おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「宿命」綱がる

    人 物

城戸瑛一(5)(10)

城戸誠一(30)(35)瑛一の父

城戸美代(30)瑛一の母

前野雄哉(35)誠一の部下

須賀タクミ(10)瑛一の友達

相川マナブ(10)瑛一の友達

タクミの母(35)

マナブの母(40)

校長(54)

安江一郎(29)瑛一のクラス担任

 

 

〇墓地

   蝉がうるさく鳴いている。

   スーツ・サングラス姿で花束を持った城

   戸誠一(30)が城戸瑛一(5)の手を引いて歩

   いてくる。

 

〇同・城戸家の墓

   誠一、花を供え手を合わせる。

   瑛一、後ろでボーっと立っている。

   誠一、振り返り瑛一の腕を引く。

誠一「ほら瑛一。お前もお祈りしなさい」

   瑛一、誠一の隣に立ち、誠一を見ながら

   手を合わせる。

誠一「いい子だ」

   誠一、瑛一の頭を乱暴に撫でる。

誠一「いいか瑛一。ここに眠っているのはお前

 の祖父さんだ。とても立派な軍人でな。いく

 つも勲章をもらっているんだぞ」

瑛一「どうやったらもらえるの」

誠一「敵をたくさんやっつけたらもらえるんだ」

瑛一「じゃあじいちゃんはヒーローだね!悪い

 奴をたくさんやっつけたんだね」 

誠一「そうだ。お前も祖父さんの血を引いてる

 んだから立派な男になるんだぞ」  

瑛一「うん!」

   誠一、微笑んでもう一度瑛一の頭を乱暴

   に撫でる。

 

〇小学校・校庭(夕)

   須賀タクミ(10)と相川マナブ(10)が遊ん

   でいる。

   瑛一(10)が近付く。

   タクミとマナブ、瑛一に気付く。

瑛一「俺も混ざっていい?」

   タクミとマナブ、顔を見合わせてから瑛

   一を見る。

タクミ「いいよ」

タクミの母「(強い口調)タクミ!」

   瑛一とタクミとマナブ、振り返る。

   険しい表情のタクミの母(35)が入口に立

   っている。

タクミ「母さん」

   タクミが走り寄る。

タクミの母「あんた、城戸くんとは遊んじゃダ

 メって言ったじゃないの」

タクミ「でもマナブも一緒だし」

タクミの母「二人きりじゃなかったらいいわけ

 じゃないの」

    瑛一とマナブも駆け寄る。

    タクミの母、取り繕った笑顔を向ける。

タクミの母「ごめんね、もうタクミは家に帰る

 時間だから」

タクミ「えーもっと遊びたい」

タクミの母「ダメ!」

瑛一「おばさん、タクミもうちょっと遊びたい

 って」

   瑛一、一歩前に出る。

   タクミの母、一歩下がる。

タクミの母「ダメよ!ダメダメ、もう一緒には

 遊べないの!じゃあね!」

   タクミの母、瑛一から目を逸らして、急

   いで歩き出す。

   腕を引かれたタクミ、不満そうに手を振

   って歩き出す。

マナブの母「(悲鳴)マナブちゃん!」

   逆の方向から、マナブの母(40)がマナブ

   に駆け寄る。

マナブ「あ、ママ」

マナブの母「何してるの、帰るわよ!急いで!」

マナブ「えー」

   マナブの母、マナブの手を引く。

瑛一「あの」

   マナブの母、悲鳴を上げて踵を返す。

   マナブとマナブの母、歩いていく。

   瑛一、その背中を見つめる。

マナブの母の声「城戸くんと遊んじゃダメだっ

 て言ったでしょ。あそこは殺人鬼とやくざの

 家なんだから」

マナブの声「えーでも瑛ちゃんは悪いことして

 ないよ」

マナブの母の声「あんな親や祖父がいていい子

 なわけないでしょ。気に入らないことがあっ

 たら何されるか…。ああ怖い」

   マナブとマナブの母の姿が角を曲がって

   見えなくなる。

   瑛一、角をジッと見ている。

   黒塗りのセダンが入口に停車する。

   後部から誠一(35)が降りてくる。

   瑛一に近づく。

誠一「瑛一、帰るぞ」

   瑛一、誠一を黙って見ている。

誠一「なんだ、お前ひとりか?一人で遊んでい

 たのか。さみしい奴だな」

   誠一、瑛一の頭を撫でようとする。

   瑛一、誠一の手を払い歩き出す。

誠一「どうした」

   誠一、瑛一の後に続く。

瑛一「なんでもない」

誠一「怒っているだろう。さみしい奴と言った

 からか。それくらいで怒るのは男らしくない

 ぞ」

   瑛一、立ち止まって誠一を睨みつける。

瑛一「僕に友達がいなくなったら、パパのせい

 だからな!」

   瑛一、走ってセダンを通り過ぎていく。

   誠一、瑛一を笑って見送る。

 

〇瑛一の家・全景(夕)

   純和風家屋の豪邸。

   瑛一が走ってくる。

 

〇同・玄関(夕)

   瑛一、引き戸を開けて入ってくる。

瑛一「ただいま」

   背を向けていた前野雄哉(35)にぶつかる。

瑛一「うわっ」

   瑛一、しりもちをつく。

前野「おや坊ちゃん。おかえりなさいませ」

   前野、振り返り膝をついて瑛一に手を差

   し出す。

   瑛一、前野の顔と手を交互に見る。

   前野の手を払って立ち上がる。

前野「おや」

   瑛一、横をすり抜けて家の中に入ってい

   く。

   誠一が玄関に入ってくる。

誠一「おう、前野」

   前野、誠一に深く頭を下げる。

前野「お疲れ様です!」

誠一「瑛一帰って来たか」

前野「はい、俺を睨みつけていきました」

誠一「さっきから不機嫌なんだよな」

前野「反抗期ですかねぇ」

誠一「あいつのことは美代に任せてるからな。

 それで?何の用だ」

   誠一、懐から煙草を出しながら部屋に上

   がろうとする。

前野「例の取引の件で…。ボス、家の中は禁煙

 でしょう」

誠一「おっと」

   誠一、煙草をしまう。

 

〇同・リビング(夜)

   お絵描きをしている瑛一。

   テレビが点いている。

   任侠映画が流れている。

   パンチパーマのボスが短刀を下っ端に突

   きつけている。

ボス「おぅ、ケジメつけたらんかい」

   瑛一、顔を上げテレビを見る。

   城戸美代(30)が入ってくる。

美代「瑛一ちゃん、もういい加減寝ないとパパ

 みたいになれないわよ」

瑛一「別にいいよ。こんなんなりたくないし」

   瑛一、テレビを指差す。

   美代、顔をしかめる。

美代「こんなのと全然違うわよ」

   瑛一、テレビを見つめたまま。

瑛一「一緒だよ、全部」

 

〇小学校・全景(夕)

   チャイムが鳴る。

   児童が下校していく。

   黒のセダンが駐車場に入っていく。

 

〇同・応接室(夕)

