おいでよシナリオの森!

夢はヒーローもののライターです☆

課題「旅」母を探すと何千里

    人 物

山崎栄人(20)大学生

河辺真治(20)栄人の友人

木内大翔(6)小学生

木内大樹(27)大翔の父

 

 

新高岡駅・全景

 

〇同・ホーム

   東京行きの新幹線のアナウンスが流れて

   いる。

   山崎栄人(20)がベンチに座って真っすぐ

   前を見つめている。

 

〇同・ホームのキヲスク

   河辺真治(20)が飲み物と弁当を買ってい

   る。

真治「お姉ちゃん、弁当どれおススメ?とりカ

 ツ?いいね~じゃあそれ二つ!」

 

〇同・ホーム

   栄人、真っすぐ前を見ている。

真治の声「ありがとね~!」

   弁当と飲み物を抱えた真治が戻ってくる。

   栄人の隣に座り、弁当と飲み物を一つず

   つ栄人に差し出す。

真治「はい、お前の分。あ、気にすんなよ。俺

 の奢り」

   栄人、受け取って飲み物を見て顔をしか

   める。

栄人「緑茶じゃん。コーラないの」

真治「弁当にコーラは合わないだろ」

   真治、弁当を開けて食べ始める。

栄人「今食べんのかよ」

真治「大丈夫大丈夫、新幹線来る前に食べ終わ

 るから」

栄人「どうだか」

   真治、夢中で弁当を食べている。

   栄人、緑茶を一口飲んで顔をしかめる。

栄人「つーか、なんでお前まで行くの」

真治「ん?」

   真治、弁当を食べ続ける。

栄人「…まぁ、どうでもいいけど」

   新幹線がホームに入ってくる。

   扉が開く。

   栄人、立ち上がって扉に向かう。

真治「え、ちょっと待って」

   真治、慌てて弁当を片付けて後を追う。

 

〇新幹線車内・5号車

   数組が席に着いている。

 

〇同・栄人たちの席

   栄人、席に着いて窓の外を見ている。

   真治、栄人を見つけると隣に座る。

真治「置いてくなよ」

栄人「勝手についてきてるんだろ」

   真治、弁当の続きを食べ始める。

栄人「まだ出発してないっての」

真治「いいじゃん、食べたいときが食べ頃よ」

栄人「うぜぇ」

   栄人、溜息。

 

新高岡駅・ホーム

   発車の音楽が鳴る。

   新幹線が走り始める。

 

〇新幹線車内・5号車・栄人たちの座席

   真治、乗り出して窓の外を見る。

真治「おお~やっぱり新幹線はいいなぁ、電車

 より静かだよな!」

栄人「重いぞ、よりかかんな」

   栄人、真治を席に追いやる。

   鞄から絵葉書を取り出して眺める。

   手紙のあて先は山崎周人、差出人は山崎

   佳純と書いてある。

   文章は何も書いていない。

   真治、覗き込む。

真治「お袋さん、会えるといいな!」

栄人「さぁな。このハガキも3年前届いた奴だ

 し」

真治「なんだよ気のない言葉。お前が会いたい

 から行くんだろ」

栄人「別に?旅行のついでだよ。ちょうど東京

 行くし」

真治「素直じゃないね~東京行こうって行って

 きたの自分のくせに。誰にカッコつけてんだ

 よお前は」

栄人「うるさいよ。嫌なら付いてこなきゃいい

 だろ」

真治「冗談!お前の本当のお袋さんがどんな人

 か、俺超興味あるもん。今のお袋さん、超美

 人だろ、お前似てねぇなって思ってたんだよ

 な」

栄人「悪かったな」

   栄人、手紙を鞄に押し込んで窓を見る。

   真治、ニヤニヤ笑っている。

 

〇線路

   新幹線が通り過ぎていく。

 

長野駅・ホーム

   新幹線が通り過ぎていく。

 

