ
 ゃないの?」
まゆり「誰が心配すんのよ、調子乗らない
 で!」
   まゆり、タオルを水上に投げつける。
   水上の顔にタオルが当たる。
   水上、タオルを見て驚きまゆりを見
   る。
水上「おい…」
   まゆりが走り去っていく。
   水上、タオルを見つめる。
   タオルの隙間から絆創膏が落ちる。
   水上、拾い上げる。
   絆創膏の外袋に「ふぁいと」と書い
   てある。
   水上、自分の頬に触れる。
水上「痛っ」
   擦り傷ができている。
水上「あいつ、気付いて…」
   水上、絆創膏を頬に貼る。
   外袋を、すこし考えてポケットに押
   し込むとタオルで頭を拭きながら部
   室のドアを開ける。

〇同・3年2組教室
   愛、机に座ったまま真顔で黒板を見
   つめている。
   走ってくる足音が聞こえる。
   ドアが開いて笑顔のまゆりが入って
   くる。
まゆり「ただいま!無事渡せたよ私!愛が
 行けって言ってくれたおかげ!」
愛「…そう。よかったね」
まゆり「ありがとね、私、自分だけじゃ絶
 対動けなかったから」
愛「あんたは素直じゃないもんね」

 

※ストレートに青春的な恋愛を描いてみました。

 ちゃんと先生に、愛が好きなのはどっち?って思ってもらえてニヤリ(笑)

 台詞はないけど気付いてもらえたのなら、

 描き方としては悪くなかったということかしら!

 イメージとしては雄次←まゆり←愛のつもりだったので!

 親友の恋路を応援したいような、そうでもないような複雑な思春期の感情…

 伝わるといいなぁ!

 

課題「古痕」その手を繋いで

    人 物
竜田誠也(23)フリーター
常盤淳(33)ひき逃げ犯
尾山孝雄(23)誠也のバイト仲間
緑川詩帆(20)誠也のバイト仲間 
運転手(55)トラックドライバー
店長(31)

〇中古ショップ「キング・オフ」・全景
   蝉が元気に鳴いている。
詩帆の声「お願い、竜田くん」

〇同・男性用控室
   ロッカーが並んでいる。
   尾山孝雄(23)が制服に着替えている。
   その隣で長袖シャツ姿の竜田誠也(23)に
   私服の緑川詩帆(20)が手を合わせている。
詩帆「明後日課題あって、マジで単位ヤバいの。
 バイトしてる場合じゃないんだ。ねえお願い」
誠也「うーん」
尾山「竜田聞いてやることないぞ。お前明日朝
 から別のバイト入ってるって言ってただろ」
詩帆「あんたに関係ないでしょ黙ってて」
尾山「あんたって何だよ先輩だぞこっちは」
誠也「まぁまぁ。(詩帆に)他のバイトもあるか
 ら、全部は出られないかもしれないけどそれ
 で良ければ」
尾山「おい竜田」
詩帆「いいの?やった、じゃあよろしくね!そ
 れじゃ!アタシ帰るわ。おつかれっ!」
   詩帆、鼻歌を歌いながら部屋を出ていく。
詩帆の声「あ、もしもし?アタシ。明日オッケ
 ーになったよ。ねぇマジでイケメンいるの?
 超楽しみなんだけどー」
尾山「あいつ、やっぱり嘘じゃねえか」
   尾山、詩帆を追おうとする。
   誠也、尾山の肩を掴んで止める。
誠也「いいっていいって」
尾山「良くないだろ、緑川にいいように利用さ
 れたんだぞ」
   誠也、着替えを再開する。
誠也「でも用事があってシフト入れないのは事
 実だし。困ってたのは確かだろ?」
尾山「お前この前もそうやってシフト代わって
 たじゃん。掛け持ちばっかでろくに休んでな
 いくせに、まだ休み減らすようなことして」
誠也「困ってる人を助けられるなら俺はそれで
 いいんだよ」
尾山「良くないよ。お前ただでさえあの事故以
 来ちょっと大変なくせに。この前おつりぶち
 まけてただろ。明らかに寝不足のせいだった
 じゃん。無茶しすぎなんだよ」
誠也「いいんだよ、働いて誰かのためになって
 ると気が休まるんだから」
   誠也、ロッカーを閉める。
   半袖の制服の下に長袖の黒いアンダーシ
   ャツを着ている。
誠也「行こう」
   誠也、ドアに向かう。
尾山「あ、ああ」
   尾山、誠也の腕を見ながら駆け寄る。

〇同・廊下
   誠也と尾山が並んで売場に向かっている。
尾山「前から気になってたんだけど」
誠也「なに?」
尾山「それも、事故のせいか」
   尾山、誠也の腕を指す。
   誠也、腕を見て、ああと笑う。
誠也「まあね。ちょっと見せられないし。自分
 でも目に入ると色々辛いからさ」
   尾山、誠也の顔を見る。
   誠也、笑顔で歩いている。
   尾山、目を逸らす。
尾山「犯人、捕まってないんだってな」
誠也「そうなんだよ。早くいい報告を優也の墓
 にしてやりたいんだけどな」
尾山「そうだよな」
誠也「俺たちを無視して走り去ってくあいつの
 特徴覚えてるし、自分で捕まえられりゃ一番
 なのにな。そしたらあいつの首を墓に持って
 いける」
尾山「お前それは」
誠也「冗談」
   誠也、笑顔を見せる。
   尾山、苦笑いを返す。

〇同・店内
   客がそれなりに入っている。

〇同・スタッフカウンター内
   尾山がレジ打ちをしている。忙しそう。
   誠也、レジ奥で買取商品を清掃している。
   買取カウンターに複数の客が待っている。
   尾山、横目で買取カウンターを見て誠也
   を振り返る。
尾山「買取お願いしまーす」
誠也「あ、はい!」
   誠也、カウンターに駆け寄る。

〇同・買取カウンター
   複数の客が並んで待っている。
   誠也、受付している。
   金髪に赤のメッシュが入った目立つドレ
   ッドヘアの常盤淳(33)が列に並んでいる。
誠也「査定が済みましたらお呼び致しますので
 店内でお待ちください」
   順に客が離れていく。
   常盤がカウンターに立ち、漫画の入った
   袋をデスクに乗せる。
   誠也、笑顔で顔を上げる。
誠也「大変お待たせいたしました…」
   誠也、常盤の顔を見て驚いて固まる。
常盤「すんません、受付」
   誠也、我に返り笑顔を作る。
誠也「も、申し訳ございません。それでは…」