   頬にガーゼを貼った瑛一が無表情で座っ

   ている。

   向かいのソファに、タクミとタクミの母

   が座っている。

   タクミの顔に絆創膏が数枚。

   タクミの母がタクミを抱きしめている。

   校長(54)と安江一郎(29)が立って待機し

   ている。

   誠一がいきなり入ってくる。

誠一「瑛一!」

   タクミの母、悲鳴を上げて縮こまる。

   誠一、部屋を見回して瑛一の傍に駆け寄

   る。

誠一「瑛一、けがをしたのか。されたのか。何

 があった」

   瑛一、答えない。

安江「お、お父さん落ち着いてください。今話

 を…」

誠一「私は息子に聞いているんです!」

   安江、怯えて後ずさる。

誠一「瑛一、何があった。ケンカと聞いたがど

 ういうことなんだ」

   瑛一、誠一をゆっくりと見る。

瑛一「全部あんたのせいだよ」

誠一「なに?」

瑛一「あんたやじいちゃんの血が流れてるから。

 俺はこんなに孤独なんじゃないか!」

   瑛一、テーブルを思い切り蹴る。

   テーブルの上のカップが倒れる。

   タクミとタクミの母、怯える。

   瑛一、タクミを見て目を伏せる。

瑛一「…ほら。いつもこうなる」

   瑛一、拳を握る。

   誠一、茫然と瑛一を見る。

 

 
※宿命とは…?と悩みながら書きました

 逃れられないのが宿命、らしいので

 血のつながりからは逃れられないですからね…

 

 

課題「死」その手を取って

    人 物
四谷あいり(14)中学生
四谷あかり(40)あいりの母
大原警部(43)刑事
小村刑事(25)大原の部下
看護師(30) 

〇四谷家・全景(夜)
   ボディラインの出たワンピースを着て派
   手な化粧とアクセサリーを身に着けた四
   谷あかり(40)が千鳥足で歩いてくる。

〇同・玄関(夜)
   玄関のライトが消えている。
   あかり、ドアを開けようとするが開かな
   い。 
   ドアを乱暴に叩く。
   ブレスレットがジャラジャラと音を立て
   る。
あかり「あいりー!開けなさーい。お母さんが
 帰って来たわよ。あいりー!」
   両手で叩く。
   ライトが点いて鍵が開く。
   パジャマ姿の四谷あいり(14)が顔を出す。
あいり「大声出さないでよ、近所迷惑でしょ」
あかり「あんたが鍵なんかかけてるからよ」
   あいり、あかりを押し退けて中に入る。

〇同・リビング(夜)
   部屋の電気が点いてあかりが入ってくる。
   鞄を放り投げ、ソファに寝転がる。
   あいりが入口に立つ。
あかり「何か作って。食べるもの」
あいり「今から?私もう寝たいんだけど」
   あいり、壁掛け時計を見る。
   時間は1時。
あいり「明日テストなの。中間試験」
あかり「だから何よ。普段からちゃんと勉強し
 てれば怖くないでしょ。一夜漬けなんて意味
 ないわよ」
あいり「こういう時だけ正論言って」
あかり「いいから早く作りなさいよ!」
   あかり、バッグを投げつける。
   あいり、ぶつぶつ文句を言いながら出て
   いく。
   あかり、寝転んだままスマホを見る。

〇同・キッチン(夜)
   あいり、湯を沸かし始める。
   ポケットから単語帳を取り出して開く。

〇同・リビング(夜)
   あかり、スマホを持ったまま寝ている。

〇同・キッチン(夜)
   あいり、お盆にご飯・梅干し・急須・箸
   を載せてキッチンを出る。

〇同・リビング(夜)
   あかりが寝ている。
   あいりがお盆を持って入ってくる。
あいり「お母さん、できたよ」
   あいり、あかりが寝ているのに気付く。
   テーブルにお盆を置いてあかりを揺する。
あいり「起きて。お茶漬け用意したよ。ねえ」
あかり「うぅん…」
あいり「ねえ、お母さんてば」
あかり「うーん、うるさい」
   あかり、寝返りを打つ。
   あいり、再びあかりを揺する。
あいり「起きてよ。食べたかったんでしょ?起
 きて!」
   あかり、顔を歪めて思い切り手を振る。
あかり「うるさいってば寝かせてよ!」
   あいり、あかりの腕にぶつかる。
   ブレスレットが音を立てる。
あいり「いたっ」
   あいりの頬に切り傷ができる。
   あかり、寝息を立てる。
   あいり、あかりを見つめる。
   あいり、唇を噛んで部屋を出ていく。
   電気が消える。

〇同・全景(朝)
   頬に絆創膏、制服を着たあかりが出てい
   く。

〇同・全景(夕)
   制服を着たあかりが帰ってくる
   
〇四谷家・玄関
   あいりが入ってくる。
あいり「ただいま!」
あかりの声「おかえりー」

〇同・リビング
   ソファに寝そべっているあかり。
あかり「やっと帰って来た。何か作ってよ、あ
 んたのせいで腹ペコなの」
あいり「お茶漬け用意したでしょ」
あかり「あんな冷めてまずいもの食べれるわけ
 ないじゃない」
   テーブルの上には少しだけ食べてあるお
   茶漬けとお菓子の袋が散乱している。
あいり「明日もテストなの。ご飯くらい自分で
 用意して」
あかり「じゃあ食べに行くよ。用意して」
   あかり、立ち上がる。
あいり「は?テストだって言ってるでしょ」
あかり「早く用意しろって言ってんのよ」
   あかり、服を脱ぎながらドアに向かう。
   あいりとすれ違いざま、あいりを見て
あかり「何その絆創膏。ダッサ」
   そのまま出ていく。
あいり「誰のせいだと思ってんの」

〇住宅街(夕)
   あかりの後ろをあいりがうつむいて歩い
   ている。
あかり「何食べようかな。やっぱり寿司かな。
 あーでも無難にラーメンも捨てがたい」
あいり「テスト中だって言ってんのに」
あかり「いつまでもうるさいよ」
   あいり、あかりを睨みつける。
あかり「なによ、その顔」
   あいりの後ろ、遠くからトラックがフラ
   フラと走ってくる。
   あかり、トラックに気付く。
   トラックの運転手、目を閉じて苦しそう
   な様子。
   トラックが歩道に乗り上げながら走って
   くる。
   あかり、表情が強張る。
   トラックの運転手、倒れこむ。
   ハンドルに頭がぶつかり激しいクラク
   ョンの音。
   運転手の足がアクセルを踏み込む。
   驚いて振り返るあいり。
   トラックが猛スピードで迫ってくる。
   あかり、あいりを思い切り車道側へ突き
   飛ばす。
   あいり、車道に倒れこむ。
   トラック、歩道の柵に激突して停車。
   あいり、ヨロヨロと起き上がる。
あいり「な、何が起きたの…」
   あいり、トラックが大破して停まってい
   るのを見る。
   茫然とするあいり。
   通行人が驚いて見ている。
   タイヤのすぐ傍、あかりが倒れているの
   に気付く。
あいり「お母さん」
   あいり、慌てて駆け寄る。
   あかり、頭から血を流してぐったりと目
   を閉じている。
   あいり、あかりの肩を揺する。
あいり「ちょっと、ねぇ起きて」
   あかり、うっすらと目を開ける。
あかり「あいり、あんたケガは…?」
あいり「どこもない」
あかり「そっか…よかった…」
   あかり、満足そうに微笑む。
あいり「お母さんこそ、こんな所で倒れててビ
 ックリしたんだけど」
   あかり、動かない。
あいり「お母さん?」
   あかり、微笑んだままこと切れている。
   あいり、あかりを見つめたまま固まる。
   あかりの手があいりの手をにぎっている
   救急車のサイレンが聞こえる。