〇新幹線車内・5号車・栄人たちの座席

   真治が乗り出して窓の外を見る。

真治「長野過ぎた!次が東京だったよな」

栄人「そうだな」

   栄人、真治を退かして立ち上がる。

栄人「トイレ行ってくる」

真治「おう」

   栄人が席を離れていく。

   真治、栄人が座っていた席に座り窓の外

   を見ている。

 

〇同・5号車・トイレ前

   トイレから出てくる栄人。

   通路で泣き顔で辺りを見回している木内

   大翔(6)がいる。

   栄人、近付いて話しかける。

栄人「どうした?少年」

   大翔、栄人に気付いて振り返る。

大翔「トイレ出たら席わかんなくなっちゃった」

栄人「一人で入ったのか?」

大翔「ううん、パパと来た」

栄人「じゃあ近くで待ってんじゃないの」

   栄人、周囲を見るが人はいない。

栄人「いないな」

   大翔、うつむく。

栄人「ここから近いのか?席」

大翔「わかんない」

栄人「父ちゃんてどんな人」

大翔「わかんない」

栄人「いや、わかんないって」

   大翔、泣き出す。

   栄人、頭を掻きながら溜息。

栄人「わかった、わかったよ俺が悪かった。じ

 ゃあ俺が一緒に探してやるから。な?」

大翔「…うん」

   大翔、栄人に手を差し出す。

   栄人、その手を握ると歩き出す。

 

〇同・5号車

   栄人と大翔が手を繋いで周囲を見ながら

   歩いてくる。

 

〇同・栄人の座席

   栄人と大翔が通る。

   真治、栄人に気付いて振り返る。

真治「栄人、お前何やってんの」

栄人「いやなんかトイレで迷子になってたから」

真治「探してあげてるわけか」

栄人「ほっとけないだろ…乗り掛かった舟だし」

真治「いいじゃん。頑張れ」

栄人「手伝ってくれないのかよ」

真治「留守番は任せとけ」

   真治、アイマスクを着けると眠り始める。

   栄人、真治を睨みつつ歩き始める。

 

〇同・4号車

   栄人と大翔が歩いてくる。

   大翔、乗客を見ながら歩く。

   栄人、大翔を見る。

   大翔、首を横に振る。

 

〇同・3号車

   栄人と大翔が入ってくる。

   大翔、乗客を見ながら歩いていく。

大翔「あっ」

   大翔、座席の一つで止まり乗客を指差す。

   木内大樹(27)がアイマスクをしてイヤホ

   ンを着けて座っている。

   大翔、木内に飛びつく。

大翔「パパ!」

   木内、驚いてアイマスクを外す。

木内「何すんだ!テメエ」

   大翔を睨みつける。

木内「なんだ、大翔じゃねぇかよ。しょんべん

 終わったのかよ」

   大翔、木内にしがみつく。

   木内、面倒そうに引きはがす。

木内「終わったんならさっさと席に戻れ。いち

 いちくっつくんじゃねぇようっとうしい」

   大翔、大人しく席に戻る。

栄人「あの」

   木内、栄人を睨みつける。

木内「なんだよ」

栄人「この子、一人で困ってましたよ。ちゃん

 と一緒にいてあげないと危ないじゃないです

 か」

木内「はあ?」

栄人「それと。こんなに息子さんが慕ってるん

 だから、ちゃんと相手してあげてくださいよ」

木内「なんなんだよガキが偉そうに。あんたに

 関係ないだろ」

   木内、アイマスクを着けると席に戻る。

   栄人、なおもしゃべろうとすると

大翔「お兄ちゃん、ありがとう」

   大翔が笑顔で手を振っている。

   栄人、大翔に手を振って席に戻る。

 

〇同・5号車・栄人の席

   栄人、ドスンと席に座る。

   絵葉書を取り出して見つめる。

栄人「母さんは…俺のこと…」

   栄人、絵葉書を強く握る。

 

 

※旅の醍醐味は道中にある…!と思ってしまう私です。