〇同・レジ
   尾山、不思議そうに誠也の背中を見てい
   る。

〇同・買取カウンター
   誠也、俯いて右腕をギュッと掴む。
   下を向いたままニヤリと笑う。

〇同・店舗前
   常盤がレシートと小銭を手に出てくる。
   上着のポケットに押し込み歩きだす。

〇道
   常盤が歩いている。
誠也の声「あの」
   常盤が振り返る。
   制服姿の誠也が立っている。
常盤「何スか」
誠也「半年前武藤公園の前で事故起こしました
 よね」
常盤「は?」
誠也「小学生の男の子と手を繋いでいる大人の
 男性に突っ込んで、子供を跳ね飛ばしました
 よね」
常盤「あんた…なにを…」
誠也「一度停車したくせに、降りないでそのま
 ま逃げていったよな?そのせいで倒れていた
 子供をもう一度轢いた!」
   常盤、後ずさりする。
   誠也、アンダーシャツをまくり上げて大
   きな手術痕を見せる。
誠也「アンタに撥ねられて負った傷だ。繋いで
 いたはずの優也は飛ばされていた!あんたの
 そのド派手な頭!忘れるもんか!」
   常盤、慌てて踵を返し走り出す。
誠也「待て!」
   誠也、追いかける。

〇中古ショップ「キング・オフ」・男性用控室
   尾山がロッカーにもたれて携帯をいじっ
   ている。
   店長が顔を出す。
店長「竜田知らないか」
尾山「え、見てないですけど」
店長「おかしいな休憩所にもいないんだ」
   店長、去っていく。
   尾山、しばらく考えてハッとして控室を
   出ていく。

〇道
   常盤、必死に逃げていく。
   誠也、鬼の形相で追いかける。
   常盤、何度も振り返りながら走る。

〇道・交差点
   常盤、交差点に飛び出す。
   トラックが走ってくる。
   常盤、トラックにはねられる。
   誠也、驚いて立ち止まる。
   常盤が地面に転がる。
   トラックの運転手が降りてきて常盤に近
   付く。
運転手「お、おいあんた大丈夫か!き、救急車!」
   運転手、慌てて走り去る。
   誠也、茫然と見ている。
   傷だらけの常盤、誠也を見る。
常盤「たす…助けてくれ…」
   誠也、常盤を見る。
常盤「助けくれ…頼む、痛いんだ…」
   常盤、傷だらけの手を伸ばす。
   誠也、唇を噛み、右腕をギュッと掴む。
   常盤、泣きそうな顔で手を伸ばす。
常盤「お願いだ…お願い、します…」
誠也「なんだよそれ…なんだよ…!」
   誠也、右腕を掴んでうつむく。
   常盤、呻いている。
   誠也、顔を上げる。
誠也「優也、すまん」
   誠也、制服のエプロンを取って常盤に近
   付く。
   エプロンで常盤に止血を施す。
   常盤、誠也を見る。
常盤「ありがとう…」
誠也「許すつもりはないからな。ちゃんと罰は
 受けさせてやる。その為に今は助けるだけだ」
   常盤、目を閉じる。
   運転手が走ってくる。
運転手「あと少しで到着するからな!しばらく
 頑張ってくれ!」
誠也「あの時もこうしてくれてたら…」
   誠也、エプロンの裾を握る。

 

※この課題には悩まされました…

 自分的にはなかなかドラマチックなシーンを書けたのではないかと

思います…(笑)

 シーン切り取りってスキなシーンだけ書けるのが楽しいです。

課題「雨」ハートに包帯

    人 物

横川のどか(21)大学生

央地俊哉(21)のどかの高校の同級生

松尾ゆかり(20)央地の同期

 

 

 

〇遊園地・全景

 

〇同・コーヒーカップ

   コーヒーカップが回っている。

   横川のどか(21)と央地俊哉(21)が乗って

   いる。   

   のどかは地味な色合いのワンピースに黒

   髪のストレートロング。

   央地は明るい茶髪に沢山のアクセサリー

   を身に着けた派手な姿。

   央地、笑顔で回している。

   のどか、ハンドルにしがみついている。

 

〇同・ジェットコースター

   ジェットコースターが動いている。

   両手をあげて楽しんでいる央地と悲鳴を

   上げ続けているのどか。

のどか「無理!無理!もうやめて~!」

   央地、隣ののどかを見て嬉しそうに笑う。

 

〇同・ジェットコースター乗り降り場

   車両から飛び降りる央地。

   長い髪も乱れ、ぐったりして動けないの

   どか。

   央地、のどかに手を差し出す。

   のどか、央地を睨みつける。

   央地、笑顔で手をのどかの前に突き出す。

央地「ほら、手。立たないの?」

   のどか、悔しそうに手を取る。

のどか「貸しにしておきます」

央地「気にしなくていいのにな」

   央地、のどかをコースターから降ろして

   やる。

のどか「あなたに頼りたくないんです」

央地「俺は頼ってほしいのになぁ」

   央地、笑う。

   のどか、鼻を鳴らしてそっぽを向く。

 

〇同・ベンチ

   のどかと央地が並んで座りドリンクを飲

   んでいる。

央地「髪、乱れちゃったね」

   央地、のどかの髪を優しく撫でる。

   のどか、大人しく撫でられていたがハッ

   と気付いて慌てて距離を取る。

のどか「なっ何をするんですか!」

央地「あ、残念」

   のどか、央地に背を向けて座り直しドリ

   ンクを飲む。

   央地、笑顔でのどかの傍に移動する。

央地「でも今日来てくれたってことは、ちょっ

 とは脈ありって思ってもいいんだろ?」

のどか「無いです。ホントに」

央地「まだ俺のこと嫌い?」

   央地、のどかの手を握ろうとする。

   のどか、それを避けるように立ち上がる。

のどか「…当り前です」

   央地、のどかを見つめる。

   のどか、目を逸らす。

のどか「お手洗い行ってきます」

   のどか、走っていく。

   央地、笑顔で見ている。

   走り去るのどかの背中を松尾ゆかり(20)

   が遠くから見ている。

   央地を振り返り、のどかの後を追いかけ

   る。

 