〇大学病院・全景(夕)

〇同・あかりの個室(夕)
   あかりが包帯を巻いた姿でベッドに横に
   なっている。
   あいり、横に座ってジッと明かりを見て
   いる。

〇同・あかりの個室前(夕)
   看護師(30)が大原警部(43)と小村刑事
   (25)を連れて個室の前まで来る。
看護師「こちらです。でも、話せるかどうか」
大原「どうもありがとう」
   大原、会釈する。
   看護師、会釈を返して去っていく。
   大原、小村を軽く小突く。
小村「自分がですか」
大原「早くしろ」
   小村、嫌そうな顔をして扉をノックする。
小村「お邪魔しまーす」
   小村、扉を開ける。

〇同・あかりの個室(夕)
   あいり、動かない。
   大原と小村、入ってくる。
小村「あの、今回は何と言ったら…」
大原「四谷あいりさんだね。警察なんだけど、
 事故のこと、ちょっと聞いてもいいかな」
   大原、あいりに近付く。
   あいりを覗き込む。
   あいり、頬の絆創膏を擦っている。
あいり「なんであんなことしたの、なんで」
   あいり、焦点の合わない目で呟く。
あいり「いつものお母さんならするわけないじ
 ゃん、なんでこんな時だけ…」
   あいり、絆創膏を強く擦る。

 

※どんな毒親でもこどものことは遺伝子レベルで愛してるんです。

 と、思いたいのです。私は。

 その愛は、こどもを苦しめてしまうかもしれないけれど。

 

 

課題「背信」IかYouか

    人 物

愛崎流美(24)OL

大和田愛実(24)流美の親友で同僚

剣道悠真(27)流美の恋人で同僚

信者の女(37)

 

 

 

 

〇繁華街・道

   通行人でごった返している街。

   大和田愛実(24)と愛崎流美(24)が手を繋

   ぎ歩いている。

   愛実はパステルカラーの可愛らしい服装。

   流美はアースカラーのシンプルなコーデ

   ィネート。

 

〇雑貨屋・店内

   ファンシーなインテリアや小物がたくさ

   ん並ぶ店内。

   陶器でできた二匹のウサギの人形が飾っ

   てある。

   ピンクと紫、色違いのリボンを着けたウ

   サギの人形。

   愛実、人形を見て足を止める。

愛実「流美ちゃん、見て見て。すっごく可愛い」

   先を歩く流美、振り返って覗き込む。

流美「ホントだ。可愛いね」

愛実「こっちのピンクのが愛実で、こっちのパ

 ープルのが流美ちゃん。ピッタリでしょ?」

流美「確かに。表情も愛実に似てる気がするわ」

愛実「でしょ。あー可愛いなぁ」

   愛実、人形を眺める。

   流美、人形を手に取る。

愛実「流美ちゃん?」

流美「せっかくだからお揃いしちゃおう」

愛実「いいの?嬉しい!」

流美「会計済ませちゃうから、先にお店出てて」

   流美、レジに向かう。

愛実「うん!」

   愛実、鼻歌を歌いながら店を出る。

 

〇雑貨屋・店の前

   愛実、鼻歌を歌いながら待っている。

   聖書を持った信者の女(37)が愛実に近づ

   いてくる。

信者の女「すみません、駅へはどのように行っ

 たら良いでしょうか」

愛実「駅だったら、この道を真っすぐ進んで、

 突き当りを左に曲がったらすぐですよ」

信者の女「ご丁寧にありがとうございます。お

 礼と言ってはなんですが…あなたの幸せを祈

 らせていただけませんか」

愛実「え、あ、はい」

   信者の女、合掌してお経を唱え始める。

   通り過ぎる人々が愛実をチラ見していく。

   愛実、周りを見てうつむく。

流美の声「そこまでにしてもらえませんか」

   愛実、顔を上げる。

   流美が険しい表情で信者の女を見ている。

信者の女「私はただ、この方の幸せを…」

流美「間に合ってます!」

   流美、愛実の手を引いて歩き出す。

   愛実、引かれながら信者の女を見る。

   信者の女、愛実を睨みつけている。

 

〇繁華街・道

   並んで歩く愛実と流美。

流美「気を付けなさいよ。ああいうのはうまい

 こと言ってお金を撒き上げようとしてくるん

 だから。不用意に話を聞いちゃダメ」

愛実「うん。さっきあの人怖い顔で私を見てた

 し、良くない人なのはわかった。ありがとう、

 流美ちゃん」

流美「ホントにあんたは一人にできないわね。

 人を疑わないのは美徳だとは思うけど」

   流美、鞄から包みを取り出して愛実に渡

   す。

流美「はい。さっきのウサギ」

愛実「ありがとう!流美ちゃん大好き」

   愛実、包みに頬ずりする。

   流美、微笑んで愛実を見ている。

 

〇カフェ

   若い女性客が多い店内。

   テラス席に愛実と流美が座る。

   流美のスマホが鳴る。

流美「ちょっとごめんね」

   流美、愛実に背を向けて電話に出る。

流美「もしもし?ごめん今日は愛実といるから」

   パフェが運ばれてくる。

   愛実、店員に会釈する。

流美「帰ったらちゃんと連絡するし。うん。う

 ん、わかってるよ。うん」

   愛実、パフェにスプーンを挿しながらニ

   ヤニヤと流美を見る。

流美「それじゃ、また電話するね。じゃあね」

   流美、電話を切る。

流美「ごめんね…(愛実の顔を見て)なによ、

 その顔」

愛実「彼氏さん?いいねー、ラブラブなんだ?」

流美「からかうのはやめて」

愛実「流美ちゃんも可愛いとこあるぅ」

流美「もう、そんなことはいいの」

   流美、パフェを食べ始める。

愛実「あのね、愛実も好きな人できたの」

流美「いいじゃない!やっと前の失恋から立ち

 直ったの」

愛実「もうあんな男なんて知りません!次の人

 は、あいつよりもっともーっと知的で優しく

 てかっこいいんだから」

流美「そんなに素敵な人?誰誰?どこの人?応

 援するよ私」

愛実「多分流美ちゃんも会ったことはある人だ

 と思うよ」

流美「え?じゃあ結構身近にいた人ってこと?」

愛実「そうなんだ。なんで今まで気付かなかっ

 たんだろうって思うくらい、素敵な人」

流美「えー誰よ?気になるじゃない」

愛実「誰にも言っちゃ嫌だよ?」

流美「言わないよ。私が愛実との約束、破った

 ことある?」

愛実「ない!」

流美「これからもないよ、安心して」

愛実「うん、じゃあ言っちゃおうかな」

   愛実、身を乗り出す。

   流美、耳を寄せる。

愛実「(小声)管理部の剣道悠真さん」

流美「えっ」

   流美、目を丸くして愛実を見る。

愛実「驚いた?」

流美「お…驚いたよ!」

   流美、水を飲む。

愛実「だよね。愛実、この間ちょこっとミスし

 ちゃってさ。それで管理部に謝りに行ったん

 だけど」

 

