課題「別れ」ブザービーター
人物
桜井徹(17)バスケ部員
赤城俊一(17)ライバル校のバスケ部員
望月玲子(18)マネージャー
〇市民体育館・バスケットコート
高校バスケ関東大会・市民体育館の看板。
満員の観客席。垂れ幕や団扇など、応援にも力が入っている。
コート脇で必死で声を上げている控え選手たち。
第一高校と書かれた赤いユニフォームの桜井徹(17)と
藤花高校と書かれた青いユニフォームの赤城俊一(17)が激しくボールを
取り合っている。
残り時間は30秒。
第一高校:78対藤花高校:79のボード。
玲子「あきらめんな、桜井!」
桜井、赤城の一瞬の隙をついてドリブルで進んでいく。
玲子「いっけー!」
残り10秒。
桜井がシュートを放つ。
時間がゆっくり流れる。
ボールの行方を見守る観客、選手たち。
ボードの表示が0になると同時に、ゴールにボールが吸い込まれる。
桜井「よっしゃああああ」
激しく沸く会場。
喜びを爆発させる桜井。
選手たちが駈け寄ってきて抱き合って喜ぶ。
その後ろで力無く膝をつく赤城。うつむいて表情は見えない。
桜井、チラリと赤城を見るが、そのまま仲間とコートを後にする。
〇同・駐車場
送迎バスが並んでいる。
第一高校と書かれたバスに部員たちが乗り込んでいく。
玲子が乗降口から顔を出す。
玲子「ほら早く、桜井。あんたが最後よ」
桜井「あ、はい」
桜井、何度も振り返りながらバスに近づく。
玲子「誰か待ってるの?」
桜井「いえ…大丈夫です」
桜井がステップに足をかけた時。
赤城の声「桜井っ」
桜井、驚いて振り返る。
息を切らせた赤城が走り寄ってくる。
桜井「赤城…」
なかなか息が整わない赤城。黙って見つめる桜井。
赤城「…今日のお前、強かった。完敗だ」
顔を上げた赤城は笑顔。
赤城「優勝、おめでとう」
桜井にも笑顔が浮かぶ。
赤城「この俺様に勝ったんだ、全国制覇しろよ」
桜井「まかせとけ」
微笑みあい、ハイタッチする桜井と赤城。
バスが出発する。
赤城、晴れやかな表情で手を振る。
桜井、満足そうな笑顔で席にドスンと座る。