〇同・建物の前

   のどか、ハンカチを鞄に仕舞いながら建

   物から出てくる。

   のどか、空を見上げる。

   曇っている。

   ゆかりが近付く。

ゆかり「あの」

のどか「はい?」

   のどか、振り返る。

ゆかり「俊哉と付き合ってんの?あんた」

   のどか、眉を顰める。

のどか「なんですか急に」

ゆかり「アタシ俊哉の元カノ」

のどか「はぁ…。央地君と付き合うつもりはな

 いですから、よりを戻したかったらご自由に

 どうぞ。ずっとなれなれしく付きまとわれて

 こっちは迷惑しているくらいなので」

ゆかり「彼に言い寄られて迷惑してるって言い

 たげね」

のどか「そうですけど?」

   ゆかり、バカにしたように笑う。

ゆかり「俊哉ってばホントいい性格してるわ」

のどか「どういう意味ですか?」

ゆかり「あいつが結構なパリピだって知ってる

 でしょ」

のどか「そうですね、あの身なりですし」

ゆかり「楽しいこと大好きでアタシもしょっち

 ゅうあちこち一緒に行って遊んでたけどさ。

 あいつはそういう遊びやすい女が好みなの。

 どっちかっていうとアンタ正反対よね」

のどか「私もそう思います。だから迷惑してる

 んです」

ゆかり「わかんない?だから本当にアンタのこ

 と好きになってるわけがないってこと」

   ゆかり、意地悪な笑みを浮かべる。

ゆかり「前に小林と話してたの聞いたよ。落と

 せるか落とせないかとか、賭けてたみたい。

 あれアンタのことだったんじゃないの」

   のどか、目を見開く。

ゆかり「アイツに好かれてるって勘違いしてる

 の可哀想だったから忠告しといてあげるわ」

   ポツポツと雨が降り出す。

   ゆかり、スマホを見る。

ゆかり「あ、いけない時間だ。じゃあね、さっ

 さと俊哉から離れた方がアンタのためよ」

   ゆかり、手を振って走り去っていく。

   のどかから見えないところで満足そうな

   笑みを浮かべる。

   のどか、茫然と立っている。

 

〇同・全景

   雨足が強くなってくる。

 

〇同・建物の前

   雨が降っている。

   小走りで建物に入っていく客たち。

   央地、ジャケットで頭を守りながら走っ

   てくる。

   辺りを見回してのどかを見つける。

   のどか、濡れたまま立ち尽くしている。

央地「やっと見つけた」

   央地、駆け寄る。

央地「何してたんだよ、遅いから探しに来たよ」

   のどか、反応しない。

   央地、のどかを覗き込む。

央地「横川?」

   のどか、央地を見る。

央地「中入ろう。濡れるよ…もう結構濡れてる

 けど」

   央地、のどかの手を引いて歩き出そうと

   する。

   のどか、手を振り払う。

   央地、驚いてのどかを見る。

   のどか、泣きそうな顔で央地を睨みつけ

   央地を平手打ちする。

   央地、茫然とのどかを見る。

のどか「さよなら」

   のどか、走り去る。

央地「おい、横川!」

   央地、追いかけようとするが建物に入ろ

   うとする客に阻まれてすぐに追いかけら

   れない。

   のどかを見失い、焦って周囲を見回す。

 

〇同・トイレ個室内

   のどか、個室の壁にもたれてハンカチで

   髪や手を拭う。

   ハンカチで拭った手の上にまた水滴が落

   ちる。

   のどか、自分の頬に触れ、涙に気付く。

   手で何度も涙を拭う。

 

〇住宅街・バス停(夜)

   バスが停まる。

   ビニール傘を持ったのどかが降りてくる。

   傘を差して歩き始めるのどか。

   スマホを取り出す。

   央地からの着信とメッセージでいっぱい

   の画面。

   のどか、スマホを仕舞う。

 

〇同・のどかの家の前(夜)

   のどかが歩いてくる。

   家の前、塀にもたれかかる央地の影があ

   る。

   影の正体は見えない。

   のどか、足を止めて影をジッと見る。

のどか「えっ」

   央地が立ち上がり外灯の下に立つ。

   びしょ濡れの央地の姿が照らされる。

   央地、ホッとした表情で微笑む。

央地「おかえり」

のどか「央地くん。なんでここに?」

   のどか、傘を差しかけようとして止める。

   足早に央地の前をすり抜けて玄関に向か

   う。

   央地、のどかの背中に話しかける。

央地「なあ、俺何かしたか?」

   のどか、ドアノブに手をかけたまま止ま

   る。

のどか「自分の胸に聞いてみたらどうですか」

央地「もう聞いたよ、でもわからないから来た

 んだ。お前と再会してからこっち、お前を傷

 つけるようなことはやってないつもりだ」

のどか「傷つかないと思ってるんだったら人を

 馬鹿にしすぎですよ」

央地「何の話だよ」

のどか「元カノって人が教えてくれました。私

 を落とせるか賭けてるって。小林君と」

央地「は?」

のどか「さよなら。賭けはあなたの負けです」

   のどか、傘を央地に投げつけて家の中に

   入る。

 

 

 

※アップするものをため込んでました…!

ちゃんと提出はしてましたよ!

課題「雪」赤き巣立ちの時

    人 物

街尾俊太(21) 学生

街尾襟子(45) 俊太の母

辻野美帆(27) 塾講師

時田(35) 塾講師 

 

〇線路

   雪が降る中、新幹線が走っていく。

 

〇新幹線車内

   旅行客でにぎわっている。

   街尾俊太(21)、街尾襟子(45)が並んで座っ

   ている。

   俊太、雪が降る窓の外を見ている。

   襟子、文庫本を読んでいる。

   襟子、俊太を見て微笑む。

襟子「雪を見てると思い出すわね。俊ちゃん覚

 えてる?あの時のこと」

   俊太、窓から目を離さない。

俊太「ああ…くっそ寒かったことだけ覚えてる」

襟子「そうねぇ寒かったわ」

 

〇(回想)田舎道

   雪が積もり吹雪く中、俊太少年(5)と襟子

   (29)が手を繋いで歩いている。

   襟子の手には大きなボストンバッグ。

俊太の声「わけわからず連れていかれてさ」

   襟子、真剣な表情で早足で歩く。

   俊太少年、襟子を見上げながら小走りで

   ついていく。

 