〇(回想)四葉商事・管理部

   制服姿の愛実が泣きそうになりながら入

   口で頭を下げる。

   剣道悠真(27)が駆け寄る。

   剣道、愛実の肩を叩いて声をかける。

愛実の声「すごく優しく慰めてくれてね。こん

 なに優しい男の人っているんだって感動しち

 ゃった」

 

〇(もとの)カフェ

   愛実、うっとりとしている。

愛実「それ以来、剣道さんのことが忘れられな

 いの」

流美「そうなんだ」

愛実「流美ちゃんは総務部だから、管理部にも

 よく行くでしょ?剣道さんのこと、知って

 る?話したことある?」

流美「うん…まぁ、ね。雑談くらいなら」

愛実「じゃあ今度会ったら、誕生日とか好きな

 ものとか聞いといてもらえる?」

流美「ええ、私が?」

愛実「お願い。流美ちゃんが頼りなの」

流美「…わかった」

愛実「よかった!あ、ついでに、彼女いるかど

 うかも聞いてほしいな」

流美「それは…いきなり聞くのはちょっと難し

 いよ」

愛実「それもそっか。じゃあとりあえず好きな

 ものからかな!お願い!」

流美「…うん」

愛実「ふふ、ありがと!」

   愛実、笑顔でパフェを食べる。

   流美、伏し目がちにパフェを食べる。

   片手でスマホをギュッと握る。

 

〇駅・ホーム(夜)

   電車が入ってくる。

   扉が開き、流美が降りてくる。

   流美の表情が暗い。

 

〇同・改札(夜)

   流美がスマホをいじりながら改札から出

   てくる。

剣道の声「流美!」

   流美、驚いて顔を上げる。

   改札の外、剣道が笑顔で手を振っている。

流美「悠真」

剣道「待ちきれなくて迎えに来た」

   剣道、微笑む。

   流美、スマホを握り締める。

 

〇駐車場

   赤のクラウンが停まっている。

 

〇車内

   流美が助手席、剣道が運転席に乗り込む。

剣道「浮かない顔してるな」

流美「え…そう?」

剣道「何かあった?」

流美「何もないよ、遊びすぎて疲れただけ」

剣道「それならいいんだけど」

   剣道、ポケットに手を突っ込む。

剣道「あのさ、待ちきれなかったのは、お前に 

 言いたいことがあったからなんだ」

流美「なに?」

   剣道、箱を取り出して開いて見せる。

   中にはダイヤの付いた指輪。

   流美、指輪と剣道の顔を見る。

流美「…なに」

剣道「俺、お前とのこと、真剣に考えてるから。

 だから…」

   流美、何か言おうとして口を閉じる。

   流美のスマホが着信で震える。

 

※リアルでありそうな気がする~

課題「復讐」零れ落ちる水

    人 物

成平貴子(16)高校生

枡野彩佳(16)貴子のクラスメート

成平孝一(50)貴子の父

成平聖子(45)貴子の母

新庄篤弘(33)貴子の担任

木戸一郎(48)弁護士

静川環奈(16)貴子のクラスメート

 

 

 

 

 

 

〇成平家・寝室(夕)

   薄暗い室内。

   大きなダブルベッドが部屋の中心にある。

   成平貴子(16)が入ってくる。

   ベッドの隣のクローゼット上の棚に手を

   伸ばす。

   並んでいる陶器の置物の隙間にあるもの

   を掴みあげる。

   貴子の手の平には小型カメラ。

   貴子、中のメモリカードを取り出す。

 

〇同・リビング(夕)

   可愛いインテリアが数多く並ぶ部屋。

   あちこちに花が飾られている。

   成平聖子(45)がソファに座りクッキーを

   食べながらテレビを見ている。

   貴子が入ってくる。

貴子「お母さん」

聖子「帰ってたの?おかえり、貴子」

貴子「お父さんは?」

聖子「残業ですって。最近多いわね」

貴子「そう」

   貴子、聖子の隣に座る。

   メモリカードを聖子に差し出す。

聖子「なにこれ?」

貴子「プレゼント」

   貴子、ニッコリ微笑む。

   聖子、不思議そうに貴子を見る。

 

〇成平家・全景

   蝉が鳴いている。 

   大きな白い壁の一軒家。

   木戸一郎(48)が汗を拭きながら歩いてく

   る。

 

〇同・リビング

   貴子、聖子、木戸が並んでソファに座っ

   ている。

   向かいのソファに成平孝一(50)が座る。

   テーブルの上には離婚届。

   成平、ペンを取り離婚届に署名を始める。

   貴子、冷めた目で見つめている。

   聖子、何度もハンカチで涙を拭っている。

   成平、ハンコを押して木戸の前に離婚届

   を差し出す。

   木戸、書類を確認する。

木戸「はい、確かに」

   成平、深々と頭を下げる。

成平「本当に…すまなかった」

   聖子、泣き出す。

   貴子、動かない。

成平「貴子」

   貴子、無表情のまま成平を見つめる。

   成平、目を逸らす。

 

〇同・玄関前

   枡野彩佳(16)が壁に背を預けて立ってい

   る。

   玄関の向こうで話し声が聞こえて隠れる。

   扉が開いて木戸が出てくる。

木戸「それでは、私はこの辺で」

聖子「どうもありがとうございました」

木戸「奥さん、また明日、事務所でお待ちして

 います」

聖子「よろしくお願いいたします」

   木戸、会釈して去っていく。

   彩佳、木戸を見送って聖子を見る。

彩佳「あの…」

   聖子、憔悴しきった表情。

   彩佳、口を噤んで隠れる。

   扉が閉まる。

   彩佳、深いため息を吐く。

 

〇同・貴子の部屋

   ドアに「貴子の部屋」とプレートが飾っ

   てある。

   アイドルのポスターがたくさん貼ってあ

   る。

   クローゼットは開いたまま

   ベッドに洋服が散乱している。

   貴子、段ボールに服を詰めている。

貴子「ガムテープ…」

   貴子、立ち上がり机に近づく。

   ガムテープを手に取り、机の上の写真の

   山に目が行く。

   貴子と彩佳、他数人の女友達と撮った写

   真や貴子と彩佳のツーショット等多数。

   貴子と彩佳、顔を寄せ合って笑っている。

   貴子、ハサミを手に取り、彩佳の顔にハ

   サミを入れる。

   貴子の足元に写真の破片が落ちる。

   貴子、無言でハサミを入れ続ける。

   涙が一筋零れる。

 

高岡高校・全景

 

〇同・1年1組前

   1年1組のプレートがかかっている。

新庄「えー残念な話だが」

 