〇(もとの)新幹線車内

襟子「最初は大変だったけど頑張って良かった

 わ。貴方もこんなに大きくなって」

   襟子、俊太の肩に触れる。

   俊太、席を立つ。

襟子「どこに行くの?」

俊太「トイレだよ」

襟子「場所わかる?」

俊太「案内板見るよ」

   俊太、席を離れる。

   襟子、心配そうに俊太の背中を見送る。

 

〇同・トイレ

   トイレに入ってくる俊太。

   扉に背中を預けて一息つく。

   ズボンのポケットから折り畳みナイフを

   取り出しギュッと握り締める。

俊太「…よし」

   ポケットにナイフを戻す。

 

〇東塔進学スクール・全景

   雪が降っている。

 

〇同・講師室

   辻野美帆(27)が机に向かい採点している。

   机の上にはかなりの量の紙束。

   美帆、途中で眉間をマッサージしながら

   溜息を吐く。

   スマホにLINEが届く。

   美帆、サッとスマホを手に取る。

   LINEの相手は俊太。

俊太のLINE「母さんとの旅行つまらん。や

 ることない」

   嫌そうな顔のスタンプ。

   美帆、微笑んで返信を打つ。

美帆のLINE「そんなこと言わないの。最後

 の親孝行でしょ?」

   怒った顔のスタンプ。

   俊太から不満そうな顔のスタンプ。

   美帆、微笑む。

   ドアが開く音がする。

   美帆、慌ててスマホを置いて採点を再開

   する。

   時田(35)が入ってくる。

時田「辻野先生、いらっしゃったんですか」

美帆「ええ。採点が終わらなくて」

時田「この時期は大変ですよね、本当に。お疲

 れ様です」

   時田、美帆の机に近づく。

   答案を一枚手に取る。

   俊太の答案。83点。

時田「へえ、彼、随分上がったんじゃないです

 か?成績」

美帆「ええ。B判定にまで上がりましたし」

時田「入ってきた頃は何回浪人する気なんだろ

 うって思うような志望校でしたけどね」

 

〇(回想)同・面接室

   襟子と俊太が並んで座っている。

襟子「なんとしてもあの学校に入学させたいん

 です。歯科医になってあいつらを見返すため

 には、あそこじゃなくてはダメなんです」

   熱弁する襟子の横でつまらなそうな表情

   の俊太。

襟子「ねえ?俊ちゃん。お母さんがちゃんとサ

 ポートしてあげるから頑張ろうね」

   時田、愛想笑いしながら聞いている。

 

〇(もとの)同・講師室

   美帆、採点の手を止める。

   時田、笑って答案を束に戻す。

時田「辻野先生の指導のおかげかな」

美帆「ありがとうございます」

時田「そうだ、お昼一緒しませんか?」

   時田、美帆の肩に触れようとする。

   美帆、それを躱すように時田に向き直る。

美帆「すみません、授業の準備が多くて」

時田「ああ…そうですか…」

   美帆、微笑む。

   時田、笑い返す。

 

〇道路

   雪が降り積もる中を路線バスが走ってい

   く。

 

〇バス車内

   俊太と襟子が並んで席に座っている。

   襟子、居眠りしている。

 

〇道路

   田舎の雪道を走っている。

 

〇バス車内

   俊太、襟子の肩を揺らす。

俊太「母さん!やばい寝過ごしたかも!」

   襟子、驚いて目を開ける。

襟子「え!?」

   襟子、急いで降車ブザーを鳴らし立ち上

   がる。

襟子「すみません降ります!俊ちゃん、行くわ

 よ」

   襟子、荷物を持って降車口へ向かう。

   俊太、ゆっくりと立ち上がりついていく。

 

〇農道・バス停

   路線バスが通過していく。   

   襟子と俊太が降り立つ。

   襟子、周囲を見回す。

襟子「あら?こんなところだったかしら」

   俊太、バス停の表示板を見る。

俊太「あー、ごめん間違えたかも」

襟子「ええ?」

   襟子、振り返り俊太に近づく。

襟子「やだ、バス停一つ間違えてるわよ!次の

 バス停だったのに」

俊太「そうだった?ごめん間違えた。でもバス

 停一つ分くらいなら歩けるよね」

襟子「そうね…」

   襟子、冷たい風に身震いする。

襟子「それじゃあ早く行きましょう。このまま

 ここに突っ立っていても仕方ないし」

   襟子、歩き始める。

   俊太、ゆっくりと歩き始める。

   ズボンのポケットに手を入れる。

 

〇農道

   雪道を襟子の後ろを俊太が付いて歩いて

   いる。

   俊太、スマホを操作してLINEする。

 

〇東塔進学スクール・講師室

   美帆、スマホを手に取る。

俊太のLINE「そろそろ」

   美帆、真剣なまなざしで見つめる。

 

〇農道

   襟子、疲れてきている様子。

襟子「思ったよりバス停の間開いてるのね…ま

 だ着かないのかしら」

   雪が深くうまく歩けない。

   俊太、後ろでズボンのポケットに手を入

   れる。

   襟子の背中に少しずつ近づく。

襟子「俊ちゃん、大丈夫?付いてきてる?」

   襟子、立ち止まって振り返る。

襟子「俊ちゃん?」

   俊太、襟子にナイフを構え体当たりする。

襟子「うっ!?」

   ナイフが襟子の腹に刺さる。

   襟子、目を見開いて俊太を見る。

俊太「母さん、ごめん」

   俊太、襟子の肩を抱いて抱きしめるよう

   に深く刺す。

   襟子、うめく。

   足元の雪に赤い血がぽたぽたと落ちる。

襟子「俊ちゃん…」

   襟子、俊太の腕にすがるがゆっくりと膝

   をつく。

   俊太、荒い息を吐きながら襟子を見つめ

   ている。

   襟子、座り込み茫然と俊太を見上げる。

   俊太、膝をついて襟子に目線を合わせる。

   荒い息を吐きながら、涙をこぼす。

俊太「母さん…ごめん…さよなら…」

   襟子、俊太を見て力なく微笑む。

   襟子、手を伸ばして俊太の頬に触れる。

   俊太、泣きながら襟子を見ている。

襟子「ごめんね…俊ちゃん…」

   襟子、微笑んだまま仰向けに倒れる。

   背中から血が広がる。

   俊太、涙を拭いスマホを取り出してLI

   NEを打つ。

俊太のLINE「終わった」

美帆のLINE「おつかれさま」

   俊太、深い溜息を付き目を閉じる。 

 

 

※雪、と聞いて真っ白な雪に赤い血が…という情景が浮かぶ私は

2時間サスペンス脳ですね(笑)

 

LINEの文面の書き方、回想の使い方等…課題も多い作品でした。 

課題「葬式」誰がための涙

    人 物

 

新堂勇気(18) 高校生

古館愛智(18) 勇気の親友・故人

古館宝子(54) 勇気の母

古館望(16)  勇気の弟・高校生

古館舞子(75) 勇気の祖母

 

〇葬儀場・全景

   雨が降っている。

   入口に「古館家葬儀」の看板。

 

〇同・会場

   花がたくさんの祭壇。

   中心には笑顔の古館愛智(18)の遺影。

   僧侶が経を唱えている。

 

〇同・入口

   タクシーが停まる。

   後部座席から制服姿の新堂勇気(18)が降

   りてくる。

勇気「ありがとうございました…え、おつり?

 ああ、すみません…」

   タクシーに一度戻って再び降りてくる。

   駆け足で建物内に入る。

 

〇同・ロビー

   受付に職員の女性が立っている。

   勇気、鞄から袱紗を取り出して慣れない

   手つきで開く。

   香典袋を持って受付に立つ。

   受付の女性が頭を下げる。

   勇気、慌てて頭を下げ、香典袋を差し出

   す。

   受付の女性、受け取る。

受付「こちらにご記帳をお願いいたします」

勇気「は、はい」

   勇気、筆ペンをとり芳名帳に記帳する。

   他の名前を見る。

   下手な字や丸文字で書かれた名前がたく

   さん並ぶ。

勇気「…ふうん」

   勇気、会場への扉をそっと開ける。

 

〇同・会場

   祭壇の前、僧侶が経を読んでいる。

   勇気、最後列の端に座る。

   辺りを見回す。

   参列者の中からすすり泣く声が漏れ聞こ

   える。

   親族席、着物を着た古館宝子(54)が焦点

   の合わない目で宙を見たまま座っている。

   親族席後ろ、制服姿の古館望(16)がタオ

   ルを握り締めて泣いている。

   隣で古館舞子(75)が望の肩を撫でている。

   勇気、顎を撫でながら見ている。

 

〇(回想)A高校・屋上

  T・数週間前

愛智がフェンスに寄りかかって下のグラウ

ンドを見ている。

勇気、その隣でフェンスに背中を預けて座

スマホゲームをしている。

 

〇同・グラウンド

野球部が練習している。

端で陸上部が高跳びや幅跳びの練習をして

いる。

トラックをサッカー部がランニングしてい

る。

 

〇同・屋上

愛智、下を見ている。

愛智「楽しそうだよな、皆。青春してるってい

 うか」

勇気「そうか?暑い中運動ご苦労さんとしか思

 わんけど」

愛智「お前はそういう奴だよ。だからつるんで

 るんだけどさ」

   愛智、勇気を見て笑う。

   勇気、スマホから目を離さない。

   愛智、真顔になってまたフェンスに寄り

   かかる。

愛智「なぁ」

勇気「んー」

愛智「俺さぁ、死のうと思うんだけど」

勇気「ふーん…んん?」

   勇気、スマホを触る指が止まる。

   愛智を見上げる。

   愛智、勇気を見て笑顔になる。

愛智「やっとこっち見た」

   勇気、顔をしかめてまたスマホを触る。

勇気「冗談かよ」

愛智「いやいや冗談じゃないって。本気。本気

 の本気で言ってる。俺死のうと思う」

   勇気、溜息を吐いてスマホをしまう。

勇気「なんで」

愛智「理由は色々あるけど」

   愛智、空を見る。

愛智「俺が死んだら心から泣いてくれる人って

 いるのかなって」

 

〇(もとの)葬儀場・ロビー

   会場から参列者が続々と出てくる。

   制服姿の高校生が多数。

   全員涙を流し悲しんでいる。

   勇気、最後に会場から出てくる。

   自販機でジュースを買って壁に寄りかか

   り参列者を眺めている。

   宝子が勇気に気付き、近付いてくる。

宝子「あなた、新堂さんよね?愛智のお友達の」

   勇気、姿勢を正して頭を下げる。

勇気「アイチとはよくつるんでました。えっと、

 この度は…ご愁傷様です」

   宝子、頭を下げる。

宝子「仲良くしてくださっていたって、担任の

 深川先生からもうかがっています。本当にあ

 りがとうね…」

   宝子、ハンカチを握りしめ泣き出す。

勇気「…いえ」

   勇気、顎を撫でる。

宝子「今日もあんなにたくさんのお友達が愛智

 のために集まってくれて…あの子は皆さんに

 愛されていたとわかって…」

勇気「それは…どうなんですかねぇ」

   宝子、顔を上げる。

勇気「あの、僕はそろそろ失礼します」

   勇気、会釈して立ち去ろうとする。

   宝子、勇気の腕を掴む。

宝子「どういう意味ですか?」

勇気「いやあの」

宝子「あの子は、愛されていなかったと言うん

 ですか!?」

勇気「えっとなんというか」

宝子「そういえばあなた、他のお友達があんな

 に泣いてくださっていたのに、あなたは涙一

 つ見せていないのね。愛智のことを悲しんで

 いないのね?どうして?一番のお友達だった

 んでしょう?どうして?」

   宝子、勇気に掴みかかる。

   勇気、対応に困りされるがまま。

望「母さん?何やってるの」

   望が駆け寄り宝子を勇気からはがそうと

   する。

   宝子、必死に抵抗する。

宝子「どうしてあなたは悲しんでいないの?う

 ちの子が死んだのに悲しくないの!?ね

 え!」

   宝子、勇気の胸ぐらを掴む。

望「やめろってば!」

   望、宝子を強引に勇気から引きはがす。

   勇気、真顔で宝子を見つめる。

   望、宝子を抑えながら勇気を見る。

望「すみません、母が取り乱して…」

勇気「僕も悲しいです」

   宝子が勇気を睨みつける。

勇気「涙が出なくても悲しい時はあります。

 逆に、悲しくなくても涙が出せることもあり

 ますよね」

   勇気、宝子をジッと見る。

宝子「なによ…何が言いたいのよ」

勇気「あなたは悲しくないくせにそうやって涙

 を流して、悲しいフリが上手にできるんです

 ね」

   宝子、絶句。

望「ちょっとあんた、なんてこと言うんだ」

勇気「これからは思う存分可愛がれてよかった

 ですね。…ああ、普段から思う存分可愛がっ

 てたんでしたっけ」

望「何を言ってるんだあんた…」

   宝子、唇を震わせている。

   勇気、深々と頭を下げる。

勇気「失礼します」

   勇気、踵を返し早足で会場から出ていく。

   その背中を見送る望と、放心状態の宝子。

   宝子、膝から崩れ落ちる。

望「か、母さん」

   望、慌てて支える。

   宝子、大声で泣き出す。

 