〇同・1年1組

   教壇に新庄篤弘(33)と貴子が立っている。

   席に着いている生徒の中に彩佳。

新庄「成平くんがご家庭の事情で、今日付けで

 転校することになった」

   ざわつく生徒たち。

   彩佳の後ろに座る静川環奈(16)、彩佳の

   背中を指でつつく。

環奈「ねぇ、知ってた?貴子のこと」

彩佳「え?」

環奈「彩佳、一番仲良かったじゃない。なんで

 転校するのか聞いてないの?」

彩佳「知らない…」

   彩佳、目を逸らす。

   環奈、不満そうに彩佳を見る。

新庄「急なことで驚いたと思うが、皆笑顔で成

 平を送り出してやってくれ」

成平「短い間でしたけどお世話になりました」

   貴子、深々と頭を下げる。

   顔を上げた貴子、満面の笑み。

貴子「皆さんのこと、忘れません」

   生徒たち拍手。

   貴子、笑顔で生徒を見回す。

   彩佳、うつむいて目を伏せる。

 

〇同・職員室前

   職員室から貴子が出てくる。

貴子「失礼しました」

   彩佳が近付いてくる。

彩佳「貴子」

   貴子、彩佳を見る。

彩佳「ちょっと…いい?」

   貴子、無言。

   彩佳、貴子を不安げに見る。

   貴子、笑顔になる。

貴子「いいよ。私もちゃんと話したかったし」

   彩佳、安堵の笑み。

 

〇同・屋上前

   貴子、屋上へ出るドアを開けようとする

   が鍵がかかっている。

   彩佳、後ろで見守っている。

貴子「あー今日は開いてないのか。残念」

   貴子、笑顔で振り返る。

貴子「しょうがない。ここで話そうか」

彩佳「うん」

   貴子、ドアにもたれかかる。

彩佳「あの日から、ちゃんと貴子と話してなか

 ったなって思って…。何度も会いに行こうと

 したんだけどできなかったの。学校で話すよ

 うなことでもないし」

   貴子、笑顔で黙って聞いている。

彩佳「こんなこと…今更言ったってしょうがな

 いと思うけど、やっぱり直接言いたかったの。

 貴子、あなたを裏切るようなことしてゴメン」

   貴子、笑顔のまま。

貴子「お父さんは、彩佳のこと遊びだって言っ

 てたけどホント?」

彩佳「ホントだと思う。私と会っていてもおば

 さんや貴子の名前よく出してたし。本気で私

 とどうこうなるつもりはなかったんじゃない

 かな」

貴子「彩佳はそれでも良かったの」

   彩佳、ためらいながら首を振る。

彩佳「私、最初は本気だった。本気だったけど」

   貴子、笑顔のまま。

彩佳「私子供過ぎた。自分のことしか考えてな

 かった。貴子、ごめん。あなたを傷つけたか

 ったわけじゃないの。

 私も転校することにした。

 寮に入って、こっちにはなるべく帰らないよ

 うにする。

 これ以上、貴子たち家族に関わらないように

 するから」

貴子「もう家族じゃないけどね」

   彩佳、言葉に詰まる。

彩佳「ごめん。本当にごめん」

   彩佳、頭を下げる。

   貴子、体を起こす。

貴子「彩佳、顔上げてよ。もういいよ」

   彩佳、顔を上げる。

   貴子、微笑む。

彩佳「貴子」

貴子「彩佳。もういいよ」

   貴子、手を差し出す。

   彩佳、貴子の顔と手を見比べて笑顔にな

   る。

彩佳「貴子…!」

   彩佳、差し出された手を取ろうとする。

   貴子、差し出した手で彩佳の胸を強く押

   す。

彩佳「え」

   彩佳の体が大きく後ろに揺らぐ。

   彩佳、バランスを崩し、そのまま階段を

   落ちていく。

   床に倒れる彩佳、目を見開いたまま動か

   ない。

   貴子、笑顔のまま彩佳を見下ろしている。

貴子「もう、どうでもいいんだ」

   貴子、無表情になる。

 

 

※復讐…女のドロドロを書きたくなってしまうのはなぜ?

 タイトルの「零れ落ちる水」は「覆水盆に返らず」の諺から。

 自分的には珍しく、少し捻ったタイトルなのです。

課題「魅力ある女」女神さまはお怒りです

    人 物

如月潮(28)キャリアウーマン

庄野賢太(28)同僚。潮の幼馴染

宇城愛里子(23)潮の後輩

小松崎遼太郎(29)潮の先輩

大将 居酒屋「満月」の大将

 

 

 

 

〇自然公園(夜)

   ライトアップされた公園。

   散歩している人、カップルが複数歩いて

   いる。

小松崎「え、今なんて…?」

   如月潮(28)と小松崎遼太郎(29)が向かい

   合っている。

   潮、俯いている。

潮「小松崎さん、私と…」

小松崎「ちょ、ちょっと待って」

   潮、顔を上げる。

小松崎「ごめんそれ以上言わないでくれるかな」

   潮、小松崎を見つめる。

小松崎「ほら、君はさ…俺なんかとレベルが違

 うからさ、ちょっと、恐れ多いっていうか…」

   小松崎、頭を掻いて笑う。

小松崎「君は営業部のマドンナでいてよ。ね?」

 

〇居酒屋「満月」・外観(夜)

   提灯が灯っている。

 

〇同・店内(夜)

   潮と庄野賢太(28)がカウンターに並んで

   飲んでいる。

   潮、空のコップを机にたたきつける。

潮「おかわり!」

庄野「もうやめといたら?それ何杯目よ」

潮「知らない」

   大将、コップを受け取りながら

大将「水割り5杯目です」

庄野「え、もうそんなに?やめとけってもう」

潮「うっさいわね、大将持ってきて!」

   大将、奥に引っ込んでいく。

   潮、庄野の前にあるグラスを取って飲む。

庄野「あ、それ俺の」

潮「なにこれジュースじゃん」

庄野「ジュースじゃねぇし、ピーチハイだし」潮「女子か」

庄野「男子です」

   大将、水割りと水のコップを両手に持っ

   て戻ってくる。

   潮、片方だけ受け取る。

潮「水いらないわよ、下げて」

   大将、肩をすくめて戻っていく。

庄野「よくわかったな、どっちが水か」

   潮、酒を一息で飲む。

潮「あーうまい」

庄野「そりゃようござんしたね。大将、俺にピ

 ーチハイと、こいつにウーロン茶」

潮「いらないわよウーロン茶」

庄野「ちょっとはインターバル挟めって」

   潮、不満げに焼き鳥を食べる。

庄野「それで?今回はどこの誰」

潮「営業部の小松崎さん」

庄野「また随分と近場の人間だな」

潮「よく話すから大丈夫だと思ってたのに…」

   大将、ピーチハイとウーロン茶を持って

   くる。

   潮、ピーチハイを取って一気に飲む。

庄野「あ、俺の」

潮「何よレベルが違うって!何よ恐れ多いっ

 て!私はなんだ、神か悪魔か?皆のマドンナ

 なんて嬉しくないのよ、誰かのマドンナにな

 りたいのよ私は!」

   大将の手からウーロン茶を取ってまた一

   気飲みする。

庄野「そっちも飲むのかよ」

   潮、空のグラスを置いて机に突っ伏す。

庄野「超有能美人OL様も大変だな?」

潮「あんたはどうなのよ…ウシロちゃんとは」

庄野「どうって、普通だけど。普通」

   潮、起き上がって庄野の肩を揺さぶる。

潮「その普通のお付き合いがわからないから聞

 いてるんでしょうが」

庄野「落ち着けよ、とんだ絡み酒だな!マジ飲

 みすぎだってお前」

   庄野、潮の手を掴んで引き離す。

潮「うわぁぁん」

   潮、声を上げて泣き出す。

   周囲の客が庄野を見る。

庄野「泣くな泣くな、落ち着け、な?もう出よ

 う。とりあえず出よう。なっ?」

   庄野、潮の頭を叩いてあやしながら立ち

   上がる。

 