〇同・入口

   雨が降っている。

   走って出てきた勇気、足を止める。

   傘は持っていない。

   勇気、小さくため息をついて外へ歩き出

   す。

 

〇同・敷地

   雨が降っている。

   びしょ濡れで歩いている勇気。

愛智の声「俺が死んだら心から泣いてくれる人

 っているのかな」

   傘を差している参列者の高校生の集団の

   横をすり抜けていく。

   高校生たちは笑っておしゃべりしている。

   勇気、それを横目で見ながら歩いていく。

   勇気、唇を噛みしめ、涙を堪えきれなく

   なって下を向いて泣きながら歩き続ける。

 

〇(回想)A高校・屋上

   愛智、スマホをいじる勇気の隣にしゃが

   みこみ顔を見てくる。

愛智「お前だけは心から泣いてくれるだろ?」

   勇気、チラリと愛智を見てすぐにスマホ

   に視線を戻す。

勇気「どうだかな」

愛智「そういう奴だよ、お前は」

   愛智、苦笑い

 

※元ネタは私が学生の頃、演劇部の文化祭公演でワンシチュエーションものとして

書いていたものです。

(屋上のシーンがそれ)

もう詳細は覚えてないんですが、台詞にデヴィ夫人は若い頃超美人だったとか、井川遥最高とか…まぁくっだらない男子っぽい会話を入れてたことだけは覚えてます(笑)

 

課題「結婚式」大安吉日

    人 物

西友紀(27)ウエディングプランナー

数原翔子(25)友紀が担当する新婦

数原真治(25)友紀が担当する新郎

久我博紀(30)友紀の婚約者

 

 

 

〇結婚式場「リング」・全景

   真っ白な壁の建物。

   奥にチャペルの鐘が見えている。

友紀の声「とうとう来月に迫りましたね!」

 

〇同・応接室

   黒のパンツスーツ姿の中西友紀(27)と、

   女性らしいワンピース姿の数原翔子(25)

   が机を挟んで向かい合って座っている。

   机の上には手作りのウェルカムボードや

   ウェルカムドールなど、飾りが山のよう

   に積んである。

   友紀、バインダーに挟んだ資料にメモを

   書き込んでいる。

翔子「あと一ケ月なんて全然実感ないです。今

 になって、ホントに私結婚するの?って思っ

 ちゃう」

友紀「皆さんそんなものみたいですよ。

 これで全部でよろしいですか?沢山あるので

 漏れがないように気を付けますね」

翔子「よろしくお願いします!作っているうち

 にどんどん楽しくなっちゃって…気が付いた

 らこれだけになっちゃいました」

友紀「それだけ楽しみだということですね!素

 敵です」

   友紀、バインダーを寄せると立ち上がり

   大きい紙袋に飾りを一つずつ片付けてい 

   く。

翔子「真治くん、式のこと考えてたら緊張しす

 ぎてお腹痛くなってきたって、午後から病院

 を早退しようとしたんですよ。ホント豆腐メ

 ンタルなんだから困っちゃう。

 ドクター呼んで胃薬処方してもらって、その

 まま働いてもらっちゃいましたけど。いまか

 らコレじゃあ本番がちょっと不安」

友紀「病院勤務で早退は難しいですよねぇ、す

 ぐに診察してもらえちゃって」

翔子「そうそう。仮病かどうかもすぐバレちゃ

 いますよ。真治くんには今から逃げるなって

 お説教しときました」

友紀「真治さんも、こんな頼もしい奥様がいら

 っしゃるんだから安心して構えてくださった

 らいいんですけどね」

翔子「ホントにそう思ってます?鬼嫁だとか思

 ってません?」

友紀「まさか」

   友紀、笑って紙袋に飾りを仕舞う。

   友紀の左手薬指に石の付いた指輪が光る。

   翔子、指輪に気付いて立ち上がる。

翔子「中西さん!その指輪!」

中西「えっ?ああ…これですか?すみません」

   友紀、指輪を外そうとする。

   翔子、友紀に駆け寄って左手を握る。

翔子「やだ、隠さないでくださいよ!これ、婚

 約指輪じゃないですか?そうですよね?だっ

 て結構石大きいし!」

   友紀、恥ずかしそうに笑う。

友紀「ええ…まぁ…」

翔子「前にお話してた彼氏さんですよね?キャ

 ーおめでとうございますー!」

友紀「ふふ、ありがとうございます」

翔子「いつプロポーズされたんですか?なんて

 言われたんです?挙式の予定は?」

友紀「ちょっと翔子さん…落ち着いてください」

翔子「あ、ごめんなさい。中西さんはずっと私

 たちの式のために力を貸してくれてた方だか

 ら、幸せなお話聞いたらなんかすごく興奮し

 ちゃって」

   翔子、椅子に戻る。

   友紀、微笑む。

友紀「私のことは、翔子さんご夫婦の挙式が無

 事に終わってから、ゆっくりお話しますね」

翔子「じゃあまだ一ケ月も先ですか?長いなぁ」

友紀「楽しみが増えたと思ってくだされば」

翔子「ふふ、そうですね。次は中西さんののろ

 け話をたくさん聞き出しちゃいますから」

友紀「わぁ怖いです」

   友紀と翔子、楽しそうに笑いあう。

 

〇友紀の家(夜)

   真っ暗な部屋に友紀が帰ってくる。

   部屋の電気を点けるとソファの上に鞄と

   携帯を放り投げる。

   棚の上、久我博紀(30)と二人で写った写

   真がたくさん飾られている。その中心に

   リングケース。

   友紀、指輪を外して棚の上のリングケー

   スに戻す。

友紀「ただいま、ヒロくん」

   友紀、鼻歌を歌いながらスーツのジャケ

   ットを脱ぎつつ洗面所へ歩いていく。 

   ソファの上、携帯が鳴りだす。

   友紀、慌てて戻ってくる。

友紀「はいはいはい…」

   携帯を取り、ソファに座る。

友紀「もしもし、ヒロくん?どしたの?」

久我の声「友紀…あのさ、お前に伝えたいこと

 があって…」

友紀「うん。なに?」

   友紀の表情が固くなる。

   携帯が手から滑り落ちる。

   ソファの下に転がる携帯。

久我の声「それで…友紀、聞いてる?もしも

 し?」

   友紀、ソファの上で動かない。

   壁にカレンダーが貼ってある。

   ある日に印が付いている。

   「数原様挙式当日」と「ヒロくんと3周

   年」の文字。

   ソファの下で携帯から久我の声が漏れ聞

   こえる。

久我の声「君には悪いと思ってる。だけど俺だ

 って生半可な気持ちで言ってるんじゃないん

 だ。だから…」

   久我の声を聞きながら、涙をこぼす友紀。

 

〇結婚式場「リング」・全景

   入口に翔子が作ったウェルカムボードが

   飾られている。

 

〇同・ロビー

   職員たちが受付の飾りつけをしている。

   友紀、バインダーを確認しながら指示し

   ている。

   翔子と数原真治(25)が入ってくる。

   翔子、指示している友紀の背中を見つけ

   笑顔で声をかける。

翔子「中西さん!」

   友紀、一瞬表情が強張る。

   一息吐いて笑顔を作り振り返る。

友紀「翔子さん、真治さん」

   翔子が手を振り、真治が会釈する。

   友紀、駆け寄って頭を下げる。

友紀「この度は真におめでとうございます」

真治「ありがとうございます。今日はお世話に

 なります」

翔子「今日はすっごく楽しみにしてました!中

 西さん、よろしくお願いしますね」

友紀「はい、おまかせください。それじゃ順に

 控室の方へご案内します。翔子さん、こちら

 へどうぞ」

翔子「はい」

   友紀、先頭に立って翔子を連れて控室へ

   向かう。

 

〇同・新婦控室

   広々とした控室。

   奥にウエディングドレスがかけられてい

   る。

   扉を開けた友紀が入ってくる。

   ドレスをチラリと見てすぐに目を逸らし

   翔子を振り返る。

友紀「こちらへどうぞ。衣装担当を呼んでまい

 りますので、しばらくお待ちいただけますか」

翔子「はーい」

   翔子、中へ入りドレスを見ると嬉しそう

   に笑いながらソファに座る。

   友紀、会釈して出ていこうとする。

友紀「それでは私はこれで…」

翔子「あ、待って中西さん」

   翔子、携帯を持って友紀に駆け寄る。

翔子「一緒に写真撮りましょう!」

友紀「え、でも」

翔子「いいじゃないですか~ホラホラ撮るよ」

   翔子、友紀に近付いて携帯を構える。

   友紀、苦笑しつつポーズを作る。

   シャッター音。

   翔子、携帯を見て満足。

翔子「うん、ありがとう!絶対中西さんと写真

 撮ろうと思ってたのよね。大好きな担当さん

 だもの」

友紀「ありがとうございます」

   友紀、頭を下げる。

   翔子、友紀を見て目を丸くする。

翔子「あれ、中西さん今日は指輪してないんで

 すね?」

   友紀、とっさに左手を隠して笑顔を作る。

友紀「え、ええ…。今日の主役は翔子様と真治

 様ですから。華美な装飾は身に着けないよう

 にしてるんです」

翔子「そうなんですかぁ。もう一度見たかった

 のにな、あの婚約指輪」

友紀「すみません。それでは、担当を呼んでま

 いりますね」

翔子「はーい」

   翔子、手を振る。

   友紀、笑顔で部屋を出ていく。

 

〇同・新婦控室前

   友紀、部屋から出てきてドアを閉めると

   ドアにもたれる。

友紀「はぁ…」

   友紀、左手を見る。

   薬指を撫でる。

久我の声「婚約をなかったことにしてほしい」

   拳を握り、壁を殴ろうとするが寸前で止

   める。

   目を閉じて深呼吸し手から目を開ける。

友紀「今日は、何も考えない」

   友紀、両頬を叩いてから歩き出す。

 

※本音と建て前を書きましょう…といった感じの課題でしたので

顔で笑って心で泣いて…を表現してみました。

 

 

 

 

課題「不安」鬼っ子ロミオ

    人 物

 

 

ススキ(12)鬼の子供

町谷みこと(11)人間の少女

ホオヅキ(27)ススキの母

レンゲ(享年27)ススキの父

町谷とおる(33)みことの父

 

〇ススキの家・全景

   森の奥、小さな一軒家。

   物干し台があり洗濯ものが干してある。

   ホオヅキ(27)がカゴを持って家から

   出てくる。

   洗濯ものを取り込み始める。

 

〇森の中

   ススキ(12)が道の端に座り込んでい

   る。

   泥だらけになった、ピンク色の子供用の

   スニーカーが落ちている。

   拾い上げ泥を払う。名前が書いてある。

ススキ「ま…ち…や…み…こ…と…」

   ススキ、スニーカーを手に立ち上がると

   走っていく。

 

〇ススキの家・全景

   ホオヅキが洗濯ものを取り込んでいる。

   ススキが走ってくる。

ススキ「母ちゃん!」

ホオヅキ「あら、おかえりススキ」

 

〇同・物干し場

   ススキ、ホオヅキに駆け寄る。

ススキ「母ちゃん、落とし物見つけた」

ホオヅキ「うん?」

   ホオヅキ、取り込む手を止めてススキを

   振り返る。

   ススキ、スニーカーを差し出す。

ススキ「これ。名前が書いてある」

   ホオヅキ、スニーカーを取り眺める。

   名前を見つけて顔を歪める。

ホオヅキ「これ、人間の持ち物じゃない!」

   ホオヅキ、スニーカーを捨てる。

   ススキ、慌てて拾う。

ススキ「ダメだよ捨てちゃ」

ホオヅキ「そんなものを持ってくるんじゃあり

 ません!今すぐ元あった場所へ捨てておい

 で」

ススキ「でも落とした人困ってるかも」

ホオヅキ「関係ない。いい?これは人間の持ち

 物なの。私たち鬼が関わってはいけない生き

 物のものなの。元の所に戻して、なかったこ

 とにするのが一番平和なのよ」 

ススキ「でも…」

   ホオヅキ、膝をついてススキに目を合わ

   せる。

ホオヅキ「先生にも教わったでしょう。人間は

 自分たち以外の生き物を見つけたらすぐに襲

 い掛かってくる習性があるの。今までに何人

 の仲間が人間に殺されてきたことか」

   ススキ、スニーカーに視線を落とす。

 