〇道(夜)

   庄野が潮の肩を支えながら歩いている。

   潮、鼻をすすりながら歩いている。

庄野「駅もうすぐだから。頑張れよ」

   潮、うなずく。

愛里子の声「あれ、如月先輩?」

   庄野と潮、顔を上げる。

   宇城愛里子(23)が正面から走ってくる。

庄野「エリちゃん」

愛里子「あれ、賢太さんだったの。如月先輩、

 どうしたんですか?大丈夫?」

庄野「彼氏より先輩の心配かよ」

愛里子「如月先輩は特別です。先輩、随分飲ま

 れてますね?大丈夫ですか?」

潮「うん、大丈夫だいじょ…ウッ」

   潮、口を押える。

庄野「ま、待て!おいどっか無いか!?」

愛里子「あ、すぐそこにトイレある!」

   庄野と愛里子、潮を支えて走り出す。

 

〇公衆トイレ前(夜)

   庄野が立っている。

   潮と愛里子が出てくる。

愛里子「お待たせしました」

庄野「もう大丈夫か?」

潮「うん、大分…」

庄野「だから飲みすぎるなって言ったんだ」

潮「だって飲みたかったんだもん」

庄野「だもんって、お前」

愛里子「ふふ、如月先輩可愛い」

庄野「お前はこいつを甘やかすな」

潮「水飲みたい」

愛里子「あ、そこに自販機ありますから、私買

 ってきますね」

庄野「悪いな」

   愛里子、走っていく。

   潮、ベンチに腰を下ろす。

庄野「明日が心配だな?」

潮「言わないでよ」

愛里子の声「キャーッ!」

   潮と庄野、驚く。

   潮、走り出す。

庄野「あ、おい!」

   庄野、後を追う。

 

〇道・自販機前(夜)

   ニット帽の男が愛里子のハンドバッグを

   掴んで引っ張っている。

   愛里子、必死に抵抗している。

愛里子「返して、返して!」

   ニット帽の男、強引にハンドバッグを引

   っ張る。

   愛里子、よろけて転ぶ。

   ニット帽の男、ハンドバッグを奪う。

愛里子「あっ」

潮の声「こらぁぁぁっ」

   ニット帽の男と愛里子、声のした方を向

   く。

   潮が真剣な表情で走ってくる。

愛里子「如月先輩」

   ニット帽の男、驚いて逃げようとする。

   潮、ニット帽の男にタックルする。

   ニット帽の男と潮、倒れこむ。

庄野「大丈夫?」

   庄野、愛里子に駆け寄る。

   潮、素早く起き上がってハンドバッグを

   掴んで取り返そうとする。

   ニット帽の男、殴りかかる。

   愛里子、驚いて顔を覆う。

庄野「心配いらないよ」

   愛里子、顔を上げる。

   潮、ニット帽の男の拳を手で受け止めて

   いる。

潮「はっ」

   潮、掴んだ拳を利用してニット帽の男を

   投げ飛ばす。

   ハンドバッグが地面を滑る。

   愛里子、驚いて見ている。

庄野「な、大丈夫だろ」

潮「か弱い女の子からひったくりかましてんじ

 ゃないわよ、このクソ男が!」

   潮、ニット帽の男にキャメルクラッチ

   かける。

   ニット帽の男、苦し気に地面を叩く。

愛里子「先輩…」

庄野「あーあー、やりすぎだあいつ」

   庄野、潮の元へ駆け寄る。

庄野「そこまでそこまで!それ以上やったらお

 前、傷害罪になるぞ」

   愛里子、潮と庄野を見て微笑む。

 

〇近藤商事・外観(朝)

 

〇同・営業部(朝)

   愛里子が一人で社員の机を拭いている。

   潮が出社してくる。

潮「おはようございます」

愛里子「おはようございます!」

   愛里子、潮に駆け寄る。

   潮、笑顔を見せる。

潮「おはよう。昨日はごめんね」

愛里子「先輩こそ。頭痛くありません?」

潮「大丈夫、慣れてるから。次の日に引きずっ

 たりしないわ」

   潮、机に向かいすぐにパソコンを開き仕

   事を始める。

   愛里子、うっとりと眺める。

   庄野が出社してくる。

庄野「おはようございます」

愛里子「おはよう、賢太さん。私たち、別れま

 しょう」

庄野・潮「ええっ!?」

   潮、立ち上がる。

庄野「え、朝からなに?」

   愛里子、ニコニコ笑って潮を見ている。

 

 

※潮のキャラクターはうまく書けたかなっと思います。

 美人で完璧に見える人ほど孤独だとはよく聞きますよね。

課題「魅力ある男」飛び込んだのは、地獄か希望か

    人 物

赤根武瑠(22)就活生

三好ルイ(5)少女

櫻井華(19)謎の女性

面接官(45)

水野しおり(22)就活生

 

 

 

 

〇公園通り

   スーツ姿の赤根武瑠(22)が歩いている

赤根「はぁ…今日の面接も手応えナシか」

 

〇(回想)面接会場内

   赤根と水野しおり(22)が座っている。

   その向かいに面接官(45)が険しい顔で座

   っている。

面接官「それではあなたの志望動機を教えてく

 ださい」

しおり「私は留学で培った語学力やコミュニケ

 ーション能力を活かして御社の製品の存在を

 広め、御社に貢献したいと考えています」

   しおり、自信満々な表情。

   隣の赤根、不安そうにしおりを見る。

面接官「はい。では次の人」

赤根「は、はい。私は御社の理念に深く共感し、

 自分の持てる力を精一杯活かせると思い…」

面接官「わかりました、もう結構です」

   面接官、書類に何か書き込む。

面接官「あなたたちと同じ台詞を、先程他の就

 活生からも聞きました」

   赤根たち、顔を見合わせる。

面接官「もっと自分で考えて、自分の言葉で回

 答するようにしなさい。君たちはマニュアル

 を読んでいるだけですね」

   面接官、ペンを転がす。

 

〇(もとの)公園通り

   赤根、足元の小石を蹴り飛ばす。

赤根「自分の言葉ってなんだよぉ。そんなのあ

 るわけないじゃん、本当にやりたいわけでも

 ないのにさぁ」

   赤根のスマホのアラームが鳴る。

赤根「ヤバイ、次の会場行かなきゃ」

   赤根、走り出す。

 