〇同・仏間

   仏壇にレンゲの遺影が飾ってある。

   その前には煤けた鬼の角。

ホオヅキの声「父ちゃんのこと、忘れちゃった

 の?」

 

〇同・物干し場

   ススキ、唇を噛んで首を横に振る。

ホオヅキ「ススキ。母ちゃんは意地悪で言って

 るんじゃないの。危険だから言ってるの。わ

 かる?人間に見つかったら、あんたも殺され

 るんだよ。ましてやそれを盗んだなんて思わ

 れたら何をされるか…。返しておいで。今す

 ぐに」

ススキ「わかった」

   ススキ、暗い表情でうなずく。

   ホオヅキ、ススキの肩を叩いて歩いてい

   くよう促す。

   ススキ、歩いていく。

 

〇森の中

   ススキが歩いてくる。

   拾った辺りで立ち止まる。

   泥だらけのスニーカーを見る。

   ススキ、方向転換をして別の道へ走り出

   す。

 

〇同・川辺

   ススキ、川べりへ下りてくる。

ススキ「こんな泥だらけのままじゃ靴が可哀想

 だもんね」

   ススキ、川の水でスニーカーを洗い始め

   る。

   鼻歌を歌いながらスニーカーを洗う。

みことの声「そこに誰かいるの?」

   ススキ、体を縮こませ、帽子を深く被る。

   町谷みこと(11)が出てくる。

みこと「やっぱり人がいた!」

   ススキ、立ち上がってスニーカーを後ろ

   手に隠す。

   みこと、ススキに近付く。

みこと「こんなところで何してるの?キャン

 プ?バーベキュー?」

ススキ「えっと、その、落とし物を拾って…」

みこと「落とし物?」

   みこと、ススキの周りをまわる。

   手に持ったスニーカーに気付く。

みこと「あっ!これ私の!」

ススキ「え、き、君の?」

   ススキ、恐る恐るスニーカーを差し出す。

   みこと、受け取る。

みこと「うん!この前山菜取りに上った時にね、

 帰りにパパにおんぶしてもらったんだけどそ

 の時落としちゃってたみたい」

   みこと、スニーカーに頬ずりする。

みこと「もう諦めてたんだ。良かった、返って

 きて」  

ススキ「よ、よかったね」

みこと「ありがとう!」

町谷の声「おーいみこと、どこだー」

   みこと、大声で手を振る。

みこと「あっパパだ。パパーこっち!」

   町谷とおる(33)が近付いてくる。

   体格のいい町谷を見て後ずさりするスス

   キ。

   足が川に入ってしまう。

町谷「一人で進んで行ったら危ないじゃないか、

 みこと」

みこと「ごめんなさい」

   町谷、ススキに気付く。

町谷「うん?君は?どこの子?」

ススキ「あの、えっと」

みこと「パパ、この子が私の靴見つけてくれた

 んだよ」

   みこと、スニーカーを町谷に見せる。

町谷「なんだって?それは良かったなぁ」

   町谷、スニーカーを手に取る。

町谷「うん?濡れてる」

ススキ「あ、あの、泥だらけだったから…可哀

 想で洗おうかと思って…」

町谷「そうかそうか!」

   町谷、ススキの肩を叩く。

   ススキ、肩を竦める。

町谷「ありがとうなぁ、少年!このスニーカー、

 娘がすごく気に入ってたやつなんだよ。いや

 ぁいい人に見つけてもらえて良かったなぁ」

みこと「うん!」

ススキ「あ、あの…僕もう行かなきゃ…」

町谷「ああ、そうか。そろそろ暗くなるから、

 気を付けて帰るんだよ」

ススキ「は、はい」

   ススキ、早足で歩き出す。

みこと「ねぇ君!」

   ススキ、帽子を押さえながら立ち止まる。

ススキ「は、はいぃ!」

みこと「明日も会える?放課後、一緒に遊ぼう」

   ススキ、驚いてみことを振り返る。

町谷「こら、勝手なことを言うんじゃない」

みこと「えーだって遊びたいもん」

町谷「あの子にも都合があるだろう」

   ススキ、意を決して叫ぶ。

ススキ「い、いいよ!」

   みこと、笑顔になる。

みこと「本当?じゃあ明日、3時にここに来て

 ね!」

ススキ「う、うんわかった。それじゃ」

   ススキ、ぎこちなく手を振って歩き出す。

   みこと、大きく手を振る。

みこと「また明日ねー!」

   ススキ、振り返らずに走っていく。

   みこと、ススキの背中を見送る。

みこと「パパ、私もあんな帽子欲しいなぁ」

町谷「ママに買ってもらいなさい」

 

〇森の中

   ススキ、笑顔で走り抜けていく。

   帽子が脱げて落ちる。

ススキ「あっ」

   立ち止まり帽子を拾い上げる。

   その頭には鬼の角。

 

〇ススキの家・ススキの部屋

   鏡の前、帽子を被っているススキ。

   床には帽子がいくつも転がっている。

   ホオヅキが部屋の前を通る。

   部屋の中を見て足を止める。

ホオヅキ「そんなに散らかしてどうしたの」

ススキ「母ちゃん、どの帽子が似合うかな」

ホオヅキ「え?」

ススキ「赤いのもカッコイイけど青もクールな

 感じでカッコイイよね。どっちがいいかな」

ホオヅキ「なあに?明日どこかに行くの」

ススキ「川に遊びに行くんだ」

ホオヅキ「そう。いいわね。誰と?」

   ススキ、手が止まる。

   帽子を掴む手に力がこもる。

ススキ「学校の、友達と」

ホオヅキ「そう。楽しんできてね」

ススキ「うん」

   ホオヅキ、部屋を出ていく。

   ドアの前で立ち止まる。

ホオヅキ「ススキ。たとえ子供だろうと人間と

 は関わっちゃダメよ」

ススキ「わかってるよ!おやすみ!」

   ススキ、ホオヅキを押して部屋から出す。

   勢いよくドアを閉める。

 

※ ばれたら殺される…!という不安を書いてみました。

 この設定、突き詰めたら面白いもの書けるかも?