〇繁華街

   ビルのあちこちから煙が上がっている。

   道路や壁が崩れて倒れている。

   モンスターが歩いてきて口からビームを

   吐く。

   ビルにビームが当たって壁が崩れる。

   モンスターの咆哮。

   赤根が歩いてくる。

   周囲を見回して茫然。

赤根「なんだよこれ…」

   近くのコンクリートの破片の山が崩れる。

   振り返ると三好ルイ(5)がうずくまって

   いる。

   ルイの頬を子犬が舐めている。

   赤根、驚いて駆け寄る。

   そっとルイを抱き上げる。

赤根「きみ、大丈夫?ケガはない?」

   ルイ、小さくうなずいて赤根を見る。

赤根「一体、何があったんだ?」

ルイ「わかんない」

   子犬が元気に鳴いて赤根とルイの周りを

   まわっている。

   赤根、子犬を撫でる。

赤根「よし。よくわかんないけどとにかくここ

 は危なそうだ。とにかく逃げよう。歩ける?」

   ルイ、うなずく。

赤根「俺は赤根武瑠。君は?」

ルイ「ルイ」

赤根「ルイちゃんか。よろしく」

   赤根、手を差し出す。

   ルイ、その手を握り返す。

   赤根、微笑むと子犬を抱いたままルイの

   手を引き歩き出す。

   突然、子犬が赤根の背後に向かって吠え

   だす。

ルイ「チロちゃん?」

赤根「どうした急に?」

ルイ「後ろがどうかしたの?」

   赤根とルイの背後にモンスターが立って

   いる。

   モンスターが吼える。

   赤根とルイ、驚いて振り返る。

   モンスターが手を振り下ろす。

   赤根、咄嗟に転がって避ける。

   ルイ、ギリギリで助かる。

   起き上がった赤根、ルイを振り返る。

赤根「ルイちゃん!」

   モンスターの目がルイを見ている。

   ルイ、恐怖で動けない。

   モンスターが吼えて手を振り上げる。

   赤根、モンスターに飛びかかって体当た

   りする。

   モンスター、よろけて態勢を崩す。

   赤根、その隙にルイの前に立つ。

ルイ「お兄ちゃん」

赤根「大丈夫か」

   モンスター、態勢を直して赤根たちを見

   る。

   大きく口を開く。

   口の奥が光る。

   赤根、ルイを自分の後ろに隠す。

赤根「ルイちゃんは逃げて」

ルイ「で、でも」

赤根「あいつは俺が引き付けるから、早く!」

   子犬がルイのスカートの裾を引っ張る。

   ルイ、子犬と赤根を見る。

赤根「大丈夫、絶対俺も行くから」

   ルイ、子犬を抱き上げて走り出す。

   モンスター、ルイを見る。

   赤根、モンスターに向かって石を投げる。

赤根「おい、俺はこっちにいるぞ!」

   モンスターが赤根を振り返る。

   赤根、転がっている枝を拾い上げる。

   モンスターがゆっくりと歩いてくる。

赤根「よし、こっちだ…」

   赤根、震える手で枝を構える。

   横目でルイを見る。

   ルイの背中が小さくなっている。

   赤根、微笑む。

   モンスターが吼える。

赤根「うりゃあっ」

   赤根、枝を振り上げモンスターに飛びか

   かる。

   枝がモンスターに当たり折れる。

   モンスター、赤根を弾き飛ばす。

赤根「うわっ」

   地面に転がる赤根。

   モンスターが近付く。

   赤根、モンスターを見上げる。

赤根「はは…短い人生だったなぁ」

   モンスターが吼える。

   赤根、ギュッと目を瞑る。

   何かが弾ける大きな音がする。

   赤根、恐る恐る目を開ける。

   赤根の前に剣を構えた櫻井華(19)が立っ

   ている。

赤根「え?」

   モンスターが血を流して痛がっている。

   華、モンスターを睨みつけたまま。

華「大丈夫?」

赤根「あ、はい」

華「じゃあ早く逃げなさい」

赤根「え、でも君は」

華「私のことはいいから、早く逃げなさい」

   赤根、華の背中を見つめる。

   華、振り返る。

華「早く!死にたいの?」

   赤根、地面の大きい石を両手に持つと華

   の隣に立つ。

赤根「死にたくない。死にたくないけど、女の

 子を残して逃げたくもない」

   華、赤根を見る。

   赤根の手足は震えている。

   華、くすっと笑う。

華「怖いんじゃない」

赤根「う、うるさい」

   モンスターが大きく吼えて赤根と華の方

   を見る。

   華、モンスターを振り返る。

華「あなた、これ使ってみて」

   華、ポケットから銃を出して赤根に投げ

   る。

   赤根、慌てて受け取る。

赤根「なんだこれ。銃?玩具みたい」

華「援護頼むわよ」

赤根「えっ」

   華、剣を構えてモンスターに切りかかる。

   モンスター、両手を振り回して応戦する。

   赤根、慌てて銃を構える。

赤根「え、でもこれ間違ったらあの子に当たっ

 ちゃうんじゃ」

   赤根、華とモンスターを見る。

   激しく戦っている両者。

   赤根、深呼吸して銃を構え直す。

   真剣な表情でモンスターを見据える。

   モンスターが腕を振り上げ、華が咄嗟に

   避ける。

赤根「いまだ!」

   赤根、トリガーを引く。

   銃口から激しい光が出てモンスターに命

   中する。

   赤根、しりもちをつく。

   モンスター、断末魔の悲鳴。

   華、驚いてモンスターを見ている。

   赤根、起き上がってモンスターを見る。

   モンスターの全身が炎に包まれて倒れる。

   強く発光し、モンスターが消える。

赤根「今の、俺がやっつけた…?」

   華、赤根を見る。

赤根「この銃すごいな、一発じゃん。なんで最

 初にコレ撃たなかったんだよ?」

   赤根、華に銃を差し出す。

赤根「はい」

   華、受け取らず黙っている。

   赤根、不思議そうに華を見る。

赤根「ねぇ、これ」

華「あなたにあげる」

赤根「え、でも」

華「その銃があなたを選んだから」

赤根「選んだって、どういう」

華「行くわよ」

赤根「え、ちょっとどこに行くの、ねえ!」

   華、赤根の腕を掴んで歩き出す。

 

※TapNpvelにて連載中の「華学戦隊サイエンジャー」冒頭をリメイクしてみました。

気弱な就活生、だけど女の子は守ってみせる!

みたいなギャップ狙いでした。

まだちょっとギャップの描写としては弱めだったそうです。

うーむ、難しい。

 

 

課題「盗み」トーキング・ベル

    人 物

 

桶谷千尋(28)専業主婦

桶谷修士(31)千尋の夫

美堂恵子(24)千尋の友人

桶谷うらら(3)千尋の娘

美堂みのり(3)恵子の娘

 

 

〇桶谷の家・全景(夜)

 

〇同・ダイニングキッチン(夜)

   桶谷修士(31)がビールを飲みながら新聞

   を読んでいる。

   奥のキッチンで桶谷千尋(28)が調理して

   いる。

桶谷「うららはもう寝たのか」

千尋「ええ。今日はたくさん外で遊んだみたい」

桶谷「ふん」

   千尋がトレイに冷奴と枝豆を載せて運ん

   でくる。

桶谷「またこの組み合わせか。芸がないな」

千尋「仕方ないじゃない。安かったんだもの。

 もうこれくらいしか買えなかったのよ」

桶谷「何だよその言い方。まるで金が無いみた

 いじゃないか」

千尋「無いわよ」

桶谷「十分金は渡してるだろ。月に5万もだぞ」

千尋「食費だけならそれでもいいけど、生活す

 るには足りないのよ。他にどれだけお金がか

 かると思ってるの」

桶谷「お前のやりくりが下手なんじゃないのか。

 俺の先輩の家はそれで十分やっていけてる

 ぞ」

   千尋、桶谷から目を逸らしてキッチンへ

   向かおうとする。

   桶谷、千尋の腕を握る。

桶谷「待てよ、話は終わってないぞ」

千尋「なんですか」

桶谷「金が無いって言ったな、お前」

千尋「ええ」

桶谷「その割にはお前のバッグや靴、増えてな

 いか」

千尋「それは…独身時代の貯金で」

桶谷「そんなに蓄えあったのか?バイトばかり

 だったお前に」

   桶谷、スーツの上着から封書を出す。

   貸金業者からの封書。

   千尋、表情が強張る。

桶谷「これはなんだ」

   千尋、封書を取ろうとするが桶谷にかわ

   される。

桶谷「借金してまでバッグとか靴とか買って何

 するんだ。浮気でもする気か?」

千尋「そんなつもりはありません」

桶谷「じゃあどんなつもりだ。この借金にどん

 な正当な言い訳があるというんだ」

   千尋、答えない。

   桶谷、深いため息。

桶谷「…これじゃお前とは一緒にいられないな」

千尋「えっ」

桶谷「勝手に借金作ってくるような女と夫婦な

 んてやれないと言ってるんだ」

千尋「そんな。元はと言えばあなたが全然生活

 費をくれないから大変で、それでストレスが」

桶谷「俺のせいだというのか!」

   千尋、うつむく。

桶谷「5万だ。今週中に5万円用意しろ」

   千尋、不思議そうに桶谷を見る。

桶谷「妻が債務者だなんて体裁が悪いからな、

 こいつは俺が立て替えてやる。お前は俺に5

 万ずつでいいから返済するんだ。いいな」

千尋「…はい」

桶谷「一度でも滞れば離婚だ。うららは俺の方

 で育てるし、お前とは二度と会わせない。わ

 かったな」

   桶谷、部屋を出ていく。

   千尋、手の付いていない食卓を見つめる。

千尋「今週中に5万って…」

   壁に日めくりカレンダーがかかっている。

   5月25日水曜日。

   千尋、目を閉じる。

 

〇住宅街

   千尋と桶谷うらら(3)が手を繋いで歩い

   ている。

   うらら、前方を見て指差す。

うらら「あ!みのりちゃんいた!」

 

〇美堂の家・全景

   美堂恵子(24)と美堂みのり(3)が外に出て

   いる。

   千尋とうららに向かって手を振っている。

みのり「うららちゃーん!いらっしゃーい」

 

〇住宅街

   うらら、手を振り返して走っていく。

   千尋、慌てて追いかける。

 

〇美堂の家・リビング

   恵子、千尋を案内しながら入ってくる。

   うららとみのりが後から走ってくる。

恵子「どうぞ。好きなところに座ってて。今紅

 茶を淹れるから」

千尋「ごめんなさい、先にお手洗い借りていい

 かな」

恵子「どうぞ、場所わかる?」

千尋「うん、前にもお邪魔したから。ごめんね」

   千尋、足早にリビングを出ていく。

 

〇同・トイレの前

   千尋がやってくる。

   トイレのドアを見て、反対を見る。

   向かいの部屋のドアが開いている。

   部屋の奥に机や本棚が見える。

 

〇同・書斎

   机の上に財布や家の鍵が置いてある。

   財布には鈴が付いている。

   傍には本屋の紙袋。

   千尋が部屋の外から見ている。

 

〇同・トイレの前

   千尋、息をのむ。

   周囲を伺い、そっと書斎へ向かう。

 

〇同・トイレの前

   乱暴にドアが閉められる。

 

〇同・トイレの中。

   千尋が震える手で鍵をかける。

   便器に座るとポケットから財布を取り出

   す。

   鈴が鳴り、慌てて握る。

   財布を開く。

   カード入れに恵子の免許証が入っている。

   お札入れから紙幣を取り出し数える。

   一万円札が6枚、千円札が4枚。

   千円札を戻し、一万円札をもう一度数え

   る。

   千尋、枚数を数えて安堵のため息。

   一万円札を5枚ポケットに入れて、1枚

   を財布に戻す。

   財布を閉じる。

   鈴が鳴る。

 

〇同・リビング

   うららとみのりが遊んでいる。

   恵子、微笑んで見守っている。

   千尋が戻ってくる。

恵子「おかえり。遅かったね」

千尋「恵子さん、ごめん…私ちょっとお腹の調

 子悪いみたい」

恵子「え、大丈夫?」

千尋「うん、だから来たばっかりで悪いんだけ

 ど…帰るね。うらら、帰るよ」

うらら「えーやだー!」

みのり「やだー!」

千尋「わがまま言わないの」

うらら「やだー遊びたい!」

千尋「うらら!」

恵子「良かったら、後でうららちゃん送ろうか?

 家まで」

千尋「え、でも」

恵子「せっかく来たんだもの、みのりともっと

 遊んでほしいし。責任もって送り届けるから。

 千尋さんも、家でゆっくりした方がいいと思

 うからさ」

千尋「恵子さん…」

   恵子、優しく微笑んで千尋の背中を叩く。

千尋「わかった。お言葉に甘えるね」

恵子「うん。うららちゃんは任せて」

   千尋、うなずく。

〇同・玄関前

   千尋が出てくる。

千尋「お邪魔しました」

恵子の声「気を付けてね」

千尋「うん」

   千尋、手を振りつつ扉を閉める。

   ちゃんと閉まるのを確認すると駆け足で

   出ていく。

 

〇同・リビング

   窓の外を見る恵子。

   走り去っていく千尋の姿が見える。

   恵子、千尋をじっと見ている。

 

〇桶谷の家・全景

   千尋が走って帰ってくる。

 

〇同・玄関

   千尋が入ってくる。

   閉めた扉に背を預けて息を整える。

   ポケットからクシャクシャになった5万

   円を取り出す。

   ジッと見つめる。

   チャイムが鳴って驚く。

   慌ててお金をポケットに戻し、扉から離

   れる。

宅配員の声「お届け物でーす」

   千尋、ホッとした表情を浮かべる。

千尋「はーい」

   千尋、扉を開ける。

 

〇同・リビング(夜)

   千尋がソファに座っている。

   壁の時計は9時を指している。

   ローテーブルの上には封筒と宅配物。

   段ボールにはアマゾンのロゴ。

 

 

※「お金を盗む」は安易、みたいな感じに言われてしまいましたが、

(財布のお金じゃすぐばれるし)まぁこれはバレてからが本番的な話のつもりなので…